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続・さあ、どうするFRB? ー 「インフレ」と「デフレ」、どちらが高く付くのか?

 “While reaching the standard of ‘substantial further progress’ is still a ways off, participants expect that progress will continue.”

 “Even after this ( labor ) supply comes, it is still likely that we will still be short of maximum employment. That is why we don’t see that is time to raise interest rates now.” “Conditions in the labor market have continued to improve, but there is still a long way to go.”(雇用)

 “Strong demand in sectors where production bottlenecks or other supply constraints have limited production has led to especially rapid price increases for some goods and services, which should partially reverse as the effects of the bottlenecks unwind.” (インフレ )

 「楽観的」という表現が正しいのかどうかわからないが、 ↑ は高いCPI(e.g. 6月@5.4%)発表直後、半期に一度の下院金融委員会の公聴会でパウエルFRB議長が行った金融政策に関する議会証言の一部。相変わらず早期の金融引き締めには後ろ向きだ。委員の質問の趣旨は:

 「過剰に緩和的なFRBの政策が住宅価格高騰など、インフレを助長しているのではないか?」

 これに対し、パウエル議長雇用、インフレの「ボトルネック」(the bottlenecks)は一時的でいずれ解消される、という従来の主張を繰り返した。これを受けて未だ「金利低下パラノイア」状態の米国債市場は急反発不調だった30年債入札後に "せっかく" 上昇した金利が全て "元の木阿弥"

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 ただ相変わらず*具体的論拠を示していない議長のコメント群に不安を覚えるのも事実。まるでアガサクリスティーの推理小説に出てくる名探偵ポワロが語る、 "自分だけわかる推理” のようでもある。「灰色の脳細胞」では判っているのかも知れないが(笑)。

 かつて ”伝説” になったグリーンスパン議長は、この "具体性" に長けていた「言語明瞭・意味不明」と揶揄される事もあったが、「明瞭」な部分では具体的材料が示された事も多い。故に市場参加者の "Respect" は高く、 ”対話" が円滑に為された「意味不明」の部分はトレーダーが議長について行けなかっただけかも)。その後金融政策は「市場対話型」が主流になったが、「過剰流動性相場」を経てそのフレームワークは壊れつつある

 おそらく**パウエル議長は論理的に「推理」しているのではなく、「インフレ」と「デフレ」=「日本化」のどちらが高く付くか、思案している。

 **筆者もFRBECBのスタッフと話をした経験があるが「なぜ日本があんなに酷い「デフレ」に陥ったのか」、随分多くの質問を受けた。欧米に拡がる、この「日本化パラノイア」は我々が思うよりかなり強烈であり、現在の「金利低下パラノイア」に伝播している。この20年で日本が証明したこと、それは「デフレがいかに高く付くか」である。

 日本のバブル崩壊も含め、1980~1990年台の「悪魔」は間違いなく「インフレ」だった。それがグローバリゼーション+ディス・インフレを経て2000~2010年台には「デフレ」が脅威になった。だがこの変遷を見ると:

 「逆の極は真なり」

 そろそろ反転する頃合いではないのかFRBの歴史を紐解くと、「インフレ」を怖れる余り政策金利を10%近くまで引き上げたボルカー議長がその後の「アメリカの大停滞」を引き起こした。その ”失敗” の尻拭いをしたのがグリーンスパン議長だった。さて「デフレ」を過剰に怖れるパウエル議長はどうだろうか。 

 1980年台のアメリカ日本のバブルを経験してきた立場で言うと、「インフレ」のコストはそれほど安くない米中が「仲直り」すれば回避できるかも知れないが、その確率は極めて低い。いざという時にオタオタしなくて済むよう、「生活民」の1人として「逆の極」には備えておきたい

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