続・「ルーブル」の ”リアル” 。ー 人民元安、インドルピー安による「隠れルーブル買介入」。
「あれっ、何か人民元安くなってるなぁ」
対ドルの人民元安に気付いた方はいるだろうか。 ”侵略” 前には@6.3100台だったドル/人民元はいつの間にか@6.4200に接近。2ヶ月弱で▼2%も安くなっている。上海のロックダウンなどの影響もあるだろうが、本来当局が制御している人民元相場としては珍しいボラティリティー(変動率)だ。
筆者は (続)人民元やインド・ルピーは「ルーブルの避難回廊」になり得るのか。 ー 開戦後1ヶ月、「お金」の動き。|損切丸|note が大きく影響していると考えている。
同じ現象はインドルピーにも起きており、こちらも2ヶ月弱で▼2%安。つまり、この「通貨安」、中国やインド単体の要因ではないということ。
端的に言えば「ルーブル安」圧力を人民元とルピーで引き受けている恰好。「隠れルーブル買介入」であり、まさに ”ルーブルの避難回廊” 。これで侵略国家にはドルが貯まり、戦費に充てられていく。ドルのフローが丸見えのアメリカがこの ”抜け道” に激怒するのは当然で、ドル建債の元利返還をルーブルで払うなどもっての外。さっさとドルで払えということだ。
この動きは直近1ヶ月の対ルーブルの人民元、*ルピーの為替レートを見るとあからさま。それぞれ▼28%、▼23%も安くなっている。
両国共どれだけのディスカウント(値引き)でエネルギー資源を購入したかは不明だが、この「通貨安」で既に▼30%近く利益はフイになっている。ああいう国だから100%信用しているとは思えないが、依存度が高くなれば 実は世界中で起きていた「安物買いの銭失い」。ー エネルギー価格の教訓。|損切丸|note に陥る。
3カ国とも「ドル覇権」を崩したいという思惑もあるのだろう。確かにアメリカは過去に随分酷いこともしてきた。その思いは「円高」で煮え湯を飲まされた日本もそうだし、ユーロを立ち上げたヨーロッパもそう。だが「戦争」という暴力に訴えるのは、この時代無理がある。
一見原油、ガス、石炭を安く買える ”ルーブルの避難回廊” は良い事ずくめに見える。だが当然「副作用」がある。
最も大きいのが「通貨安」或いは「通貨発行増」→「インフレ」。
まずインド。今「円安」で苦しむ日本人には実感として分り易いが、元々インドはルピー安による「インフレ」に苦しんでおり、直近3月のCPIは年率+6.95%。どれだけエネルギー資源を安く買えてもこれ以上の「ルピー安」と引替えで本当に「国」が儲かっているのか甚だ疑問。「お国柄」と言ってしまえばそれまでだが、裏で ”賄” の類いが動いているのかもしれない。
一方の中国。「インフレ」は抑えられているが(3月CPI+1.5%)、こちらは「資金繰り」に難。何度も note. してきたが、中国は日本のバブル期同様「借金過多」で、「不良債権問題」が勃発している点も状況が酷似。本来「利下げ」しなければいけない局面だが、この ”ルーブルの避難回廊” による「人民元安」が足枷になっている。
おまけにここに来て米国債金利が急上昇。10年では中国国債と名目金利に差がなくなってきた。金利が同じなら「お金持ち」が米国債に向かうのは自明の理であり、中国は「資金繰り」が苦しくなる。
もう一つ重要なのが「キャピタルフロー」。「通貨安」は国外への資本流出を招きやすい。特に2021年以降、中国株からの欧米投資家の撤退は決定的で、「不良債権」、ロックダウンとも相まって状況を悪化させている。
そしてルーブルにも問題が発生するだろう。この ”避難回廊” スキームを延々続けると中銀はルーブルを必要以上に発行し続けることになり、早晩「通貨価値の希薄化」=「インフレ」を招く。「物」の供給が細る中、「ルーブル建」の値段は上がり続けることになる。
中国、インドとも「自国通貨安」まで身を切って「ルーブル」を助ける余裕はないはず。だが特に前者は独裁者が "同じ船" に乗っているだけに引くに引けない。要は「国富」とか「国民生活」に優先する何かが存在するという事。おそらく極めて「個人的事情」だ。
だがこんな戦略はいつまでも続けられない。マーケットの「調整機能」は本当に良く出来ていて、いくら原油や石炭を安く買えるといっても、FX市場が「通貨価値の変動」でそれを即座に打ち消しに行く。*市場取引は基本誰も儲からないように値が動く。今回の ”ルーブルの避難回廊” は典型例だ。
全ての「投資」「トレード」に共通する原則は ”FACT” を掴むこと。残念ながらヒット率重視のメディア記事やバズり狙いが横行するSNSでは得にくい。特に「国」が絡む「裏事情」はなかなか表には出てこない。100%証拠がないと記事に出来ないメデイア側の事情も考慮して読むべき。
筆者が "現役中" もそうだったが、こうしてマーケットの動きを横断的に俯瞰して状況証拠を固め、確認していくしかない。「損切丸」はその一例を示しているわけだが、あとは皆さんがどれでけ「違和感」を感じ、好奇心を持って探求していくかにかかっている。 ”FACT” に近付く事が勝利の第一歩であり、あとはリスクに踏み出す「覚悟」。健闘を祈ります。
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