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最早「マイナス金利解除」は最重要事項ではない - "流行り廃り" のスピード化

(参照) 続・ ”チャレンジング" な日銀「資金繰り」 ー 「国債買取」減額を探る|損切丸 (note.com)
 
”チャレンジング" な日銀「資金繰り」Ⅲ ー 国債発行減で平仄を合わせる財務省|損切丸 (note.com)

  12/18~19日開催の政策決定会合「主な意見」
・これまで賃金上昇率が物価上昇率に追いついてこなかった事を考えると、来春の賃上げが予想よりかなり上振れたとしても基調的な物価上昇率が2%を大きく上回ってしまうリスクは小さい
慌てて利上げしないとビハインド・ ザ・カーブになってしまう状況にはなく、少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはない
・10月のイールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化でイールドカーブが歪む状況が生じにくくなっている
・インフレの基調が過度に強まる状況にならない限り、賃金と物価の好循環を通じた2%目標の実現の見極めは十分な余裕を持って行う事ができる
人手不足に端を発し経済構造の変化の芽が生まれる中、千載一遇のチャンスを逃がさぬよう変革の後押しに集中し当面は現状の金融緩和継続が適当
・金融正常化のタイミングが近づいている。拙速は良くないが『巧遅は拙速に如かず』という言葉もある。タイミングを逃さず金融正常化を図るべきだ

 12月会合の「主な意見」は ”ハト派” 的と市場は解釈。年末年始の長期休暇を控え「円売り」等「キャリートレード」を仕掛けたい向きには絶好の材料になった。下がらない(あるいは動かない)のであればドル円の5%もの金利差、あるいは「順イールド」のJGBは "ハイエナ" たちにとっては十分な "餌" 。抜け目なく狙ってくるだろう。

 5月からの「利下げ」が既定路線になっているFRBと比べ、やはり2024年のマーケットの焦点は日銀に移行する。「利上げ」が現実度を増す中、その動きに注目が集まるだろう。

 ここまでも何度か書いたが、最早「マイナス金利解除」は最重要事項ではない。技術的に言えば500兆円余りある「日銀当座預金」に付利されている「三層構造」のうち、30兆円余りに課されている▼0.10%を廃止するだけ

(参照) 遂に始まる「実質マイナス金利預金」。|損切丸 (note.com)

 ただマーケット、特に海外へ向けてのメッセージの発信という意味では重要になる。ファンドなどに利用されて ”火事場泥棒” 的に*JGB日経平均を荒らされることは防ぎたいが、「利上げ」に対する "号砲" を鳴らす側面もあるため、市場とのコミュニケーションがかつて無い程重要になる。「主な意見」にもあるが「タイミング」を逃さないことだ

 *12/26 2年利付国債入札結果
 最低落札価格@100円05銭0厘(最高落札利回り:0.074%
 平均落札価格@100円07銭1厘(平均落札利回り:0.064%
 テール(平均-最低) 2銭1厘 前回 1銭2厘
 応札倍率 3.34倍 前回 2.91倍
 応札倍率こそ3倍台に戻しているが、2年債としては異例のロングテール。やはり「日本金融村」の腰は引けたまま海外勢による「キャリートレード」が減ると "同調圧力" の強いこの国では想定外の急落も有り得る

 「マイナス金利解除」よりもJGBなど金利トレーダーにとって最も重要なのは「国債買入れオペ」日銀の「バランスシート政策」≓「テーパリング」再開、ということになるが、翌年1~3月の予定が発表されている:

 あまり話題になっていないが結構凄い ”刈り込み” 。1~10年の下限を▼500億円引下げ、更に注目すべきは10年超のオペ回数を4回から3回に削ってきた「損切丸」と同じ「資金繰り」の発想レンジの下限金額(年換算)を66.2兆円から59.2兆円まで減額。特に流動性の乏しい20~40年JGBで冷や酒のようにジワジワ効いてくるイールドカーブのスティープニング(傾斜化)を促して金融機関の収益増を図る仕組みと見ていい。

 金融システムが高度化された今のマーケットで、1970~80年代に起きた ”安宅暴落””運用部ショック” のような金利が一気に+2~3%も上がるような「JGBショック」は起きえないと想定する一方、「安全」に反比例して金額も膨れあがっている、e.g., 世界総債務約300兆ドル≓4.2京円

 加えてHFT(高頻度取引)やAIプログラム暗号資産のような ”電子の止まり木” も発達し「お金」は人間の追いつけない速さで動く。もう過去の経験則だけでは上手くいかず、全て未知の領域と考えるべき。

 巷でも "流行り廃り" のスピードが加速タピオカに高級食パンに唐揚げ…お店が急激に増えたかと思ったらいきなり閉店の連鎖。メガネ屋、薬局、矯正歯科(高額自由診療)等も雨後の竹の子のように増殖コンビニやファミレスも淘汰の波に飲み込まれたが、これらの "流行りモノ” は大丈夫か?

 「インフレ」は淘汰を加速させる

 まあ "流行りモノ” が廃れるのは世の常でもあるが、何せ現代は入れ替わりが激しい。これからは個人も企業も「選別眼」の善し悪しが命運を分ける時代。もう皆で仲良く肩組んで、とはいかなくなるだろう。

 "壮絶" な「サバイバルゲーム」に備えて ー 論点整理。|損切丸 (note.com) 筆者も過去の経験は生かしつつ先入観を持たずに相場に臨んでいる2024年は「円」が鍵。できれば生き残りたいものである。


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