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「大借金」の「ツケ」はどこに回るのか。ー ECBも「テーパリング開始」?

 「ジャクソンホール」後、落ち着いた展開の米国債に比べ予想外に大きな動きが出たのが欧州国債市場。10年債で+0.05~+0.08%も上昇した。

 背景としては物価の上昇基調が鮮明化していることもあるが、ECB理事会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の縮小を検討できる状況になっている」と発言したことが大きい。次回9月の理事会で第4・四半期の縮小開始が討議されるようだ。

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 需給面で一点違うのは、発行額がグロスで減る見込の米国債に比べ、イタリアオランダ等、各国で国債の発行が増えていること。もし本当にECB「テーパリング」を開始するなら、欧州の方が影響が大きいかもしれない

 ”2021年1-3月期 世界債務残高 289兆ドル = 3京1,790兆円 @110円”

 そしてもっと根幹的問題が前稿でも指摘した3京円を超える「大借金」「リーマンショック」→「コロナ危機」対応でヨーロッパも「大借金」を抱えており、コスト回収のため①「金利」を選ぶか②「インフレ税」を選ぶかの2沢を迫られている。どちらか一方に偏ると想定外のコストがかかる懸念も増すため、実際には「ポリシー・ミックス」で進むしかない。「テーパリング」はその第一歩と見ていい。

 「大借金」処理の面で実は最も優位な立場にいるのが「アメリカ」。借金額自体は大きいものの「主要通貨ドル」を握っているのが大きい。過去「ドル安・米債安・株安」でクラッシュを何度も起こしてきたが、今回は日欧とも「マイナス金利政策」を含む大規模緩和を行っており、「ドル安」が株価の急落を引き起こす可能性も低い。むしろ「ドル高」フィルターを使って「インフレ "輸出" 」が出来るため、コストを米国外に ”付け回し” し易い。既にベネズエラブラジルトルコ等新興国に "輸出" されている。

  ”台風の目” はやはり中国「大借金」についてはその政治体制から国家も民間もないが、「社会融資」47兆ドルを含む59兆ドル ≓ 6,500兆円はべらぼうな額である。これまではアメリカにモノを売って得た大量の「ドル」があり問題なかったが、ここへ来て「米中対立」で事態は急変

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 頼みの「ドル」収入は細りつつあり、自国通貨「人民元」で対応するしかなくなっている。IT企業や学習塾など民間(=CPC以外)の「富裕層」を狙い撃ちにしているのは「取り立て」の序章だろう。そして「大借金」問題の ”本丸” は不動産向け融資。この対応を誤れば、バブル崩壊後の日本同様、不動産価格の下落で「借金」だけが不良債権化する泥沼にはまる。

 おそらく独裁体制が故に日本のように20年以上もかけて処理するような悠長な方法はとらない。「人民元」はどうにでも出来る訳だから、例えば「デジタル人民元」を「新通貨」として発行し、10分の1に ”切り下げ” れば「借金」は一気に6,500兆円 → 650兆円に減らせる中国国民が巨額の「インフレ税」を払うことになるわけだが、国威発揚を狙った北京五輪前には発動しにくい。タイミングとしては2022年夏ぐらいからが怪しい。そしておそらく何の前触れもなく、ある日突然起こるだろう。e.g. 1998年ロシアデフォルト

 日本はというと、残念ながら ”お家芸” とでもいうべき「広く、薄く、長~く」政策を繰り返すだろう。バブルの崩壊然り、東北大震災の原発処理コスト「エネルギー賦課金」なる「新税」でちまちま徴収を続けている。その間じわじわと国力は衰えてしまった。日本人の1人としては、今の「コロナ危機」が「大転換」のきっかけになって欲しいと切に願うが...

 いずれにしろ今後のマーケットは「金利」が起点となって「為替」「株」「商品」「不動産」等に変化が波及していくことになりそうだ。金融引締はFRBにECBも続くだろうが、残念ながら日銀は大分遅れての ”しんがり” になりそう。その間*「円安」という形で「輸入物価上昇」という ”請求書” が回ってくる日本円をベースに暮らす者としては要注意である。

 筆者はよく仕事でロンドンに出張に行ったが、一時@220円なんて時があって昼飯もまともに買えなかった。サンドイッチ1個が£5.-=¥1,100.-!今の@150円台もなかなかの「円安」だ。昔1ドル@80円の時にハワイ旅行に行った時は、全てがあまりに安くて「天国」だったが、@110円では気軽に行けなくなってしまった。「円高」が恋しい

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