「インフレ」攻防戦。ー 「金利」「通貨」「株」を犠牲にする "覚悟" はあるのか。|損切丸|note の続編第3弾。
ウォール街の ”リセッション運動” のかいあって(苦笑)、定義上アメリカは ”テクニカル・リセッション” 入り。
これを受けて、マーケットは一気に勝負に出ている。
まずはFRBのお膝元、米国債市場。
政策金利の到達点はFOMC直後の@3.5%から一気に@3.0%に低下。「もう利上げはお終い!」と言わんばかりの勢い。ショート(金利上昇方向)は踏み上げを喰らい、買い(金利低下)が押し切った恰好だ。
「インフレ」転換点? ー 米フィラデルフィア連銀・製造業景況指数をきっかけに急伸した米国債。|損切丸|note でご紹介した10年米国債@2.5%シナリオ(第4波動) ↓ が現実味を帯びてきた。
「待ってました!」とこれに飛びついたのが米株式市場。NYダウ、ナスダック共に大幅続伸し、2020年終値対比で前者は既に+6.3%まで回復、後者はもう一息だ(▼5.6%)。ビットコイン(BTC)も一時の悲惨な状況からは回復している。
一方原油や小麦などのコモディティは一度上に突っかけたものの、やはり「実需」が減速する懸念が強まり、株とは対称的に反落して引けている。この辺りは「現物市場」の特性ともいえる。
FXに関しては、欧州も米国債に連れて金利が低下しており、ユーロドルやポンドドルにはあまり動意がない。対称的に「金利差」をネタに極端に上げていたドル円は@134円台に急反落している。
株式市場のはしゃぎ様とは対称的に、パウエル議長の苦悩は深い。金利上昇により住宅市場や設備投資は減速しているものの、米雇用が極めて強いからだ。FOMC後のプレス・コンファレンスでも:
日本の「インフレ」の正体。|損切丸|note で解説した「人口動態による人件費上昇を起点とするインフレ」はアメリカも同様。FRBも強く認識しており、今後の金融政策の鍵を握る。やや言い訳めいて聞こえるが:
「コロナ後」の今は ”通常” ではなく、金融政策は "狭い通り道" (narrow path )を抜けなければいけないと発言している。まあ、道を狭くしてしまったのは「インフレは一時的」などと決めつけて「利上げ」を遅らした議長自身なのだから、自業自得ではある。
どの国でもそうだが、選挙がある年は様々な思惑が交錯し相場は荒れる。まして今年は米大統領選の中間選挙。毎回選挙のせいで何人か死ぬとまで言われているので、劣勢の民主党陣営はそれこそ死に物狂いだろう。株価上昇が支持率に繋がるなら何でもやるはずだ。金融政策にも巨大な ”忖度” が働く。今の相場もそういう目線で捉えておくのが "妥当" だろう。
根底に流れる大きな「インフレ」の流れは不変だが、逆に言えば、雇用が悪化して人件費が下落する時こそ ”真のリセッション” であり、その見落としは致命傷になる。パウエル議長のみならず、今後の経済指標、データ、市場動向はつぶさに検証する必要があるのは言うまでも無いが、「戦争」の行方など2022年の「投資」も本当に気が抜けない "narrow path" である。