「お金」は「中国」から「日本」へ? ー 「円安」を利することができるか。
NYダウや日経平均ばかりを見ていると暗い気持ちになりがちだが(確かに2022年は ”鬼門” )、国境を越えてクロスボーダーで「お金」の流れを俯瞰すると違う流れが見えたりもする。
今回は「日本」と「中国」、特に「香港」を例に挙げてみよう。
「損切丸」が1994年にイギリスの銀行に転職した当初、アジア拠点は「東京」と「ex-東京」に2分されており、それだけ「日本」は特別扱いだった。
それが1997年以降の「金融危機」→ 「”怖い” 金融庁検査」ー 「半沢直樹」の現場・時代から。|損切丸|note を経て、いつの間にか「東京」はアジアの一部に格下げ。金融ハブは「シンガポール」へ、日本株のオペレーションは「香港」にごっそり移動になった。
そしてアジアの幹部社員のほとんどは「香港」に在住。元・英国領ということもあるが、やはり累進課税がなく所得税が一律@17%というメリットは大きい。最高税率@45%の「東京」とは雲泥の差、おまけに住民税もない。高額所得者の幹部社員にとっては願ってもない環境で、住居もピーク( ”100万ドルの夜景" で有名な "山頂" )周辺の高級住宅地・ ”ミッドレベル” の物件が社宅として会社から提供された。
「お金」と「人」がなだれ込んだ「香港」では株も不動産価格も高騰。あっという間に「東京」を凌駕し、ハンセン指数の時価総額も一時アメリカに次ぐ世界2位まで上昇した。*不動産価格の高騰も凄まじく、「バブル」といわれ続けながら何年もジリジリと上昇を続けた。
この流れが反転したのが2020年6月に成立した「香港安全維持法」である。1997年7月の中国への返還以降標榜していた「一国二制度」が事実上消滅。ここから欧米資本の「脱・香港」が始まり、ハンセン指数の下落 ↓ となって現れた。
2018年に付けた高値(@33,000.-近辺)からは▼4割近く下げ、まだ下落トレンド継続中。これに比べると日経平均はまだ健闘している ↓ 。
ではこの欧米の「お金」と「人」、一体どこへ向かったのか?
金融に関して言えばまずは同じ元・英国領の「シンガポール」。こちらは相変わらず不動産の高騰が続いている。国土面積が限られている事もあり、ちょっといいコンドミニアムを買おうと思えば1~2億円は必要。「東京」の同等の物件と比べても+3割近く高い。
シンガポールの弱点は株式市場等、金融市場があまり発達していない事。「香港」のそれには到底及ばない。そうなると税制や種々の規制コストがあるとはいえ「東京」が候補として浮上して然るべき。「円安」「低賃金」等、コストの優位性は上がっているし「東京証券取引所」も存在する。
ネックになっているのは「英語」、そして「人手不足」だろう。
大体「外人」などと言っている時点でダメ。香港やシンガポールでは "American" " British" 等とは言うが、海外の人達を "foreigner" と総称して呼んだりはしない。これも「シルバーデモクラシー」の悪影響かもしれないが、「純・日本主義」のような "昭和的風潮" がなかなか抜けない。これでは香港、シンガポールから「金融ハブ」の座は奪い返せない。
香港に限らず「製造業ハブ」も「中国」に持って行かれたが、こちらも同様の現象が起きている。因みに北京、上海と東京の不動産を比較すると:
「中国」の方が高い、といってもおかしくない状況。そこに「香港安全維持法」のような「政治リスク」が重なれば、** "「中国」から「日本」へ" は再考の余地がある。
事実 ”ゼロコロナ政策” を巡るサプライチェーンの混乱で、トヨタをはじめとした自動車産業や他の製造業が工場停止を余儀なくされている。これも立派な「政治リスク」。現地で売る分はいいとして、それ以外の部分、特に基幹分野の "本国回帰" は十分あり得る。その時は「円安」が助けになる。
折しも「経済安全保障法」が成立。今回の「侵略戦争」が示したように、エネルギーや基幹部品を「専制国家」に依存するリスクは極めて高い。「脱・香港」にも4~5年要したが、金融や製造業も、時間はかかるがサプライチェーンの再構築を進める時が来ている。
願わくば「円安」を利して「日本再構築」に生かしたいもの。「英語」「人手不足」等の課題を克服できれば「日はまた昇る」。実現すれば 日本人にとっての「最適投資」は...。 ー 2022年に儲かったのは誰?|損切丸|note で「日本株」が首位に躍り出るだろう。「過剰流動性バブル」の米株より余程マシかもしれない。
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