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3京円もの「大借金」のツケは一体誰が払うのか?。ー 急浮上した銀行の「信用問題」。

 2月米雇用統計 
 失業率 3.6% 予想 3.4% 前月 3.4%
 非農業部門雇用者数(NFP、Non-firm Payrolls) +31.1万人 予想 +22.5万人 前月 +50.4万人 ← +51.7万人
 時間当り賃金(年率) +4.6% 予想 +4.5% 前月 +4.4%

 まずは出たばかりの米雇用統計。時間当り賃金は上昇しているものの、失業率は上昇NFPの増加数は前月から減っている3/22FOMCでの+0.50%「利上げ」観測は後退している。

 それよりも急浮上したのが*銀行の「信用問題」だ。カリフォルニアに拠点を置くシリコンバレー銀行(SVB)が国の管理下に入り実質破綻。一気に「信用不安」が拡大している。元々「高金利」を謳い文句に預金を掻き集めていたようだが、急速な「利上げ」で「資金繰り」に難を来した。

 *3/10の米株式市場ではファースト・リパブリック・バンクが一時▼53%安パックウェスト・バンコープが▼37%安と急落SVBファイナンシャル・グループを巡る混乱が他の金融銘柄にも波及している。

 この流れを受けて「質への逃避」(Flight to Quality)から米国債が急上昇(金利は急低下)。ターミナルレートも@5.25%まで押し戻され、「金融危機」含みの "別の相場" になりつつある。

 いくら金利が低下しても株の下支え材料にはならずマーケットの雰囲気は悪化。急激な「利上げ」が効き過ぎた結果ともいえるが、今の「インフレ」はここまでやらないと抑えられないのかもしれない。ただ「利上げ」の手を緩めると今度は「インフレ」がぶり返す怖れもあり、FRBは綱渡りが続く。

 さてここまではいつもの「損切丸」だが、今日は視点を変えてみよう

 ポイントは: 3京円もの「大借金」のツケは一体誰が払うのか?

 2008年リーマンショックから中国の不動産バブル、2020年の「コロナ危機」を経て、世界の債務総額=「大借金」は既に3京円超え。国家当局は日米欧中、どこもかしこもこれをどこから徴収するか、戦略を巡らしている。

 ここまで膨張した「借金」を返す方法は大きく2つ

 1.所得税、法人税など増税で徴収
 2.「インフレ税」で実質債務を減額

 1.増税をあからさまに行っているのは日本社会保険料や消費税を含めると、実にお給料の約6割も "抜かれている" のだから堪らない。だから消費が弱く「インフレ」がマイルドなのは大いなる皮肉だろう。

 欧米は 2.「インフレ税」が主流「人件費」の上昇を起点とした「真性インフレ」で通貨価値が下落実質「借金」の棒引きを図る。アメリカは一見激しい「利上げ」を行っているようにも映るが、物価上昇率が@6%を上回る状況を考えると、まだまだ「実質金利」はマイナス本気で「インフレ」を抑えにいっているようには見えない

 では「ツケ払い」の観点で見ていくと 「金融政策」はどうか。

 まずは「借金国家」アメリカ。とにかく消費意欲が旺盛で「お金」を借りる事に躊躇がない。国全体で見ても「預金」より「借入」の方が圧倒的に多く「ツケ払い」で考えると「利上げ」の方が "取り立て" しやすいSVBはそれを払えなくなってギブアップしたということになるが、 "取り立て" が行き過ぎて「信用問題」に火がつけば、今度は大きな負担が株主に及ぶ

 対称的なのが「預金大国」日本10兆ドルもの政府債務を抱えながらほぼ同額の「預金」を保持しており、これなら「ツケ」の "取り立て" は「預金者」に回る。これが「バズーカ」の実態であり、多額の預金者に利息が渡る「利上げ」などしない。そうこうするうちに「インフレ」に火がつけば実質「借金」も減らせる "取り立て" られている国民生活が楽にならないのは当り前で、 "お代官様" と ”大黒屋” の利益のために一般庶民が重い「年貢」に苦しむ光景は、江戸時代以来ずっと変わらない

 もう一つ面白いのは「エネルギー価格」

 サウジアラビアとイランが国交を正常化したというニュースには少し驚いたが、「原油価格」の下落で利害が一致したと考えれば合点が行く。「戦争」をしている彼の国も一蓮托生であり、FRBによる「利上げ」は「ツケ」を産油国に回すための戦略とも読める。当然のように中国が仲立ちしており、これも「戦争」の一部だ。

 ”米バイデン大統領、予算案としてビットコイン(BTC)など仮想通貨マイニングに使われる電力に30%課税することを提案”

 イーロンマスク氏を始め富裕層が最も嫌がるのが「インフレ税」。筆者は「仮想通貨」から「暗号資産」に至るまで一連の流れは彼らの「インフレ税」逃れの方策と理解している。政府・中央銀行と壮絶なバトルが繰り広げられてきたが、金利の付かない資産に対し「利上げ」攻撃はかなりきつい。そこへ ↑「使用電力税」でトドメ。やはり国家権力は恐ろしい。

 FX(外国為替)はどうか。交易がドルベースである以上、対ドルで「通貨安」になった国の「ツケ」が大きくなる超低金利で「預金税」を強化している日本は「円安」を誘発しており、国としてどっちが得か、真剣に考えなければいけない。「財政健全化至上主義」だけで国民は食っていけない

 巨額の「大借金」の「ツケ」を巡って「金利」「FX」「エネルギー価格」「暗号資産」等々、激しい ”押し付け合い” が勃発している。主要通貨ドルを握るアメリカが圧倒的に有利とはいえ、銀行の「信用問題」など盤石ともいえない「ドル高問題」再び。ー 「ドル建債務」が重くのし掛かる。|損切丸|note で、既にデフォルト(あるいは寸前)の国も増えた。

 とにかく「お金」に窮すると人は何でもやらかす。これは国も個人も同じで、「借金」で首が回らなくなれば突然銃をぶっ放したりする相場やマーケットなら追い詰められて「損切り」が横行することになる。

 そんな中、3/22のFOMCでFRBはどういう判断を下すだろう「インフレ」沈静化を優先すれば+0.50%「利上げ」もまだ可能性として残るが、SBV銀行破綻の影響をシステミックリスクと評価するのかどうか。会合後の声明文、記者会見も含め大いに注目される。相場のステージは変わった。

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