___FF-_2-_5-_10yr__15_Mar_2020_グラフ_

FRBが▼1.00%緊急利下げ。「金融パンデミック」を阻止へ。- 主要6カ国との90日物ドル供給オペを復活。

 「損切丸」は特にドルのクレジット・クランチ(信用収縮)について状況判断が甘かったのかもしれない。FRBがFOMC(3/16~17)までの48時間を待てずに東京市場が開く前に*▼1.00%緊急利下げに踏み切った。読みが外れた事は訂正してお詫びしたいが、週末のスペインやドイツの国境封鎖など時時刻刻変化する状況が中央銀行の背中を押した面もある。

 *JPモルガンが▼1.00%利下げのレポートを出した時に「市場の動きに追随したものかもしれない」というような書き方をしてしまったが、これも訂正してお詫びしたい。むしろその逆でFRBとの間にかなり密なやり取りがあったのかもしれない。日銀が三菱、住友、みずほ銀行と日々密に情報交換しているのと同じだ。特に米ドルについては同行が最大手であり、ドルの短期資金はJPが決めている、などど言われることがある。ドル資金の目詰まり=クレジット・クランチ(信用収縮)が進行していたということだろう。

 そしてある意味利下げより重要な決定がなされた。**リーマンショックの時に導入された「90日物ドル供給オペ」の復活である。FRB、日銀、ECB、BoE(英国中銀、Bank of England)、SNB(スイス中央銀行、Swiss National Bank)、カナダ中央銀行によるドルの供給オペで、各国の据置担保の枠内でドルを供給する。

 **レートはOIS(Overnight Index Swap、翌日物金利スワップ=FFレート)+0.25%。FFレートはゼロ近辺に誘導されるだろうから、3か月物OISが0.01~0.10%程度、オペレートは0.26~0.35%程度になるのではないか。筆者も日銀に入札したことがあるが、銀行のドルの資金繰りは随分助かった。現在も枠組みが残る7日物との二本立てだったが90日物は廃止されていた

 さて東京時間の米債市場の反応。2年以内の金利は当然ながら急低下したが、5年超の金利はそれほど低下せずイールドカーブは傾斜化(スティープニング)した。3月9日時点の金利低下は行き過ぎだったということだろう。

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 それからもう1点。「マイナス金利」政策についてはパウエルFRB議長が否定的見解を示しており、その点は日銀、ECBと共有されているはず。おそらく銀行収益悪化に対する懸念が強い、ということだろう。***米大手JPモルガンやバンカメ(Bank of America)なども反対していると思われる。

 ***「リブラ」が登場したときは猛烈に反対した米銀行業界。対デジタル通貨として「金利を高めに保つ」ことを試みた時期があったが(「損切丸」でも「デジタル通貨編」でいくつか触れている)、「リブラ」を”葬った”今ならゼロ金利まではOKということなのだろうか。

 本日正午から日銀も緊急会合を開くようだが、これらの連関を整理すると「マイナス金利の深掘り」はなさそう。JGB(日本国債)も買われていない。おそらくこの「90日物ドルオペ」の実行要領と他の量的緩和策(ETF、CP、共通担保オペ等)の拡充策が決定される見込みだ。ECBも同様だろう。

 驚きの発表を受けても株式市場の反応は厳しい。日経平均はこの緊急措置を受けても先週末終値近辺でうろうろ。先週金曜日(3/13)の「NYダウ史上最大の上げ幅」などまるでなかったかのようだこの緊急措置がなかったら一体どのくらい急落していたのか、考えるだに恐ろしい。特に日本はオリンピックの中止、延期の問題も被ってくるため状況はあまり良くない。

 予断になるが、昨日(3/14日曜日)横浜のあるデパートに行ってみたがあまりに人が混んでいて正直驚いた。やはりというか高齢者が多く、「金融危機」??という雰囲気である。日本人はのんきなのか、それとも災害慣れしているのか...。こんな note を書いている立場なので戸惑ってしまった。

 そして今や疫学的にも金融的にも「パンデミック」の震源地となっているヨーロッパ。スペインやドイツの国境封鎖のインパクトは半端ではない。ECBも出来るだけのことはするだろうがどこまで効果があるだろうか。CDSなどの「信用市場」への影響も注視される。ここまでやってクレジット・プレミアムの拡大に歯止めがかからないと事態はかなり深刻だ。

 5月ぐらいには何とか、と思っていたが見込みが甘かったのかも。「政治的圧力から独立した中央銀行」というのも既に筆者のような”オールドタイプ”のトレーダーの幻想で、実際は金融と財政の融合が世界的に進んでいる。ただ「明けない夜はない」「夜明け前が1番くらい」とかいったりするので気持ちを切らさず見ていきたい。トレーダーの間ではよく「コツン、とくる」などと表現するが、どこかで投資機会は訪れるだろう。

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