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ただただ "不気味" な中国国債。

 4月から5月にかけて中国の国債金利が低下している。10年で@3.2%台だった金利が今日(5/12)は遂に@3.14%上昇基調にある欧州や米国の国債金利と ”デカップリング” して▼10BP近く低下

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 しかし中国の「お金」のニュースは金利が上がりそうなものがズラリ ↓

 ・3月 新規人民元建融資 +2.73兆元(約45兆円) 予想 +2.45兆元 前月 +1.36兆元(中国人民銀行発表)

 ・2021年第1・四半期の人民元建融資残高=7.67兆元(約127兆円)で過去最高。これまでの最高は、当局がパンデミックで異例の対応に動き始めた前年同期の7.1兆元。

 ・社会融資総量残高(3月末時点、含.新規株式公開、信託会社融資、債券発行等)=294.55兆元(約4,969兆円)前年比+12.3%。3月社会融資総量は+3.34兆元 予想 +3.7兆元 2月 +1.71兆元(前年比+13.3%)

 さすがに14億人の国、金額も桁外れだが、発表されているデータを信用すればクレジット=「信用」の膨張は凄まじい

 金利の低下を促すデータもある。外国人の中国国債保有高は再び増加し、4月末時点で2.096兆元(約35兆円)、前月比+2.5%で過去最高を記録(中国中央国債登記結算(CCDC)、銀行間債券決済機関のデータ)。国の政策銀行が発行した債券の外国人保有高も初めて1兆元(約17兆円)を超えた。

 だが5,000兆円近い社会融資残高を含む "実質" 国家債務 ≓ 57兆ドル ≓ 6,185兆円  ↓ を考えると、海外からの投資50兆円程度では "焼け石に水" 。それだけで金利を▼10BPも押し下げるとは到底思えない。

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 そうなると濃厚なのは中国人民銀行が意図的に「資金供給」して金利を下げている可能性だ。表向きは「バブル抑制」を強調しているが、国債金利の低下がそれを否定している。事実融資残高は一向に減らない。

 政府がこういうこと=「お金」のバラマキに傾注すると確実にやってくるのは「インフレ」だ。(前稿.「お金」 > 「物」の量の状態が変わらない限り、物価上昇循環は止まらない。ご参照 ↓ )。あの政治体制なら債務者や国民に全てのツケを転化しようと謀っていても不思議はない

 中国の人口動態については気になるニュースも入って来た。予想より早く2022年以降「人口減少」に転じるというのだ。

 2020年の中国本土の総人口(除.香港、マカオ、台湾)は14億1,178万人で2019年より+1,100万人増えているが、出生数は約1,200万人で前年比▼18%減と、1949年の建国以来最大の落ち込み。結果として60歳以上(2億6,402万人)が14歳以下(2億5,338万人)を上回った。ある意味「日本化」とも言えるが、60歳以上で日本の総人口の倍以上というのは凄い。

 端的に言えば「少子高齢化」は国力を弱めてしまう。そこで問題になるのが膨大な借金の返済問題「稼ぐ力」が衰えれば益々返済は苦しくなる。そして中国の債務の根本的な問題は「返済原資」が足りないことだ。

 アメリカ(国家債務23兆ドル)、日本(1,200兆円)と比較してみよう。両国とも債務は大きいが、アメリカには時価35兆ドルの株、*日本には1,000兆円の預金と十分な「換金可能資産」があり「返済」の算段はつく。

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 *資金繰り的観点からは日本の格付けシングルAは完全に間違い。少なくともフランス(AA)より下ということはない(実際5年CDSでフランス@23.6>日本@17.5)。日本の金融危機時に格付会社が投資銀行と「金儲け」に走った結果、引っ込みがつかなくなったのでは?

 対して中国は現状で借金精算をするには不動産を中心にする資産を処分するしかないが、日本の不良債権処理問題が証明したようにこれは簡単ではない「競売」のような状況になれば、不動産は半値以下が常識。つまり「債務超過」に陥る懸念がある。

 日本もそうだったが、中国は更に短期間で大量の空気を送り込んで風船を膨らましているので、破裂させるか、「無かったこと」、つまり**「借金棒引き」にするしかなくなる。元・資金繰り担当者にはそう映る。

 **「面子」を大事にする国だけに対外的「デフォルト」は選択しないだろう一番きな臭いのは「デジタル人民元」。戦後日本の「新円切替」のように、例えば現・紙幣を使用禁止にして例えば10:1の比率で「デジタル人民元」に切り替える。このような内部事情を察知した「富裕層」外貨規制の厳しい米ドルの代わりにビットコイン等に「お金」を移しているため「暗号資産」が上昇しているのかもしれない

 とにかく現状での中国国債の金利低下はただただ不気味 ”違和感” が半端ない。この様な状況で筆者自身は中国の株や債券に投資しようとは思わない。事実中国の株価はこのところ軟調推移している。

 GPIF(年金運用機構)が ”金利に目が眩んで” 中国国債投資を目論んでいるようだが、ぜひ慎重な検討をお願いしたい。投資を始めるなら少なくとも中国の財務内容を正しく把握した上で、年金受給者=日本国民に伝えるべきだろう。くれぐれも「年金」を "人質" に取られないように

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