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変えようとしなければ何も変わらない。ー「現状維持」「先送り」の限界。「リスク」は必ず存在する。

 ”日銀、大規模金融緩和を維持 物価・賃金見極め”

 もう何十回目だろう、この文言を見るのは。「損切丸」が「円」を担当していた22年間、8割方はこう。それでもやってこれたのは1,000兆円を超える「預金」という "蓄え" のお陰でもあるのだが、決して日本経済が順風満帆、ほとんど「変化」が無かったという訳でもない。

 特に2008年「リーマンショック」以降の強烈なデフレは世界経済史にも稀に見る「大事件」であり、それ故「量的緩和」QT、 Quantitative Easing)「マイナス金利」と様々な試行錯誤が続いた。「バズーカ」もその一部と見做せば、日銀が無策だった訳ではない。だがなぜか「利上げ」となると尻込みするのがこの国の金融政策の歴史でもある。

 確かに2008年以降の10年間は日英米欧が足並みを揃える「超低金利政策」の時代だった。そこへ中国による安価な商品が大量に出回る「グローバリゼーション」→「ディス・インフレ」が重なり一度「金利は死んだ」

 ところが2016年頃から「ベビーブーマー」世代の大量退職の影響で「人手不足」による「インフレ」が起き始め、そこへ「米中対立」による安価な中国製品締め出し→「反グローバリゼーション」の流れへと転換。まずFRBが「利上げ」でゼロ金利脱却イギリスがそれに続いた。

 日本にとって不幸だったのは、2011年に未曾有の「東北大震災」、更に2019年に100年に一度の「パンデミック」と不運が重なった事。

 そんな中、黒田総裁主導で2013年4月から行われた「異次元緩和」は確かに「変化」ではあった。問題は「出口」を想定しなかった事本来2~3年の短期間に行われる ”劇薬” だったはずがズルズルと10年も続いてしまい、テーパリング(Tapering、本来 ”薬抜き” を意味する医療用語)は容易ではない。更なる ”劇薬” を投下した2022年2月の「国債無制限買取オペ」は最悪の対処方であり、事実その後病状=「円安」@115円→@150円が悪化

 後を継いだ植田日銀を見ていると、ただFRBの「利下げ」転換を待って「現状維持」しているようにしか見えない。確かに「円安」には一定の抑止力となるだろうが、アメリカが「利下げ」してもせいぜい@4%程度まで「円安」は2022年2月時の@115円まで修正されるとは到底思えない米中覇権争いが続く中、劇的な和解でも無い限り「グローバリゼーション」≓「ディス・インフレ」はもう訪れない。

 一方人口動態による「人手不足」は今後も続くことから「インフレ」は収まらず、そう言う意味では各国の中央銀行、特にFRB、ECB、日銀は金融政策の修正を余儀なくされる日本は「円安」が「インフレ」の元凶のように言われているが、実際は「人件費の上昇」が肝*「円安」の有無に関わらず日銀は「利上げ」転換すべき時期に来ている

 *そもそも「ゼロ金利」も "QT" もバブル崩壊後の不良債権問題 → デフレに対応した政策のはず「インフレ」に転換した今は "毒" でさえあり、そんな中敢行された「国債無制限買取オペ」は "インフレには利下げ" と主張しているトルコの "エルドアン理論" と同じ。市場は「通貨安」で答えを出している。「利上げすると住宅ローン借入者が大変になる」「企業倒産が相次ぐ」などというのは完全にずれた議論である。

 変えようとしなければ何も変わらない。

  "変わらないこと" で最も得をしているのは「インフレ税」で1,200兆円もの「借金」を減らせる財務省だ「財源は国債もある!」などというレトリックを振り回して「先送り」を画策する一部の議員もその一味。大体「借金」を「借金」で返すのは単なる「自転車操業」財源≓返済原資であり、「国家」の場合その回収方法は3つしかない ↓

 ①業績(≓GDP)を増やして利益(≓税収)を上げる
 ②源泉徴収=「増税」で強制徴収
 ③支出の削減

 これを「投資」に当てはめると ”鏡” のように "FACT" が映し出される。

 「元本割れなし」「国が発行」「1万円から購入できる」安心で手軽な個人向け国債
個人向け国債窓口トップページ : 財務省 (mof.go.jp)

 財務省は「インフレ税」で「借金」が減ると目論んでいる。「国債」≓「借金」は本当に「安心」なのか?

 これは国が発行している「円」も同様。確かに「円建て」の「名目金額」は元本割れしない。だがその「価値」(value)はどうか。「インフレ」が続いてようやく日本人も目が覚めつつあるようだが、「物」の値段が上がれば「お金」の価値は失われる本来その差を埋めるのが「金利」のはず。最近はネットでもそういう主張が増えてきており「損切丸」を始めた4年前とは様変わり。いい傾向だ。

 つまり生活の場でも "変えようとしなければ何も変わらない" 。

 生きている以上「リスク」は必ず存在する。ポイントはそれに気が付いているかどうか「投資」に関しても「安全資産」などというものはなく、それらの「価値」は常に「変化」する「インフレ」時に「預金」「国債」「現金」が危険なのは欧米では常識であり、「株」や「不動産」の方が危ないという認識は間違っている

 「現状維持」「先送り」という選択肢ももちろんある。だが「お金」を持ったままにしておくのも "自己責任" であり、その場合は「結果」について "覚悟" がいる。まあ日本人はもう少し「リスク」を楽しめると良いZ世代を中心にそういう「変化」は広がりつつあるが、昨今の日経平均の急騰で「成功体験」が増えれば事態は好転するかもしれない。

 行き過ぎた「円安」のみが心配ではある。


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