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さあ、どうするFRB? ー 高進する「インフレ」を放置するのか。

 6月米CPI @+5.4% (予想)@+4.5% (前月)@+5.0%

 (日本時間7/14 AM1:00現在、指標発表後の米国市場を見て執筆)

  "鈍化するはずだった" 6月米消費者物価指数(CPI)だが、大方の予想に反して@+5.4%と上昇「物価上昇」の波は収まるどころか高進している。しかし米国債市場の反応は”奇妙” なものに終始しており、特に10~30年の長期債は未だ「金利低下パラノイア」状態。完全に自信を失っている。

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 2~5年債はFRBによる金融引締めを若干前倒しして上昇。現状では:

 ①テーパリングの影響で2022年後半にFFレートが@0.05%→@0.20%上昇

 ②2023年初に@0.25%に利上げ→年央までに@1.00%

 ③2024年に@1.25%に上昇し打ち止め

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 いくら「金利低下パラノイア」とはいえ、過去のFRBによる金融引締め局面と照らせば随分 ”のんびり” している。やはり「FRBはインフレ抑制に本格的には動かないのではないか」という漠然とした不安が市場を覆っている。いくら "一時現象" と繰り返しても現実にCPIは上昇しており、10年米国債の「実質金利」@▼4.15%はあり得ないほどの「異常値」だ。

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 そんな「パラノイア」をよそに息を吹き返しつつある市場もある。TIPS(物価連動債)だ一時@2.40%割れまで沈んだ5年BEI(予想物価上昇率)も@2.60%まで反発。こちらは*FRBが利上げしようがしまいが関係ない

 5年TIPSならCPI@2.60%になれば、@2.60%×5年=@13%が元金に上乗せになって戻ってくる上手くいけば@3.0%、@3.5%なんてことも有り得る。FRBがインフレを制御しないならなおさらだ。

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 「インフレ動向」を見極めるのに興味深い指標も出ている ↓ :

 6月米中小企業楽観度指数 @102.5 (前月)@99.4

 米中小企業の業界団体、全米独立事業者協会(NFIB)が取りまとめているが、10の構成指数のうち7指数が上昇、3指数が低下した。その中で:

 1.人手不足

 ・新規雇用を計画している企業は差し引き28%(過去最高) ← 5月27%

 ・6月に未充足求人を報告した中小企業は46% ← 5月48%

  ・「最も重要な問題」=「労働者の質」。10個の選択肢の中から26%が選択(過去最高は27%)

 ・" 適切な人材が採用できない" 56% ← 5月57%

 2.インフレ懸念

 ・中小企業オーナー:「好調な販売やサプライチェーンの問題で、在庫を維持するのが難しい」

 ・過去最高の44%が今後3カ月で値上げを計画

 「物」も「人」も需給関係が崩れているのは明白。経済用語で言う「ボトルネック・インフレ」という奴だが、一旦こうなると解消にはかなりの時間を要する。しばらく物価には上昇圧力がかかり続けるだろう。

 ではFRBは一体何を気にしているのか?

 おそらくアメリカ人は「貯金大好き」になったのか? ー 「日本化」への "怖れ" 。↓ (6/4稿)だろう。パンデミックで食うや食わずに追い込まれた人々の消費マインドの変化」を警戒していると推察される。実際銀行に「預金」された「お金」が米国債に回っている節もある。

 こういう事を書いているとどうしても頭に浮かんできてしまう言葉が「スタグフレーション」物価上昇と景気後退が同時進行する ”悪夢” である。**現在ならハイパーインフレに見舞われているベネズエラや法定通貨が10分の1になってしまったレバノンで実際に起きているトルコブラジルなど「高金利国」もその ”予備軍” だ。

 **ハイチで大統領が暗殺されたり、キューバで大規模な反政府デモが起きたり、治安が悪くなるのがこの「スタグフレーション」の特徴の1つ。人間、飯を食えなくなると凶暴になる。中南米やアフリカなどの貧困国家に波及しそうで怖い。

 近年目覚ましい発展を遂げたアジア諸国日米欧等「資金力」があるため ”悪夢” を逃れてはいるが、いつまでも大丈夫という保証はない。だが莫大な国家債務(約3京円)を抱える先進各国にとって「インフレ」は "垂涎" の的。だがこれは「大バクチ」でもある。

 本来「基軸通貨ドル」を擁して世界一「資金力」のあるアメリカは、失敗したときのコストが計り知れない「インフレバクチ」など打つ必然性はない。これまではFRBが "素早く" 利上げしながら「秩序だったインフレ」を制御する事で "国富" を増やしてきた

 だが「覇権国家・アメリカ」も「中国」の登場で、今その地位が脅かされている「国力」「資金力」もかつてほどではないFRBや米消費者が「日本化」に怯える姿がその ”衰え” を如実に物語っている。無理に「インフレ」にしなければいけないほど追い込まれているのかもしれない。

 最もその「中国」「不良債権問題」で様子が怪しい(下がりだした中国国債金利Ⅱ ↓ 7/13稿ご参照)。「金利」の事を言えば、今後の動向を見極めるのはかつてないほど複雑で非常に難しい

 「低金利下のスタグフレーション」

 これまでの経済学やマーケットの常識を覆すような事態が起こるのかもしれない。「法定通貨」に価値がなくなり「金利」も付かない ー 一般庶民には耐えがたい苦痛をもたらすことになるだろう。

 もっとも「復興税」「公共料金・社会保険料値上げ」等等、「実質生活費」の上昇が続く日本では既に起きているとも言える。こんな突飛な事を考えているのは筆者だけだろうか。日本は「先頭ランナー」なのか?


 

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