見出し画像

ヨーロッパから聞こえてくる ”悲鳴” - AI相場は高速回転の ”インフレマシーン”

 ECB インフレ率予想:
 2024年 +2.3% ← 12月 +2.7%
 2025年 +2.0% ← 12月 +2.1%
 2026年 +1.9% ← 12月 +1.9%

 ECBは大方の予想通り政策金利を据え置いたが「インフレ率」の見通しを引下げた事から一時ドイツ国債等買われ金利が低下。やはり中国・ロシア傾斜のツケは重く本当に景気が悪いのだろう。フランス、イタリアなどラテン国家群を中心に「早期利下げ」を求める ”悲鳴” が聞こえてくるようだ

 これに対しかつての「世界のタカ」ブンデスバンク(ドイツ中央銀行)一派は拙速な「利下げ」には真っ向反対中国傾斜で景気が悪いのがドイツというのも間が悪いが、総裁がフランス人のラガルド氏という点を考慮すると、今回の「インフレ」見通し引下げ、精緻な分析に基づくいうよりも多分に願望が入っていそう。この辺は頑なに「金融緩和」を言い続けてきた日銀の物価見通しが異様に低かった姿とも重なる全ては ”ご都合” 

 欧州国債は終盤売り戻されたが、結局はFRB次第になるだろう。アメリカが「利下げ」に動かないうちに先に動くとは考えにくい。実際「利上げ」もFRBに遅れて始めている。そう言う意味では "Forward Looking" (先見的)な政策運営を遂行する力が今のECBにはないのかもしれない

  ”悲鳴” を上げているのは国債を買っている銀行。前稿.続・逃げ出す「お金」。向かう先は... @2024|損切丸 (note.com) で書いたJPモルガンと同じ立場で「貸出」が減って「預金」が増える様が如実に見えているのだろう。筆者が勤めた英銀も景気減速の著しいイギリスの現況を考えるとGILT(英国債)を買い込んでいるに違いない。これはドイツフランス然り

 今までならこれでスンナリ「利下げ」に移行していたはずが、とんでもない ”強敵” が現れている。HFT(高頻度取引)やAI取引などいわば高速回転の ”インフレマシーン” 。こちらはよりゴールドマンサックス(GS)的

 かつてこの国で「バブル」が起きた時「信用創造」という言葉が飛び交った。銀行を中心に「お金」をどのように回していくか、という経済学の議論だが、景気が過熱するとこの "速度" が上がる銀行はドンドン貸しては資金調達をするため「お金」が経済の現場を駆け巡ることになる

 これが今どう変わっているか

 ファンドを中心に ”レバレッジ” という言葉が主流になっているが、例えば100億円JGBを買った後に買ったJGBをレポに出す→また100億円JGBを買うという具合。株を担保に「お金」を借りてまた株を買うのも同じだが、これが10回転すると100億円が1,000億円に "増殖" する。銀行が2~3年かけてやっていた「信用創造」を数ヶ月に短縮したような形

 ただこれについては「リーマンショック」で ”レバレッジ” をかけ過ぎた銀行が危機に陥った教訓から今では厳しい規制が布かれている。現在では5回転なんて ”レバレッジ” をかけてバランスシートが膨らむとすぐに「資本不足」に陥るため、得られる収益がコストに見合わなくなっている

 ところがせっかく銀行を規制したのに "伏兵" が現れた。そうHFT。こちらは1秒間に何万回も売買を繰り返すまさに ”レバレッジマシーン” 。1億円の買いが瞬時に1兆円の買いに化ける。とはいっても銀行やファンドの ”レバレッジ” とはグロスで動く資金量には違いがあるので同列では語れないが、業界の ”ご都合” で「買い」に傾いた設計である事は確か。GSが自信満々なのはそのためで、マーケットを常に "高血圧" の状態にしている

 FRBECBも頭を悩ましているのはこの点。ちょっと「利下げ」して「お金」が余ると株、あるいは原油などのコモディティ(商品市場)やビットコイン(BTC)などの暗号資産に染み出し ”インフレマシーン” が暴れ回る。これはかなり厄介。米株が高値で張り付いている主要因はこれだろう

 やはり3京円を超える「大借金」でばらまかれた「過剰流動性」の影響は半端ではない。これを ”インフレマシーン” =HFT・AI取引が増幅するマーケットは怖ろしい「信用創造」は何十倍にも膨らんでいよう

 状況が全く異なるのが日本「預金過多」で "悲鳴" を上げ続けた邦銀は30ヶ月連続で「貸出」が増え余裕綽々+1%ぐらいの「利上げ」なら業績が上がるだけでむしろ歓迎JGBやJ-REITなど金利系の商品は既に売却整理が進んでおり準備万端だ

 @150円を超える過度な「円安」は国民からも怨嗟の声が噴出しており、政治的にも「利上げ」を許容しやすい長らく「円高」→「株安」=「悪」とされてきた日本では画期的変化でもあり、筆者が「利上げ」や「円高」「日経平均」に前向きな理由でもある

 仮に3月に「マイナス金利廃止」があってもTONARはゼロから@0.10%程度に上がるだけその後「利上げ」しても@0.25%だから まだまだもの凄い「金融緩和」-まるで昭和の ”牛歩戦術” 的「利上げ」|損切丸 (note.com) 市場への影響は限られる。おそらく海外投資家も同じ目線

 そうは言っても「無理は通っても無理」"高血圧" 状態に何年もさらされているマーケットはどこまで保つのか ”インフレマシーン” はそんな事に配慮はしてくれない。無慈悲にぶっ倒れるまで突き進むだろう。それがいつになるのか。筆者は 「本物の危機」の時、金利は上昇する。|損切丸 (note.com) の立場。FRB、ECB、日銀は上手く凌げるのか、注視したい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?