「インフレ」の足音。- 65~69歳の就労率>@50%が示す「人手不足」。
注目のFOMCを明日(9/21)に控え、日本でも注目指標が相次いだ。
1.8月の消費者物価指数(CPI) ↓
総合でやっと+3.0%に達したが、31年ぶりの上昇と言っても+3.0%の「値上げ」は消費者の実感とそぐわない。エアコンなど耐久財が+5.0%上がっているが、こちらが「生活実感」に近いのではないか。
なぜこんなに「生活実感」と「指標」の間にズレがでるのか?
「損切丸」でも ”CPIの低め誘導” について書いてきたが、「インフレ」でやっと "FACT" がメディアを通して表に出るようになった。
代表例が携帯電話の通信料金。これは*政府が強制的に企業に下げさせたもの(ピークで前年比▼50%程)だが、経済学的な意味での「物価」にはほとんど関係ない。だがそれも来月にはマイナス要因が剥落。”コアCPIへの寄与度▼0.24%” ときちんと公表されるようにもなった。
「新製品」の扱いもズレを招いている。例えば8万円のスマホに画素数の多いカメラがついて11万円になっても、性能が向上した分は「値上げ」にカウントされず「物価」としてはゼロ、あるいはマイナスになる可能性も。年々サイズアップしている車もそうだが、毎年「高い新製品」は発売される訳で、これが「値上げ」でなければ「生活実感」とズレるのは当たり前。
「家賃」もそう。CPIの40%を占めるアメリカでは:年平均の下落値が▼1% → 5年後に同額 ≓ +5%となる。これも日本では解釈が違う。
国交省による「統計不正」は記憶に新しいが、日本では「指標」が軽んじられている。投資や売買の基礎になるだけにマーケット重視の欧米ではあり得ない事態で、アメリカなら確実に Class Actions (集団訴訟)になる。日本では「いかにマーケットを軽んじているか」の証左でもあり、仮にも「貯蓄から投資へ」を謳うなら "原点" に立ち帰る必要があろう。
それにしてもこのタイミングで「+3.0%」を出してくることは「何らかの意図」を感じずにはいられない。
「+2.0%目標」を掲げる日銀の政策転換のための環境作り?
いよいよ@150円に迫る「円安」になり尻に火がついた政府・日銀。「ドル売・円買介入」するにしても日銀が緩和姿勢を維持する限り効果は薄い。「総裁、副総裁が3人とも3月に前倒しで退任」なんてキナ臭い記事も出てきたし、何かあるのは間違いない。
考えられる選択肢としては:
①「国債無制限買取オペ」を止め、YCCのレンジ拡大、または廃止
②「マイナス金利@▼0.10%」の付利金利を「ゼロ金利」の戻す
「利上げ」さえしなければ財務省の利払い増加は限定的だし、保有国債による日銀の「逆鞘」も防げる。こんな "小さな事" でも「日銀が動き出した」アナウンス効果は大きい。同時に為替介入すれば効果は絶大だが...。
食料品や原油価格など国際商品価格は既に下落に転じており「コストプッシュ・インフレ」でないことは今回のCPIでも示されている。最も大きい「インフレ」要因はやはり「人手不足」。これまでは企業努力と称して「人件費カット」でコストを飲み込んできたが、それも不可能になった。だから今後も「値上げ」を見込む向きが多い。
2.「家計調査」↓(20224~6)
これ程明確な「インフレ」なのに日本は相変わらずの「預金偏重」。「コロナ危機」を差し引いても異常だ。老年層を中心に「守り」に入っているのかもしれないが、今の「円安」は「インフレ税」。ー 目減りする国の「借金」、国民の「預金」。|損切丸|note で全ては財務省の思惑通り。実際は「円安」で▼20%以上も資産を減らしている。
「65~69歳の就労率が50%越え」
「そんなに働いてるんだ…」。無理もない。**いくら「預金」があっても「金利」はつかないし、固定給の年金で「物価」が上がれば暮らしていけない。家計の「預金・現金」1,102兆円のうち60歳以上(3,617万人)が占める割合が極めて高い(平均貯蓄額は2,000万円以上 ↑ 標題添付)が、長生きするほど取り崩しが進み、それで足りる保証もない。
老年層がここまで働いてもまだ「人手不足」ということは、人件費にはまだまだ上昇余地があることになる。むしろ日本はこれから。NYが時給@3,000円前後であることなどを考えれば、東京も@2,000円ぐらいまで上がっても不思議ではない。そうしないと人が集まらないだろう。
日本は「シルバ-デモクラシー」と考えられているが、「現金・預金」が60代以上に集中している現状では、「ゼロ金利」「インフレ」は実はシルバー世代に厳しい政策。身を粉にして定年まで働いたのにこの "仕打ち" ではつらかろう。逆説的だが、早く若年層にバトンタッチしないと「円安」も止まらないし、自分達の首を絞めることになる。おじいちゃん、おばあちゃん達はいつ気が付くのか。一度子供や孫とよく話してみると良い。
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