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メモ小説

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自作の掌編小説まとめ。
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#小説

分身

 わたしが最初にそれと遭遇したのは、去年の12月10日だった。手帳に書いたから、日付まではっ…

岡村直
2年前
11

二階から目薬

 いつかの時代、パリの街に、芸術家志望の青年がいて、食堂で働く少女がいた。  ふたりは、…

岡村直
2年前
9

無題

 見えるものを見えるままに描くのではなく、自分が見たいと思うものしか描けない。  だから…

岡村直
2年前
5

金曜日の16時、新宿の

 紀伊國屋書店の前で、ヴィヴィアン・ウエストウッドの服を着た年齢不詳の美しい女性とすれ違…

岡村直
2年前
7

ともだち

「世の中には、自分に都合の悪いことを都合よく忘れられる人間と、そうじゃない人間とがいるん…

岡村直
2年前
8

人を喰う男と。

 わたしは人を喰って帰る男を待っている。男は夜7時ごろに帰ることもあれば、日付が変わって…

岡村直
2年前
38

桜桃忌の彼女

 白い乳房に、桜桃のような乳首。まるく、つややかで、口に含めば舌がとろけるかと思うほど、甘い。その桜桃をぼくに食べさせるたび、彼女は普段の品のよさを忘れたかのように乱れた。  ぼくは「桜桃忌」という言葉を、読書が好きな彼女に聞いて、はじめて知った。そしてきょうがその日だということも。 「桜桃忌だから、したいの」  彼女は妙なことを言った。 「……不謹慎じゃない?命日だからしたいって」 「命日だからよ」  彼女は、言いながら、黒いブラウスのボタンを外し始めた。 「好きな作家が、

桜の森の思い出

 満開の桜は人を狂わせるのだと教えてくれた男と、夜更けの桜の樹の下ではじめて交わりました…

岡村直
2年前
4

シャネルの5番

 わたしの初恋は、シャネルの5番だった。  文芸サークルの新歓コンパで、空いていた右隣の…

岡村直
2年前
12

ねむことともに

 ねむこ。水木しげるの漫画が好きなきみと、初めてふたりで深大寺へ遊びに行ったのが去年の6…

岡村直
2年前
10

聞いてくれるだろうか。わたしの話を。(「狂わないでね。元気でね。」③)(完結)

 目を覚まし、暗い部屋でベッドに寝転んだまま、枕元のスマホでTwitterを開いた。  内海くん…

岡村直
2年前
10

おれも同じだ。だから、(「狂わないでね。元気でね。」②)

 犬くんが、塾から追い出された。  そのことを、おれは松嶋さんから電話で聞いた。松嶋さん…

岡村直
2年前
9

狂わないでね。元気でね。

 ぼくはぼくの所属していた「塾」から最初に「追放された」生徒だった。もっとも「逃げた」生…

岡村直
3年前
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テレビドラマを観ている。

 警視庁捜査一課の課長が主人公で、毎回、凶悪犯罪──というにはどこかゆるい事件を解決していくテレビドラマがある。登場人物は全員いまどきめずらしいほど単純で、また、いまどきめずらしいほど善良だ。だからおれは、疲れて帰宅してから、ビール片手に録画を欠かさず観るくらいには、このドラマが好きだ。  主人公とその妻は、病気で死んだひとり娘の月命日に、カレーライスとプリンを食べる。どちらも娘の好物だったという設定だ。  この場面になると、必ず思い出す。  昔のことだ。  つねに散らかった