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短歌の連歌に挑戦中 複数人で57577を回す

五七五七七の定型で完結する短歌。これを複数の人たちでつないでいく「連歌」という形式がある。

Aさんが「五七五」を詠み、Bさんがそれにつながる「七七」を詠む。Cさんがまた前を踏まえて「五七五」を詠み、Dさんが「七七」を詠むのを繰り返していく。18句や36句、100句、1000句などつなげる句数によって連歌の形式にも名前がついているらしい。

参加する人数によっても両吟とか三吟とか呼び名があるらしいのは、調べてみて最近知った。

36句の連歌は「歌仙」というらしいけれど、今回、短歌同人「柊と南天」の中で「48歌仙」をやってみることになった。この会は昭和48年生まれ(と一部49年生まれ)の集まりなので、48。

みんなで1行(1句)ずつ物語を展開し、48行でひとまとまりの世界を作る。

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といっても、慣れているメンバーと「初めて!」というメンバーがいるので、不慣れメンバーはルールから教えてもらって参加。あっ、ルールは「五七五の次が七七」だけじゃないんだ。

今ルールのポイントは以下。

・物語は停滞させない。
 前の句を引きすぎて類型になってはダメ。できるだけ展開させる。

・前に出たモチーフは後ろの句では使えない。
 誰かが花火を詠んだら、後の人は花火を詠み込むのはダメ。

・季題配置図という設計図がある。
「○行目は■」という季節の指示があるのでそれに沿ったお題で詠む。

・基本的に旧仮名遣い。

このほかにもいくつかあるそうで、確認したときは「ひー」とおののいた。できるのか。参加していいのか。大丈夫か。

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本当は紙を回して一人ずつ書き込んでいくのだろうけれど、48歌仙のメンバーは全国にいるのでメール経由になった。最初に順番を決めて、自分の順が来たら書き込んで「全員に送る」で送信する。

停滞させずに展開する、という匙加減が難しい。うすーく前句の世界観を引き継ぎつつ(全く無視したら連句の意味がない)、ちょっと想定外の世界を想像させる1句をつなぐ。季題にもマッチさせなければいけない。

とても些末なところでいえば、体言止めにするか連用形にするかでも後への印象が変わる。景色を詠むか動きを詠むかでも展開が変わる。

もっと些末なところでいえば「この旧仮名遣いで合ってる?」とか「こんな活用形あったっけ?」という基礎部分でもいちいち確認しないと危ない。

正直なところ、みんなから紡ぎ出される1句1句についてこんなにまじまじと検討したことがなかった。いつもの短歌ならサラッと目を通して、連想した景色と受け取った印象をちょっと振り返るくらい。

でも今回はそうもいかず「前の句はどうなってる? 前の前はどう?」「このモチーフはまだ出てないよね?」「これだと世界が飛びすぎ? こっちのほうがいいのかな?」と見比べる。

思いついた句もすぐ送るのは危険なので、仮名遣いやリズム、描いたはずの景色と文の意味が合致しているか何度も考える。

かといって自分が時間をとってしまうと申し訳ないので、どこかで妥協して1句足し、えいやーと送信ボタンを押す。

*  *  *

でも、この一連の検討と吟味が思いのほか楽しい。前の句には絶対に自分が考えつかない世界が書かれていて、つなげた自分の句も知らない方向へ展開していって、予想しない形でまた戻ってくる。

書いた1句がずっと消えずに「この中で機能している」と実感できるのもいいのかもしれない。ちゃんと参加して、石垣の石を積めているのを毎回確認できる達成感というか。変な石を選んで組み方も下手くそなんだけれど、一応石垣の一部にはなっていて崩れずに他の石が重なっていく。

始める前は正直怖いとも思ったほどの連歌だけれど、やってみたら面白い。

出来上がりは同人誌「柊と南天」第4号で見られる予定です。

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自分が参加したことで、1句1句の役割とありがたみが分かってきた。たぶん参加していなかったら読めていない。1句ずつの解説がめちゃくちゃ助かる。「うむむ、なるほど、そうか」と今までになく真剣に目を通している。Kindle Unlimitedでも読めます。


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