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裏も表も  『塔』2018年1月号 掲載

会誌『塔』2018年1月号の特別作品ページで掲載の14首です。
テーマは人間ドック。

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問診を倦まず書き切る体力を試されている前日の夜

胃カメラはつるっと飲むと豪語する父という名の胃病のプロは

内臓の裏と表を見せますが間のことはメニューにあらず

年配と若手が交じる検体は窓の向こうでみんなが数字

京風の訛りを添えて歌うように呼吸指示する超音波技師

肺活量ためす患者を凌駕する「息吐いて」との絶え間ない声

声高に病歴を問う医師などに負けてはならじ声高に返す

聴力をはかる小部屋の戸が閉まり音が絶たれる瞬間を聞く

胃カメラを鼻から入れる 今われは死んだ魚と信じ続ける

管を飲む死んだ魚をあやすため看護師の手がゆるやかに打つ

カーブする白い胃壁は焼く前のホルモンに似てしわしわがあり

多すぎるティッシュボックス 一滴も垂れゆく洟を逃さぬ布陣

検査中に「痛い」といって聞き入れる医師に会わない今日も会わない

内臓の裏と表を見せました「異常なし」の字しばしよすがに

      *   *   *

この短歌をマッチ箱サイズ(A8)のミニミニ冊子にしました。

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印刷はレトロ印刷、ツヤプリで赤地がちょっと面白い感触に。ペラ紙に両面2色刷りしたものを切って綴じています。

フォントは機械彫刻用標準書体、よく電車の中のプラスチックパネルに刻印されているような書体です。イラストはペン描きしたものをAdobe Captureであっという間にベクター保存。Illustratorで面付けして版を作りました。

紙もインクもフォントも好きなもので揃えたので、綴じて形になっていくのが楽しかったですー。

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