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映画「グリーン・デスティニー」から学ぶ映画術

おはようございます。アルキメデス岡本です。

突然ですが、映画「グリーン・ディスティニ」ーをご存知でしょうか?

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良い映画、面白い映画はたくさんあるけれど、何度も観たくなる映画というのはそうそうあるものではない。この作品は何度観ても飽きない、観るたびに新たな発見がある作品である。

この映画は中国武侠ファンタジーで2000年に公開された、アカデミー外国語映画賞受賞作品である。

当時、観た時もいい映画だなと感じましたが、久々に観たらさらに良かったので20年振りにこの映画についてまとめたいと思います。

■あらすじ

剣の名手として武林にその名を知られた武当派のリー・ムーバイは、血で血を洗う江湖の争いに悩み、剣を捨てて引退することを決意する。そして、自身の名剣「碧名剣」(グリーン・デスティニー)をティエ氏に寄贈するために、密かに恋心を抱いていた同門の弟子で、鏢局を営むユー・シューリンに託す。シューリンは碧名剣を無事に北京のティエ氏宅に届けるものの、その夜、剣は何者かに盗まれてしまう。

キャスト

リー・ムーバイ(李慕白)

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ユー・シューリン(兪秀蓮)

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イェン(玉嬌龍)

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ロー(羅小虎)

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■解説

アカデミー監督として2度のオスカーを受賞しているアン・リー監督の初めての大衆娯楽カンフー映画が本作です。

映像美の面が大きく取り上げられている為、大きく誤解を受けている作品でもある様です。日本では文芸大作という側面が大きく話題となった為か、非常に高い評価を受けた作品ですが再び鑑賞したら、やっぱり大衆娯楽カンフー映画としてのクオリティの方が高い映画でした。

本作は、文芸大作とは程遠い、大衆小説を映画化した自由な発想で撮られた単なる娯楽作品であり、それはアカデミー外国語映画賞の 箔が誤解を与えたものに他なりません。

本作でアン・リー監督が目指したのは自分が大好きだった大衆小説の映画化であり香港娯楽映画のオマージュでした。中国で大衆小説と呼ばれるものは、現在の日本に置き換えますと漫画コミックの事を指すのだと思われます 。

本作が最も話題となったのは映画全般に導入されてその後 『マトリックス』 のアクションシーンでも話題を集めたアクション監督ユエン・ウーピンによる 『ワイヤーアクション』 の技術でしょう。

フワフワ 空中を飛ぶ非現実な映像に拒否反応 を起こす方も居るようですが、これは武術の達人による拳法の殺陣を堪能する作品と言うよりは、ミュージカルの舞台でピーターパン でも観る様な空中に浮かんだ状態での振り付けられたダンスを愉しむ作品だと思われます。

リー・ムーバイとイェンが対決する竹林でのシーンはまさに幽玄なミュージカルのようで、そこに流れるヨーヨー・マのチェロとマ・シャオフィの二胡がつむぎだす美しい旋律がミックスされ、その情景に引き込まれます。

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また舞台と人物設定も魅力的です。男は辮髪で女も中国服を着ています。どれだけ歴史に忠実か分かりませんが、当時の風俗と町並み、人物の姿は十分に異国情緒を感じられて興味深いです。その中で鮮やかなSFXとともにカンフーアクションが錯綜するさまは新鮮です。

ジャッキー・チェン的なコメディーカンフーものを想像していると異なります。もっとシリアスよりでストーリーがありますし、映像的にも芸術性が高い大衆娯楽映画に仕上がっています。

昨今、製作者が表舞台で好き勝手に言える時代になり、映画の皮を被った三流自主映画(はたして映画と呼べるのか)がゴミのように湧いてきています。

そもそも、映画というものが何なのか?知らないゴミ人間が映画術の勉強をするにもいいお手本となるでしょう。

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■武術アクション

チョウ・ユンファとミチェル・ヨーの二大スターが演じるアクションシーンも見応えがあります。

剣の達人リー・ムーバイの剣さばきは軽やかで、禅の達人でもあります。元々、カンフースターではないチョウ・ユンファの見事な剣術を観れる映画はあまりありません。

ミシェル・ヨーの武術もこの映画で際立っています。チャン・ツイーとの長丁場の対決シーンでは色々な武器を使い分けていましたが、非常に見応えがありました。

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■純愛ドラマ

迫力のあるアクションがある一方、それぞれの純愛ドラマが緻密に描かれています。名剣「グリーン・デスティニー」を取り返されてしまったイェンでしたが、女剣士になりたいという思いだけは捨てきれずにいます。しかし、イェンには親が決めた結婚の日が迫っています。親に従い結婚するのか、女剣士になるという思いを貫くのか、という人生の岐路に悩むイェン。

そんなイェンの前に一人の男が現れます。その男は、かつてイェン一家を襲いイェンをさらっていった盗賊の頭・ローです。二人はかつての恋仲であり、親に結婚相手を決められ自由のない人生に嫌気がさしていたイェンを自由な世界へと解放しようとします。

一方、リーとユーも互いを想い合う相思相愛の関係だったのです。しかし、ユーはリーの親友と結婚していた過去があり、また、リーとユーは師と弟子という関係であった事から、2人の想いは先へと進む事が叶わずにいます。そんな中でのリーの引退はユーに少なからずの動揺を与えますが、剣を託されたユーは直ちにティエの元へと向います。

■ラストの考察

グリーン・ディスティニーを巡り、物語はラストを迎えます。この映画を観た人はご存知でしょうが、この映画のラストでイェンは橋から飛び降ります。

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このラストははたしてどういう意味だったのか?

自殺説、リー・ムーバイ再生説、自由への旅立ち説など色々な考察があるようですが、私は自由の旅立ち説だと思っています。

荒野で愛を育んでいた時、ローはイェンにこんな伝説を話しています。

あの山から願いを込めて飛び降りたら願いが叶うという。飛び降りた人間もまったく無傷で生還するという。

とんでもない伝説ですが、イェンはそれを信じて飛び降ります。

もしかする、イェンの心の中ではリー・ムーバイから言われた言葉「信は真に通ず」が聞こえていたのかもしれません。

ほなまたお会いしましょう。バイバイ~♪





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