「夜のブルース」前篇(Blues in The Night)~ジョニー・マーサー徹底解剖6
さて今回は、ジョニー・マーサーの名声を決定づけた名曲『Blues in The Night』(ブルース・イン・ザ・ナイト)を取り上げよう。
日本では邦題の『夜のブルース』のほうが有名かな。
熱唱だね、キャロラインお姉さん!
だけど『夜のブルース』って邦題は、なんだかイマイチ…
演歌とかムード歌謡みたい(笑)
『夜のブルース』といえば、黒沢明とロス・プリモスやで。
ちなみに『銀座 夜のブルース』は石原裕次郎や。
五木ひろしの『夜明けのブルース』なんてのもあるけどね…
さて、この『Blues in The Night』は1941年に映画の主題歌として発表され、大ヒットを記録した。
翌年のアカデミー賞でも歌曲賞にノミネートされ、最有力候補とされていたんだ。
だけど大方の予想を裏切り、なぜか受賞を逃してしまうという「事件」が起こる…
この「事件」がきっかけで、アカデミー歌曲賞のルールが変更される事態になったという、いわくつきの歌なんだよね…
なにそれ!?
めっちゃ気になる!詳しく教えろ!
あわてない、あわてない。
この「日本の隠れゴスペルソング群」の代表曲『ははうえさま』でも聴いて、心を落ち着かせて。
「日本の隠れゴスペルソング群」って世界遺産みたいだな。
『ははうえさま』や『サザエさん』のオープニング&エンディングの歌は「日本の隠れゴスペルソング群」として世界文化遺産登録してもいいくらい、日本人にとって重要なものだと思うんだけどね。
他にもまだまだあるんだよ。
例えば…
それは別の機会にやってくれ!
とんでもなく長くなりそうな予感しかしない!
今は『夜のブルース』に集中しろ!
ブ~ラジャ―!
まず映画『Blues in The Night』の話から始めよう。
この映画の原作はブロードウェイのミュージカルだ。
あのエリア・カザンが関わっていた作品で、映画の脚本もエリア・カザンが書くはずだった。
ニューヨークで大成功していたカザンの、全国区進出記念作としてね…
Elia Kazan(1909 - 2003)
ああ、聞いたことある。
たしか女優ゾーイ・カザンのおじいちゃんだよね、この人。
なにが「ゾーイ・カザンのおじいちゃん」やねん!
『欲望という名の電車』『紳士協定』『エデンの東』『波止場』『群集の中の一つの顔』などで知られる、20世紀のアメリカ演劇・映画界を代表する大演出家や!
だけど映画界では苦労したんだ…
NYの演劇界での名声を引っ提げて西海岸へやって来たカザンだったけど、1940年当時のハリウッドでは、いくらニューヨークで有名人でも、無名の新人扱いだった…
脚本家なんて「いくらでも代わりのいる」使い捨ての存在だったんだね…
コーエン兄弟の『バートン・フィンク』みたい(笑)
そしてコロコロと変わるスタジオの方針によって、とうとうエリア・カザンの脚本はボツにされてしまった。
ええ!?
バートン・フィンク「みたい」じゃなくて、バートン・フィンク「そのまんま」じゃんか!
脚本をボツにされたカザンは、脇役の「クラリネット奏者」として映画に出演することになる。
ニューヨークではイケイケの演出家だったカザンにとって、まさに屈辱だよね…
後にカザンはこう語っている。
「監督のアナトール・リトヴァクの仕事を見て、僕の方が絶対に上手く撮れると思った」とね。
このとき自信が確信に変わったカザンは、1945年に初監督作品『A Three Grows in Brooklyn(ブルックリン横丁)』で華々しくメジャーデビューする。
『Blues in The Night』での屈辱が、彼の演出家魂に火をつけたんだね。
それでは、脚本をボツにされたエリア・カザンが脇役のクラリネット奏者を演じた映画『Blues in The Night』の予告編をどうぞ…
あのクラリネット奏者がゾーイ・カザンのおじいちゃんなのか!
ちょい待てぇ…
どアップになったラッパの穴に吸い込まれていく描写、どっかで見覚えが…
コーエン兄弟の『BARTON FINK』は、この『Blues in The Night』が元ネタなんだね。
わざわざニューヨークから招かれたのに脚本をボツにされたエリア・カザンを主人公のモデルにしただけじゃなく、各シーンがこの映画へのオマージュになっているんだ…
ズコっ!クリソツすぎ!
だからバートン・フィンクは自分がゲイじゃないかと悩んでいたんだね。
エリア・カザンが『Blues in The Night』で「クラリネット奏者」だったことが元ネタなんだ(笑)
へ?
フランスの猥歌『クラリネットをこわしちゃった』の話を前にしたやんけ…
あれはそもそも童謡とちゃう…
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