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エピローグ第8話:徽章をつけた紳士(The gentleman with the cockade) 『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解剖


僕にはこれが偶然とは思えない。

脚本を書いたマーティン・マクドナーは、明らかに『使徒言行録(使徒行伝)』を再現しようとしている。

チェーホフの『猟場の悲劇』に倣って…

教官が何を言ってるのかわからない人は、きっと前回を未読の人ね。

まずあっちを先に読んで頂戴。

長ったらしい小説を読むのは難儀やさかい、要点だけ教えろや。

OK。

チェーホフの小説『The Shooting Party(猟場の悲劇)』は、構成の大枠として、新約聖書の『使徒言行録(使徒行伝)』がそっくりそのまま使われている。

教会で行われるミサや結婚式の場面で『使徒行伝』が象徴的に朗誦されるのは、そのことを読者に示すヒントなんだよね。

しかも小説前半部の山場でもある結婚式では、わざわざ『使徒行伝』が「二倍のノロさ」で延々と朗誦されるんだ。

式の参列者がウンザリするくらいの長さでね(笑)

二倍のノロさ!?

もし葬式で坊さんが、ただでさえ長いお経を二倍のノロさで唱えた日には、聴かされる方はたまったもんやないで。

明らかにチェーホフは読者へ『使徒行伝』が物語の鍵であることを暗に伝えようとしているよね。

そんなことを踏まえながら、小説『猟場の悲劇』のアイデアやプロットがどう映画『スリー・ビルボード』に応用されたのかを見ていこう。

フカヨミメイタンテイ オカエモンノ オテナミハイケント イキマスカ…

・・・・・

まず『猟場の悲劇』はプロローグである「前書き」から始まる。

舞台はモスクワの「とある出版社の編集長室」だ。

そこへ小説の主人公である予審判事が「殺人事件のルポルタージュ」の出版依頼(新聞の連載小説)に訪れる。

『スリー・ビルボード』でいうところの、エビングにある「とある広告代理店の支店長室」だね。

そして映画の主人公である被害者の母親が「殺人事件の捜査&解決を促す抗議広告」の出稿依頼に訪れる。

その通り。

冒頭シーンで訪問&出稿依頼する主人公は、『猟場の悲劇』では「真犯人」だけど、『スリー・ビルボード』では「被害者の母」だった…

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