深読み バック・トゥ・ザ・フューチャー vol.14(第184話)
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2019年9月19日
スナックふかよみ
ちょっと待って…
本当に全部BTTFのことっぽく聴こえるかも…
「ことっぽく」じゃなくて「そのもの」なんだよ。
ま、まさか…
もう一度聴いてもいいですか?
どうぞ。
あっ!
もしや1番は、マーティが1955年に…
その通り。
When I find myself in times of trouble,
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom, “let it be”
僕がタイムトラベルでトラブった時
処女マリアのような母が現われて
含蓄のある言葉を口にした
「let it be」
続く歌詞は、その時の詳細な状況だね。
And in my hour of darkness,
She is standing right in front of me
Speaking words of wisdom, “let it be”
僕が暗闇の中で気を失っていた間
彼女は僕の枕元に立ち続け
含蓄のある言葉を口にした
「let it be」
そのまんまだわ…
でしょ?
水を差すようですが…
ロレインは「let it be」と言ってません…
ちゃんとセリフ聴いてた?
え?
ロレインはハッキリと言ってたよ。
しかもあのシーンの第一声で。
第一声で?
マーティンが目覚めた時にですか?
そうだよ。
そんなこと言ってませんでしたが…
マーティンが「Mon?Is that you?」と尋ねた時、ロレインはこう答えたよね?
「There now, just relax」
はい。
ほら。「let it be」じゃん。
は?
「リラックス」の駄洒落なんだよ。
ダジャレ?
「relax」と「re-lux」の駄洒落。
ロレインは「There now, just re-lux」と言ったんだ。
re-lux? 何ですかそれ?
「lux」とはラテン語で「光」のこと。
世界中で愛されている人物名「Luke」の語源だね。
ルーク?
『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカーも有名だけど、世界にはもっと有名なルークがいるよね
いたっけ?
ポールの付き人だったルークだ。
ポールの付き人?
『ルカによる福音書』や『使徒言行録(使徒行伝)』の著者LUKEのことだよ。
彼はPAUL(パウロ)の従者だったと言われている。
『Luke the Evangelist』
やだ。またスケボーに乗ってる…
昔の絵には本当に多いよね。「スケートボードらしきものに乗った人物」の描写が。
『サマリアの女』
ベネデット・ルティ
確かに似てますが、車輪が無いから何とも言えないと思います。
もしかしたら当時は本当に「車輪の無いスケボー」があったのかもしれんぞ。
いわゆる「失われた超古代文明の科学技術」じゃ…
あ、ありえません!
冗談じゃ冗談。いちいち真に受けるな。
ちなみに、さっきの福音記者ルカは「生まれたばかりのイエスを抱くマリア」の絵を描いてたけど、彼は絵描きでもあったの?
伝承によると、ルカは「処女マリアの絵」を初めて描いた人物なんだそうだ。
おそらく『ルカによる福音書』に「受胎告知」が克明に記述されているから、そういうふうに思われたんだろう。
「あれだけ詳しく書けるのは、若い頃のマリアを知っていたからに違いない」とね。
あっ!受胎告知といえば!
そう。BTTFのあのシーン…
マーティと母ロレインの出会いのシーンは、フラ・アンジェリコの『受胎告知』がモチーフになっていた。
どちらも、まだ未婚で処女の女性に「すでに子供がいること」を示す場面だからね…
そして、異世界から来たメッセンジャーがチラッと見せる下着…
どちらも薄紫でした…
そして『LUKE(ルカによる福音書)』に描かれる「受胎告知」の場面では、最後に処女マリアが天使にこんなセリフを言う。
Luke (RSV)
1:37 For with God nothing will be impossible.”
1:38 And Mary said, “Behold, I am the handmaid of the Lord; let it be to me according to your word.” And the angel departed from her.
あっ!「let it be」だ!
聖書には様々なバージョンがあるんだけど、1942年生まれのポール・マッカートニーが読んでいたのは、「let it be」というフレーズが登場する『RSV(改訂標準訳聖書)』だろう。
ちなみに日本語にすると、こんな感じになる。
天使「神にとって不可能なことなど何も無いのです」
マリア「見ての通り私は主のはしためです。あなたの言葉通りのことが、私の身になされますように」
そして天使は彼女の元を去った。
そしてBTTFでも、マーティの言う通りのことが起こり、ロレインの元からマーティは去った…
だから、あのシーンの冒頭でロレインは言ったんだよ。
There now, just re-lux
さあ今から『Luke(ルカ)』の再現よ
とね。
なんてこった…
ちなみに『LET IT BE』という歌は、ポール・マッカートニーの苦悩から誕生した歌…
当時、バラバラになってしまったビートルズを元に戻そうと、ポールは孤軍奮闘していた。
スタジオでダラダラとセッションしてみたり、昔やっていたようなシンプルな曲を屋上ライブ「ルーフトップ・コンサート」で演奏したりして、ファミリーだった頃を「GET BACK」しようと試みたわけだ。
だけどポールが張り切れば張り切るほど、あの頃を「GET BACK」するどころか、ますます遠のいてしまうという皮肉…
結局ビートルズは空中分解してしまい、アルバムのタイトルも「GET BACK」から「LET IT BE」に変更されてしまった。
以前の状態を「取り戻す」ことが出来ず「あるがままに」状態へ…
BTTFとは結末が異なりますね…
そうかしら?
え?
マーティも昔のファミリーを「GET BACK」できなかったわよね?
いざ戻ってみたら、マクフライ家は「LET IT BE」状態だった。
マーティが張り切り過ぎたせいで1955年のジョージが自信をつけてしまい、あの頃のファミリーは失われてしまったの…
あ、確かにそうとも取れますね…
あたし、改変前のジョージ・パパも好きだったな…
すべてを手に入れることが、はたして幸せなのかしら?
ふぉーっふぉっふぉ。
何がおかしいんですか?
何でもない。気にするな。
さて、1955年におけるマーティと母ロレインの出会いのシーンは、彼女の「ある一言」で幕を閉じる。
一家団欒の夕食の席でロレインは、いろんな理由をつけてマーティがこのまま家に泊まる方向に持って行こうとした。
そして、マーティの太腿を撫でながら、こう囁くんだ…
「わたしの部屋で寝てもいい…」
マーティは驚いて飛び上がり、慌ててロレインの家を去る。
1番のサビですね。
とんでもない「words of wisdom」ですが…
Let it be, let it be
Let it be, let it be
Whisper words of wisdom
Let it be
そういうこと。
では2番を見てみよう。
And when the brokenhearted people
living in the world agree
There will be an answer, let it be
ハートブレイクした人たちが
生きていくことの認められる世界になった時
答えは見つかるだろう
let it be
うーん。何のことでしょうか…
歌詞はこう続く。
For though they may be parted,
there is still a chance that they will see
There will be an answer, let it be
たとえ別れの時が来ようとも
また会うチャンスは必ずある
答えは見つかるだろう
let it be
あっ!ドクのことじゃない!?
ドクはJVCに録画されていた1985年のあの夜の自分を見て、その後に何が起こるのかを悟り、深く傷ついてしまったわ。
普通なら「未来の自分」がもう一台タイムマシンを作ってマーティを助けに来るはず…
だけど「来ない」ということは、あれが自分の最期の姿…
そう。ドクはあの夜に自分が死ぬことを知ってしまった。
マーティは「ドクの死」を回避するために詳細を伝えようとするけど、ドクは「未来を知ることは危険だ」と言ってそれを拒む…
そしてマーティは、未来へ戻る前に手紙を書いた。
「あの夜の出来事」を書いた手紙を…
2番のサビの前半部ね。
Let it be, let it be
Let it be, let it be
Yeah, there will be an answer
Let it be
「未来を知るのは危険」が信条のドクは、手紙をビリビリに破ってしまいました…
だけどマーティが未来へ去った後に、結局読んでしまう…
そして、テロリストによる「ハートブレイク」を回避して、生き続けることを選んだ…
その通り。
つまり2番のサビ後半でささやかれる「words of wisdom」とは?
Let it be, let it be
Let it be, let it be
Whisper words of wisdom
Let it be
「歴史を変えてはいけない教」から「改宗」したドクのセリフね。
Well, I figured, what the hell ?
気付いたのだよ。それが何だ?と
そういうこと。
なんてこった…
完璧に歌詞が再現されています…
まだまだこんなもんじゃないよ。
フィナーレを飾る3番が残っている。
それでは歌詞を見てみよう…
つづく
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