深読み バック・トゥ・ザ・フューチャー vol.13(第183話)
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2019年9月19日
スナックふかよみ
うふふ。
さあ、気が済むまでBTTFを深読みして頂戴。
深読む馬鹿が、あたしは好きよ(笑)
あ… どうも…
ふぉーっふぉっふぉ。
結局こうなるんだから、余計な心配なんかしなくていいの!
さあ聴かせて頂戴、岡江クン!
BTTFと『レット・イット・ビー』の関係を!
うん、わかった…
それではまず、もう一度『Dig it』を聴いてもらうとしようか。
こんな意味不明な曲、どうでもよくない?
もっと深読みし甲斐のありそうな次の曲『LET IT BE』から始めましょうよ。
何度聞いてもいい歌ですよね。
これこそ名曲よ。
名探偵 金田一耕助シリーズ『悪霊島』の主題歌にもなったくらいなんだから。
映画公開当時はビートルズ本人の曲が使われていたのか…
私がビデオで観た時は、誰かのカバーバージョンでした。
オトナの事情ってやつね。
なぜ『レット・イット・ビー』の冒頭フレーズは…
はい?
「僕がタイムトラベルに気付いた時」と聴こえるのか…
え? 今なんて言った?
なぜ『レット・イット・ビー』の冒頭フレーズは「僕がタイムトラベルに気付いた時」と聴こえるのか?
ちょっと待って。どういうこと?
試しに歌ってみてごらん。
まさかァ…
♫When I find myself in time travel…
あれ?
でしょ?
「When I find myself in time travel」と歌ってるように聴こえるんだ。
空耳アワーみたいです…
もう、そうとしか思えません…
聞きまつがい。
確かにこれは、空耳であり、聞き間違い…
だけど、確かに「僕がタイムトラベルに気付いた時」と聴こえるんだ…
どういうことなの、これは?
いったい何を意味してるの?
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、フランク・シナトラ主演映画『It happened in Brooklyn』だけが元ネタなのではなかった…
ビートルズの『LET IT BE』も元ネタになっていたんだ…
『It happened in Brooklyn』と『LET IT BE』が合わさって、はじめてBTTFが完成するんだよ…
マジで?
その鍵を握っていたのが『Dig it』…
あの曲の中にヒントが隠されていた…
あのふざけた曲に?
あの意味不明な言葉の羅列が『BACK TO THE FUTURE』に影響を与えたと?
その通り。
まずジョン・レノンが「Like a Rolling Stone」という言葉を3度繰り返す。
これはボブ・ディランの『ライク・ア・ローリング・ストーン』のことですよね?
その通り。
あの有名なサビを聴いて、どんなことを感じる?
How does it feel?
How does it feel
To be on your own
With no direction home
Like a complete unknown
Like a rolling stone ?
家に帰る手段も無い…
自分のことを全く誰も知らない…
まるで石コロみたいな存在…
これは…
1955年のヒル・バレーに来てしまった時のマーティだわ…
そしてジョンは、アルファベット3文字の組織を3つを挙げる。
FBI、CIA、BBC
連邦捜査局、中央情報局、イギリス国営放送でしょ?
あっ!
ドクの全自動朝食マシンについてたテレビで流れていたニュースです!
その通り。
「行方不明になったプルトニウムは、リビアのテロリストに奪われたのでは?」というニュースだったね。
そしてそれを否定するFBIのコメントが紹介されていた。
ここでは触れられていなかったけど、こういうケースでは当然CIAがメインで動いている。
次にジョンは3人の名前を挙げます…
まずは「B・B・KING」…
B・B・キングがチャック・ベリーに置き換わったんだね。
両者は1歳違い。同時代のギターヒーローだ。
次にジョンが挙げるのは「Doris Day」だわ…
だけどなぜこの流れでドリス・デイなのかしら?
Doris Day(Doris Mary Ann Kappelhoff)
理由は2つ考えられる。
2つ?
まず1つ目。
次に名前が挙げられる「Matt Busby(マット・バスビー)」と同様に、ドリス・デイは1968年に注目された人物だからだ。
注目?何があったの?
最愛の夫マーティンが亡くなり、彼女は映画界から引退した。
そしてテレビに活躍の場を移し、初の冠番組『The Doris Day Show』をスタートさせる。
当然ジョンも見ていたはずだ。
もちろん、BTTFを作ったロバート・ゼメキス、ボブ・ゲイル、スティーヴン・スピルバーグの3人もね…
どんな番組だったのでしょう?
ドリス演じる主人公「ドリス・マーティン」が、疎遠になっていた父の住むカリフォルニアのド田舎 Mill Valley(ミル・バレー)にやって来て…
さまざまなカルチャーギャップに驚きながらも、家族の愛情を深めていくという物語…
それって…
ど田舎だった1955年の Hill Valley(ヒル・バレー)にやって来て、カルチャーギャップに驚きながらも、精神的に疎遠だった家族との愛情を深める Martin(マーティ)の物語BTTFそのものじゃん…
しかもアインシュタインみたいな犬もいました…
そして、この番組の主題歌にドリス・デイの代表曲『Que sera, sera. What will be, will be(ケ・セラ・セラ)』が使われ、10年ぶりにリバイバル・ヒットした。
そういえば…
「ケ・セラ・セラ」と「レット・イット・ビー」って、同じような意味じゃない?
どっちも「なるようになる」みたいな意味でしょ?
その通り。
ジョンがドリス・デイの名前を出したもう1つの理由が「ケ・セラ・セラ」だろう。
そしてBTTFの制作チームも、このアイデアをしっかりと使った…
え?
歌詞をよく聴いてみてほしい。
どんなことが歌われているかな?
1番では、少女が将来の容姿や経済状態について母に尋ね、「未来は誰にもわからない。なるようになる」と諭され…
2番では、少女が恋をして、彼に将来はバラ色かどうか尋ねると、「未来は誰にもわからない。なるようになる」と言われ…
3番では、少女が母親になり、子供から同じようなことを聞かれ、優しく答える…
「未来は誰にもわからない。なるようになるのよ」
この「少女」って、ロレインのことじゃない?
ですよね…
その通り。
1番は、1955年当時のロレインだ。
When I was just a little girl
I asked my mother what will I be
Will I be pretty?
Will I be rich?
Here's what she said to me...
ロレインの家は裕福そうな感じだったけど、子だくさんなので生活自体は大変そうだった…
お母さんは6人目の子供を妊娠中だったしね…
そしてマーティが運び込まれたあの日は、家に初めてテレビが来た日…
1955年当時では、かなり遅い方だ…
なのにマーティは「うちには2台ある」と言ってしまい、皆を驚かせてしまう…
この時代にテレビが2台もあるのは、かなりの金持ちの家だけ…
ロレインは俄然色めき立ち、マーティを家に泊めて、モノにしようとする…
あっ…
ロレインの弟とマーティの会話…
あの夜に放送されていたコメディ番組は、マーティがタイムスリップする前、マクフライ家の食事シーンで父ジョージと兄が観ていたもの。
だからマーティは思わず「これ知ってる!再放送してた!」と言ってしまった。
その意味を尋ねられて困ったマーティは「今はわからないだろうけど、そのうちわかる」と答えるしかなかった…
The future's not ours to see
Que sera, sera
What will be, will be
未来は私たちに見える代物ではない
ケ・セラ・セラ、なるようになる
まさにサビの通り。
2番で少女が恋に落ちて、将来のことを質問する相手はジョージのことですよね?
Will we have rainbows day after day
私たちの未来は虹色かしら?
改変された1985年はバラ色の未来で、マーティの父ジョージはSF小説『A MATCH MADE IN SPACE(宙で生み出された結合)』を出版します。
ちなみに改変前の1985年でも「虹」はあった。
ロレインはレインボーカラーのシャツを着ていたよね。
うわっ、ホントだ…
しかも2番で少女が質問する相手はマーティのことにもとれる。
ロレインが最初に恋したのは、マーティだったからね…
When I grew up and fell in love
I asked my sweetheart what lies ahead
あっ!
「私は愛しの人に、この先のことを尋ねた」とも読めるし…
「私は目の前に横たわる愛しの人に尋ねた」とも読めます…
そして「lies ahead」は「目の前に横たわる」と「この先の嘘」のどちらにもとれる。
確かに…
3番は、少女が大人になり、結婚して子供たちの母になっている。
つまり1985年のロレインだ。
Now I have Children of my own
They ask their mother what will I be
Will I be handsome?
Will I be rich?
I tell them tenderly...
改変前の1985年では、家が貧乏で車もボロくて、マーティは恋人のジェニファーにカッコいいところを見せられなかった…
だけど改変後の1985年では、家が金持ちになっていて、ジェニファーをドライブに連れて行く憧れの車も手にしていました…
改変前の世界とは打って変わってハンサムでリッチになった自分に驚くマーティ…
そんな息子の姿をロレインはジョージと優しく見守っていました…
だね。そしてサビに続く。
Que sera, sera
Whatever will be, will be
The future's not ours to see
ケ・セラ・セラ
何事もなるようになるものよ
未来は私たちが見通せるものではないから
ロレインには、こんな未来を見通せるわけがなかった…
なぜなら、息子マーティのタイムトラベルによって、書き換えられてしまった未来だから…
そういうこと。
ドリス・デイの『ケ・セラ・セラ』は、まさにBTTFのロレインの物語になっている。
なんてことなの…
では、最後に名前が挙げられる Matt Busby(マット・バスビー)とBTTFの関係は?
マット・バスビーとマンチェスターユナイテッドの選手たちを乗せた飛行機は、ミュンヘンの空港から離陸する際にオーバーランしてしまい、滑走路を飛び出して空港のフェンスを突き破り、そのまま外の民家に激突して炎上した。
それがデロリアンのタイムトラベルする際の描写に投影されている。
これは不謹慎なネタなので、これ以上は触れないでおく。
なるほど…
そして『Dig it』は、ジョンの裏声によるMCで締め括られる。
That was 'Can You Dig It ?' by Georgie Wood,
And now we'd like to do 'Hark, the Angels Come.'
以上、ジョージー・ウッドの『わかったか、この野郎』でした
そしてこれからお届けしますのは『ほら!天使が降りてきたぞ』です
ここまでの自分の酷い歌を自虐的に卑下し、次に始まるポールの名曲『レット・イット・ビー』を天使の歌に喩えたわけですね。
ん? これって「魅惑の深海ダンスパーティー」のことじゃない?…
あっ!
その通り。
まず駐車場でジョージがビフを初めて叩きのめし…
それから、マーティとマーヴィン・ベリー&ザ・スターライターズが演奏する天使の歌『EARTH ANGEL』が流れ…
ジョージはもうひとり邪魔者をやっつけて、ついにロレインと運命のキスをする…
そのまんまじゃん…
そう。ジョンのMCそのまんま。
そして、それに続く『レット・イット・ビー』の歌詞も…
When I find myself in time travel…
僕がタイムトラベルに気付いた時...
ちょっと待って…
本当に全部BTTFのことっぽく聴こえるかも…
「ことっぽく」じゃなくて「そのもの」なんだよ。
それでは詳しく解説するとしよう。
つづく
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