ツルガキ!全米興行収入ランキング(7/21-23)&傑作ホラー『ドント・ブリーズ』を生んだ「三人のロッキー」続編
① DUNKIRK
$50.5M(初登場)
② GIRLS TRIP
$30.4M(初登場)
③ Spider-Man: Homecoming
$22.0M ($251.7M)3週目
④ War for the Planet of the Apes
$20.4M ($97.8M)2週目
⑤ Valerian and the City of a Thousand Planets
$17.0M(初登場)
⑥ Despicable Me 3
$12.7M ($213.3M)4週目
⑦ BABY DRIVER
$6.0M ($84.2M)4週目
⑧ THE BIG SICK
$5.0M ($24.5M)5週目
⑨ WONDER WOMAN
$4.6M ($389.0M)8週目
⑩ WISH UPON
$2.5M ($10.5M)2週目
話題の映画が3つも上位に入って来て、入れ替わりの激しい週末でしたね。
今週末は、イギリスが生んだ金髪核弾頭女『アトミック・ブロンド』と、おしゃべりウンコが大活躍する『EMOJI MOVIE』が公開されます。
パツキン姉ちゃんが勝つか、喋るウンコが勝つか…
結果はまた来週のこの時間のお楽しみに…
以上、先週末(7/21~23)の全米興行収入ランキングでした…
おい待てェ!
なんじゃこりゃァ!?
手ェ抜くにもホドがあるっちゅうもんやろ!
いつもは頼んでも無いのにお腹いっぱいになるまで解説してくれるのに…
第2次大戦の大撤退作戦を描いた『ダンケルク』とか、おバカでエッチな『ガールズ・トリップ』とか、リュック・ベッソンの新作SF映画『ナントカカントカ…』とか、全部おかえもん好きそうじゃん!
前に紹介した「おかえもん注目銘柄」だって、まだランキングに入っているし!
『猿の惑星:聖戦記』(ツルガキ7/14-16編)とか…
『ベイビー・ドライバー』(ツルガキ6/30-7/2編)とか…
『THE BIG SICK』(ツルガキ7/7-9編)とか…
ベイビー・ドライバーで思い出したわ!
オッサン!『サイモンとガーファンクル「BABY DRIVER」と映画「ベイビー・ドライバー」の謎に迫る』の回で、ワイの質問に1つしか答えとらんかったやろ!
答えは「2つある」って言うたやんけ!
ああ、そうだったね。疲れてたんで、すっかり忘れてた…
もう1つの理由は、
S&Gの「BABY DRIVER」は2輪バイクの歌なんで、4輪のスバルで疾走する映画『ベイビー・ドライバー』には使えなかった…
ってことだ。
僕はよく「日本公開日は8月19日、バイクの日です。バイクと全然関係ないけど(笑)」ってネタにしてたけど、あれは撤回するよ。
バイクと関係あったからね。失礼しました、日本の関係者の皆さん…
まさかこんな粋な計らいで公開日を選んでいたとは…
そこは偶然やろ。
さて、スッキリしたところで、いってみようか!
『ドント・ブリーズ』と「三人のロッキー」の続きだよ!
これが早く書きたかったんだね…
皆さんにいちおう断っておくけど、例によっておかえもんはネタバレとか遠慮なしに話を進めるんで、そこのところは自己責任でお願いします。
ネタバレどころの騒ぎじゃないで。作者とか登場人物の思いを勝手に想像して代弁することも多々あるから気ィつけや。これらはあくまでもオッサンのタワゴトや。いかにもそれっぽく書いてあるけど、すべてを真にウケたらアカン。
ありがとう、君たち…
さて、『ドント・ブリーズ』は日本でも結構ヒットした映画らしいから、多くの人がすでに観ているかと思う。でもこの夏にまた観る機会があるかもしれない。そんな時にこのツルガキが役に立つようになればな…なんて思いながら書いてるんだ。こんな見方があったんだ!みたいな。一粒で二度おいしい!みたいな。
ではまず予告編から。
この映画『DON’T BREATHE』のベースになった『ROCKY』の「てんとう虫」と「リンゴorオレンジ」の話のところで前回は終わったんだよね。
どっちから始めようか?
どっちでもええけど、順番からいったら「てんとう虫」や。
よし、じゃあまずこの予告編を観て。
みんな大好き、1976年公開の世界的大ヒット映画『ロッキー』だ。
スタローンの出世作にして、映画史に輝く不朽の名作や。生涯で何遍観たことか。
オイラもテレビで観たことある!
「あらすじ」は要らないよね?
落ちぶれたボクサーのダメ男ロッキーが地味子エイドリアンをゲットして、ひょんなことから世界チャンピオンの噛ませ犬に指名されて、厳しいトレーニングを積んで生まれ変わって、試合では予想外の善戦を見せて、最後に「エイドリアーン!」…って感じの物語だ。
せやな。あの予告編は完璧なダイジェストや。細部が気になるっちゅう人は、wikiでも見とったらええ。
ありがとう、ナンボク。
さて…、もうみんな、あの予告編で気付いたでしょ?
愛の成就の象徴「テントウムシ」が、どアップで登場したよね。
ふぁっ!?
ど、ど、ど、どこに!?
ほら。
(さっきのYouTubeより)
エイドリア~ン!?
あの赤い帽子がテントウムシなんだよ。
エイドリアンの黒髪とセットで、そう見えるでしょ?
なるほど!
愛するロッキーの勝利を祈るため、自らが「幸運を呼ぶテントウムシ」にコスプレしたってわけだね!
地味子の鑑じゃんか!
いや、違うんだ。
あれはロッキーのためじゃない。
自分のためなんだ。
ええ~!?
映画『ロッキー』は、落ちぶれた男ロッキーがどん底から這い上がる戦いを描いたドラマであると同時に、エイドリアンの闘いを描いたドラマでもあるんだよね。
エイドリアンの闘い?
誰と?
エイリアンと間違ってない?
自分自身との闘いだよ。
エイドリアンは女として自信がなかった。自分は無価値の人間だとすら思っていた。だから動物相手だと安心できる。男性の目を見て話もできなかったくらいだからね。いい年して全く男っ気も無いんで兄も心配していたんだ。
そこにロッキーが猛烈に口説いてきた。ひたすら褒める。恥ずかしくなるようなセリフもストレートに口に出す。直球ど真ん中の口説き方だ。まさに”イタリアの種馬”らしく。
しかしエイドリアンは、自分の想いをロッキーに言えないんだ。褒められても、素直に喜びの言葉を口に出せない。エッチの時に「綺麗だよ」って言われても「からかわないで…」って否定してしまう。本当はそんなロッキーにも負けないくらい熱烈に愛しているのに、それを自分の言葉で伝えられない。もちろん体でも表現できない。
これまでの人生で、エイドリアンは自分の想いを誰かにぶつけたことがなかった。自分をさらけ出したことがないんだ。本当は、心の底から「愛してる!」って叫んで、野獣の如く抱きついて、猛烈にブチュ~ってしたいのにね。
だから彼女は「幸運のテントウムシ」にすがっていた。
自分の口で言えないから、他力本願になっていたというわけだ。
欧米では、テントウムシが「女性に幸運をもたらす」って言われている。幸運というのは、ほとんど恋愛のことなんだけどね。
まあコチラのまとめ記事に詳しい。
なるほど!
だからラストシーンで「帽子が落ちること」が重要な意味をもっているんだ。
リングに向かう途中で帽子が落ちた時、帽子の行方をチラッと振り向くんだけど、すぐに前を向いてそのまま進んで行くんだね。
リングの上には、ほとんど目の見えない状態のロッキーが待っている。エイドリアンの声が聞こえて、その存在に気付くんだけど、目がぼやけて姿が確認できない。彼女が目の前まで来て、ロッキーはようやくエイドリアンだと気付く。
ロッキーの視力はほとんど無い状態なんで、エイドリアンの表情は全くわからない。でも、頭の上にあるはずの赤いものが無いことには気付いた。だからロッキーは第一声でこう言うんだ。
「帽子はどこだ?」
そしてエイドリアンは、こう叫ぶ。心の底から。
「I LOVE YOU!」
ロッキーは鳩が豆鉄砲状態だ。キツネにつままれたような気分で答える。
「あ、あいらぶゆー」
そしてエイドリアンは、ロッキーの首根っこに両手をまわし、無我夢中で抱きつく。
めでたしめでたし。
せやったんか!
そんでロッキーの「あいらぶゆー」は棒読みやったんやな!
てっきりワイはスタローンの演技力のせいやとばっかり思っとったんやけど…
あれは「鳩が豆鉄砲食らった状態」を完璧に表現した最高の演技やったんか!!!
今まで気がつかんで堪忍な、シルヴェスター。
そうだよ。スタローンは名優なんだから。
さて、試合には負けたけど、ロッキーはアポロと最終ラウンドまで戦い抜いた。
そしてエイドリアンも「幸せを運ぶテントウムシ」が無くなってしまっても、自分の力で愛を伝えることができた。
立ち向かうことから逃げ、運命を待つだけの女からの卒業だ。やっと自分で道を切り拓けたんだね。
映画『ロッキー』とは、この愛し合う二人の、それぞれの闘いの物語なんだ。
う、う、う…
というわけで、『ドント・ブリーズ』の「てんとう虫」のモチーフは、『ロッキー』から来ているってことが理解できたかと思う。
まだ映画見とらんから何とも言えへんけど、オッサンの熱い想いだけは伝わった。
そこは映画を観て頂戴な。
「テントウムシ」にすがって、人生からも「盲目の老人」からも逃げてばかりだったロッキーだけど、ある時を境に自分で道を切り拓こうと立ち上がるんだ。
素晴らしいオマージュだね。
ちなみに映画『ロッキー』予告編からは、まだまだ他にも『ドント・ブリーズ』に使われたオマージュネタを見つけることができる。
なあに?
ロッキーはトレーナーだったミッキーから罵倒されて自信喪失してたね。ボクシングしか生きる道のないロッキーにとっては、キツい言葉だ。ちなみにロッキーは、かつて母親からこんなことを言われていた。
「お前は頭が良くないんだから、体を使ってお金を稼ぎなさい」
『ドント・ブリーズ』のロッキーも同じようなことを母親から言われる。
前回のやつだね。
そして「吊るされたボディ」。
『ロッキー』では冷凍の牛だったけど、『ドント・ブリーズ』では人間が吊るされる。
ひゃあ!
そしてこれも有名なシーン。「生卵の一気飲み」だ。
口から生卵汁が滴り落ちるのも気にせずロッキーは飲み干す。
『ドント・ブリーズ』でもロッキーは「似たようなもの」を「飲ませられ」そうになるね。でも危機一髪助かって、逆に老人の口にお見舞いするんだ。スタローンロッキーの生卵みたいに。てか、ほとんど『エイリアン2』のビショップみたいだけどね。
ちなみにテントウムシってのは、敵に襲われると「苦い汁」をお見舞いするんだ。呑み込もうとした相手は思わず「オエッ」っとなってしまう。
オエッ!
そしてロッキーがアポロとの試合に向かうシーン。
試合を見るのが怖くて控室に残ると言ったエイドリアンに対し、ロッキーは「俺が戦ってる間に、町から逃げるんじゃないだろうな?」って冗談っぽく答える。そして控室を出る間際にこんなセリフを言う。「逃げちゃだめだ」って。
『ドント・ブリーズ』のロッキーも最後は逃げずに立ち向かった。そして『ロッキー3』みたいにカリフォルニアへ行く。
そうそう、『ドント・ブリーズ』の最後のシーンは『ロッキー』のこのポスターへのオマージュだ。
これは「ロッキーが試合会場からエイドリアンと共に去っていく」シーンを描いたものだね。結局映画では使われなかったシーン。アポロとの試合には勝てなかったけど、自分との闘いに勝ったロッキーとエイドリアンの美しいシルエットだ。
『ドント・ブリーズ』では、老人との「試合」には勝てなかったけど、自分との闘いには勝ったロッキーが、最も大切な「女性」と去っていくシーンだった。
へえ、そうなのか。
ねえねえ、ところで「リンゴ」は?
また途中で力尽きる前に、早く教えてよ!
そうだった。
「リンゴ」は映画『ロッキー』における最重要アイテムだ。
いや、その後のシリーズ作もすべて「リンゴ」から生まれた。
この「リンゴ」のおかげで、エイドリアンが病に倒れ(ロッキー2)、カリフォルニアに行くことになり(ロッキー3)、イワン・ドラゴという名の怪物と戦う羽目になる(ロッキー4)。
「リンゴもしくはオレンジ」でしょ?
そう。
実はこれ、「黄金の林檎」のことなんだ。
黄金の林檎!?
ギリシャ神話とか北欧神話とか、印欧語族の様々な神話や民話に出てくる不思議な果実なんだよ。不老不死、永遠の命をもたらしてくれる。
そしてもともとappleという言葉は「果実」という意味だった。別にリンゴだけを指す言葉では無かったんだね。だから「黄金の林檎」という言葉が「オレンジ」のことだったりする言語が多い。
変なの。だから『ロッキー』でも、リンゴっぽくも見えて、オレンジっぽくも見えたんだ。
ロッキーの心の故郷イタリアに至っては「トマト」のこと指す。
だから映画の最初のほうでトレーナーのミッキーに「お前は痛んだトマトだ!」って罵倒されてたんか。
で、そのあと人間的に立ち直ったんで「黄金の林檎」を手にしたっちゅうわけや。ランニング中に。
でも「黄金の林檎」には、恐ろしい「副作用」もあるんだ。
それを手にした者は、周囲の激しい嫉妬を受けることになる。時にはそれが悲惨な戦争にまで発展することも…。それがトロイア戦争だね。それまで仲が良かったところに「黄金の林檎」が投げ込まれたことによって、ちょっとした諍いが始まり、それが収集つかない事態にまで発展したんだ。
映画『ロッキー』では、ロッキーが世界チャンプのアポロの試合相手に選ばれたことで、周囲の人間関係が崩れていく。ロッキーが一躍スターになったことで、皆が嫉妬心に駆られてしまうんだ。もちろんロッキー自身も、ね。
その象徴が、市場で投げ渡された「リンゴorオレンジ」ってわけだ。
なるほど。
だから『ドント・ブリーズ』のマネーも、リンゴを手にしてオカシクなっちゃったんだね。ロッキーやアレックスに対して急に嫉妬深くなったりして。
残念ながら「永遠の命」は得られなかったけどね。
「黄金の林檎」をもっと詳しく知りたい人は、このwikiでも参考にして頂戴。
エイドリアンはギリシャ神話の「アタランテー」から作られたキャラクターだってこともわかる。結婚を恐れる高齢の処女だったことや、やっと結婚したと思ったら相手が獣になってしまったとか。映画『ロッキー』では虎だったよね。
よっしゃ!
がってん、がってん、や!
そろそろ『ドント・ブリーズ』を生み出した「偉大なる3人のロッキー」の最後の1人を紹介してもらおか!
オイラわくわくすっぞ!
そうだね。
じゃあ発表しようか…
ホラー映画『ドント・ブリーズ』を生み出した「偉大なる3人のロッキー」の最後のひとり…
その名は…
ロッキー!
ご名答!
いやマジで?
そのまんまやんけ…
前回のタイトル画で「ん?このスティングめっちゃロッキー・ホラーやん」って思うたワイは、勘が冴えとったっちゅうこっちゃな。
ホラー映画の傑作『ドント・ブリーズ』は、
①ポリスの『ロクサーヌ』
②スタローンの『ロッキー』
③カルトムービー『ロッキー・ホラー・ショー』
から誕生した。
他にもいろいろ小ネタは使われてるけれど、ベース部分はこの3つのロッキーから出来ている。
この3つのストーリーを誰にもバレないように組み合わせて、見事なホラームービーを作り上げたんだ。
凄い!…のかな?
十分素晴らしい。
特に『ロッキー・ホラー・ショー』は僕の大好きな作品だから、もうそれだけで感動してしまう。よくぞここまで皆に気付かれないようにオマージュしまくったな!って。
ということで、今回はここまでにしておこう。
え~!?
せっかく第三のロッキーが判明したのに!
『ロッキー・ホラー・ショー』については、いっぱい喋りたいからね。
『ドント・ブリーズ』っていうタイトルも、空き巣先でロッキーが着替えるのも、マネーが”脳足りん”なのも、老人宅に入る前に告白っぽいことをするのも、老人の娘のビデオも、老人との暗闇でのバトルも、石のように固まるのも、上から下ろされる刃物も、狂った人体実験も、その被験者が逃げて殺されるのも、冷凍室に保存されているのも、ロッキーがハサミでチョキチョキされるのも、マッチョな老人が”生卵”飲まされるのも、ロッキーだけが目覚めてアレックスがダメだったのも、死んだと思っていた老人が帰宅するのも、最後に搭乗口へ向かうのも…
全部『ロッキー・ホラー・ショー』からのアイデアなんだ。
これ映画の全部とちゃうか?
そうだね。3つのロッキー作品の中で、『ロッキー・ホラー・ショー』が一番使われている。
てか、そもそもスタローン『ロッキー』も『ロッキー・ホラー・ショー』の影響をモロにうけた作品なんだけどね。
だから回を改めて、たっぷりと。
ひゃあ!濃くて死にそう!
ははは。
フランスの「てんとう虫」じゃあるまいし。
へ?
フランス語で「てんとう虫」は「コクシネル」って言うんだよね。
だから、コクシネル…
濃く死ねる…
(カチンコチン…)
『DON’T BREATHE』
(2016年・米、邦題:ドント・ブリーズ)
製作:サム・ライミ、ロバート・タパート、フェデ・アルバレス
監督・脚本:フェデ・アルバレス
出演
ロッキー:ジェーン・レヴィ(『死霊のはらわた』)
アレックス:ディラン・ミネット(『グースバンプス』)
マネー:ダニエル・ソヴァット(『イット・フォローズ』)
盲目の老人:スティーヴン・ラング(『アバター』)