深読み バック・トゥ・ザ・フューチャー vol.21(第191話)
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2019年9月19日
スナックふかよみ
すごいわよね。あの歌詞からここまでストーリーが紡ぎ出せるなんて…
ポール、ごめんなさい…
歌詞に内容が無いなんて言って…
まだまだ。ここからがすごいんだよ。
驚きの展開になるんだから…
1分30秒からだね。
えーと…
ポールが早口でシャウトした後だから…
あれじゃあ、何て言ってるかわからないわよね。
ジョージの口説き文句を聴いた時のロレインみたいに「What ?」って言いたくなる。
確かに。
続きはこんな歌詞だ。
I’ve got a feeling
That keeps me on my toes
Oh yeah, Oh yeah
僕は予感がした
それは油断ならない予感
落ち着け、落ち着け
ああっ!
まさに、あの告白直後のシーンです…
そして「that keeps me on my toes」…
つまり「それは僕のつま先に力を入れさせた」を、そのまま再現すると…
こうなります…
なんてことなの…
店内にいた皆が「Oh!」って言ったわよね…
そして心の中で「Yeah!」と言ったはず。
口には出せないから。
そして歌詞はこう続きます。
I’ve got a feeling
I think that everybody knows
Oh yeah, Oh yeah
Yeah yeah I’ve got a feeling yeah yeah
僕は予感がしたんだ
たぶんみんな知ってることだと思うけど
ほらね、ほらキタ
これを僕は予感してたんだよ!イエーィ!
あの「つま先」の後に起こったことだね。
こうなって…
こうなった…
マイケル・J・フォックスは「背が低いこと」で有名。
その鉄板ネタを、BTTFではここまで封印していた。
このシーンのために。
確かに「みんな知ってること」だわ…
ジョージの報告&告白に続いて、歌詞が見事に再現されていたというわけだ。
本当に面白いね、BTTFって…
そしてここからジョンのパートが始まります。
Everybody had a hard year
Everybody had a good time
Everybody had a wet dream
Everybody saw the sunshine
Oh yeah, Oh yeah, Oh yeah
みんなキツイ時代があった
だけど、いい時だってあった
みんなスケベな夢を見ていた
そしてみんなが輝く太陽を見た
オーイエ、オーイエ、オーイエ
「hard year」は改変前の1985年ね。
そして「good time」は青春を謳歌していた1955年。
みんなスケベな夢を見ていました。
マーティはジェニファーとドライブ・デートしてHすることを…
ジョージはロレインの着替えを覗いて妄想し…
ロレインはマーティを食べちゃうことしか頭にない…
若いって、いいわよね。
だけど皆が見た「輝く太陽」は何かしら?
「the sunshine」は「the son shine」の駄洒落だ。
キラキラ輝く「息子」を見た。
やられた…
そしてジョンのパートはこう続く。
Everybody had a good year
Everybody let their hair down
Everybody pulled their socks up
Everybody put their foot down
誰にもいい年があった
上げていた髪を降ろし
降りていた靴下を上げ
力いっぱい踏みしめて
これは何のことかしら?
「put one's foot down」は「アクセルを踏む」という意味もありますよね。
ということはタイムトラベルのこと?
その通り。最後のパートはデロリアンで再現された。
だけど「いい年もあった」は?
デロリアンのタイヤは…
ミシュランでもなくブリヂストンでもなく…
「GOOD YEAR」
げえっ!
そしてデロリアンは…
上げた「髪」を下げる…
そんな…
さらに、映画のラストに登場する未来のデロリアンは…
「靴下」を引き上げて…
道路が無くても「アクセル全開」でタイムトラベルする…
なんてこと…
Oh yeah
では次の曲に行こうか。
アルバム『レット・イット・ビー』の9曲目は『One after 909』だね。
このタイトルの意味、覚えてる?
「909」の「1つあと」は、「910」じゃなくて「911」だった。
なぜなら鉄道の便ナンバーは、上りと下りで交互に付けられるから…
その通り。鉄道ミステリーの初歩的なトリックだね。
それでは、この歌がBTTFでどんなふうに再現されたか、わかるかな?
My baby said she's travelling on the one after 909
I said move over honey I'm travelling on that line
I said move over once, move over twice
Come on baby don't be cold as ice
Said she's travelling on the one after 909
うーん… 難しいですね…
鉄道なんか出てこないし…
難しく考える必要はない。直訳すればいいんだよ。
直訳ですか?
愛しい人は言った
彼女はワン・アフター909に旅をしている
私は場所を移ろうと言った
私はそのラインを旅している
私は言った。1つ移動、2つ移動
カモンベイベー、氷みたいに冷たくなるな
彼女はワン・アフター・909に旅をしている
ん? もしかして…
アインシュタインのことじゃない?
アインシュタイン? 犬のですか?
そう。
もしかして「ワン」だからとか?
最初にアインシュタインがタイムトラベルしたでしょ?
そのシーンのことっぽく聞こえない?
ああ… そう言われてみれば、確かに…
その通り。
この歌はショッピングモールでのシーンで再現された。
アインシュタインは実験台として1分後、つまり「one after」の世界へトラベルしたんだ…
Come on baby don't be cold as ice…
そのまんまだね。
戻って来たアインシュタインの時計は1分しか進んでいなかった…
だけど、こちらの世界の時計は2分進んでいた…
歌詞の通り「move once, move twice」だわ…
その通り。
そして、元の時刻は「1:19」だった。つまり…
「ワン・アフター・909」を逆さにしたもの…
「911」を逆さにした「119」…
やられた…
ロバート・ゼメキスとボブ・ゲイル、そしてスティーヴン・スピルバーグに…
ふぉーっふぉっふぉ。
2番もそのまんまだから割愛させてもらう。
次の曲に行こうか。
10曲目は、ポール・マッカートニーによる名曲中の名曲『The Long and Winding Road』だ。
それにしても、ホントいい曲ですよね。
名曲とはまさにこういう曲のことを言うのだと思います。
この曲が作られた1968年当時…
ポールは、ビートルズのこと、というかジョンとの関係に悩んでいた…
どうやったらこの状態を修復できるのか…
大好きな音楽を演奏し、夜通し曲作りに夢中になれた、あの頃の自分たちをどうやったら「GET BACK」できるのか…
ポールはこの難問に答えを出すため、人里離れたスコットランドの海辺にある広大な牧場に引き籠り、この曲を書いた…
つまり…
ポールの苦悩と、スコットランドの雄大な自然が、この名曲を生んだのね…
Great Scott!
んもう。せっかくいい話をしてたのに。
『The Long and Winding Road』の歌詞の内容はBTTFっぽいですよね。
♫君の心へ続く長い~
わざとやってるでしょ?
オフコース。
ふざけないで頂戴。
ふざけとらん。わしはいつだって真面目じゃ。
ポール・サイモンのアルバム『HEARTS AND BONES』最後の曲『The Late Great Johnny Ace』への布石ですね。
ふぉーっふぉっふぉ。さすが深読み探偵、ようわかっとる。
何のハナシしてるの?
いずれわかる。
さて『The Long and Winding Road』を聴いて何を感じた?
「あの頃の君のもとに戻してくれ」って切々と願う感じがBTTFのマーティと重なると思います。
そして「long and winding road」は、デロリアンがタイムトラベルする道のこと…
だけど「曲がりくねった道」じゃないでしょ?
時速88マイルで一直線に走るのよ。光と炎の道を。
あ、そうですね…
では「長くて曲がりくねった道が君のところへ導く」とは、何のことなのでしょう?
「曲がりくねった道」じゃないんだよ。
え?
道は真っ直ぐ、一直線なんだ。
何言ってるの?「winding」は「曲がりくねった」って意味でしょ?
そうじゃないんだな。
財津和夫だって「曲がりくねった」なんて歌っていなかっただろう?
「君の心へ続く永い一本道」と歌っていたはずだ。
そうだけど…
じゃあなぜ「winding road」が「真っ直ぐな道」になるの?
それにはトリックがある。
トリック?
『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』は、ただの歌ではない。
ポールにとって、どの歌よりも特別なものだ。
『レット・イット・ビー』よりも何倍もね…
当時、フィル・スペクターによるアレンジをめぐって、いろいろモメたと聞きました。
その通り。
ポールのイメージしていた形とは違っていたんだよね。
サイモンとガーファンクルの『明日に架ける橋』みたいに、ゴージャスなオーケストラが重ねられた壮大な曲になっていて、ポールは激怒した。
映画『LET IT BE』に収録された元々の雰囲気は、こんな感じだったから…
あれ?ジョンがベース弾いてたんですか?
そう。本来ならポールが弾くベースを、ジョンが弾いていた。
しかも、かなりミスしてますね…
だからフィル・スペクターはオーケストラを被せまくったのかも…
誤魔化すために…
だけどポールは、それが不満だった。
え?どうして?
なぜなら、この歌は「ジョンにベースを弾いてもらうこと」が目的だったから…
たどたどしいジョンのベースを、ポールは求めていたんだ。
あれを求めていた? どういうこと?
あの頃に帰りたかったからだよ。
多少ミスしても気にせずに、ハートのこもった演奏をしていた、あの頃に。
それが「GET BACK セッション」の目的だった。
そのクライマックスが、この曲になるはずだったんだよ…
なるほど…
それがあのゴージャスなオーケストラでは本末転倒ですね…
それだけではない。
この『The Long and Winding Road』という曲には、ポールとジョン、二人だけにしかわからない秘密が隠されていた。
秘密?
これは返歌なんだよ。ジョンへの。
返歌? アンサーソングってこと?
そう。
ジョンの「ある歌」に対する、ポールのアンサーソングなんだ。
ホントですか? そんなこと初耳ですが。
ポール本人に確かめたわけじゃないけど、間違いない。
ジョンのどの曲でしょう?
たくさんありすぎてわからないわ。
ヒントちょうだい。
いいだろう…
ポールはこの歌について、のちにこう語っている…
「スコットランドの家でピアノの前に座り、何となく弾いてるうちに、この歌が出来上がってきたんだ。誰かさんみたいにイマジンして…。レイ・チャールズのことだよ(笑)」
とね…
レイ・チャールズ?
レイ・チャールズの曲は、だいたいホーンやオーケストラが入ってるじゃん。
何言ってるの、ポールは?
「レイ・チャールズ」という名前がヒントになっているんだよ。
ジョンの「ある歌」のね。
「レイ・チャールズ」がヒント?
全然わかりません。
それでは『The Long and Winding Road』の歌詞を見ていこうか…
すぐに「ある歌」の存在に気付くはずだ…
つづく
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