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2024年J2第4節栃木SC-横浜FC「サウダージ ~キョウシュウ~」

「次に日本に帰ってくる時は、必ず日の丸を背負って帰ってきます。そして次のW杯で点を取るのは僕です。」そう言ってヨーロッパに旅立った男がいた。小川航基は、22年のJ2で26点のゴールを挙げて得点王となり、23年のJ1でもチーム得点王となる6ゴールを叩き出し彼はシーズン途中で移籍していった。そして、オランダでシーズン途中ながら12ゴールを記録して、4年ぶりに日本代表復帰を果たした。

現在所属しているのはオランダのN.E.Cであるが期限付き移籍いわゆるレンタル移籍であり、保有権は現在も横浜にある。(これだけの活躍なので、高値での買取りオファーお待ちしております。)
保有権が横浜にある中でのフル代表選出は、2005年のシルビオ、2016年グエン・トゥアン・アイン、そして小川と同じくこの3月の代表ウィークに代表選出されたグエン・コン・フォンしかおらず、日本代表に限って言えば初めての選出となった。

まさに有言実行。オランダで挙げたゴール数12のうちリーグ戦は「8」これは彼が過去J1でプレーした4シーズで挙げた通算ゴール数「7」を上回っている。決定力の高さ、左右の足、そして頭とどこでもゴールを奪えるバランスの良さは特筆すべきもの。横浜は22年、23年とこの決定力を当たり前のものとして見てきたから、この代表選出は当たり前くらいにしか感じていないだろう。圧倒的な個の力を持った選手がいれば、本当に苦しい時1点がどうしても欲しい時にねじ込める。そういったものをまざまざと見せつけられる栃木戦となった。

This is J2

開幕戦の山口も長いボールを蹴ることが多かったが栃木はさらに多かった。ディフェンスラインがボールを奪うと前線の矢野やサイドのスペース目がけてのロングボールが多かった。これがJ2である。
ただ、横浜は前半20分ころまでは栃木のこうしたカウンターに上手く対処して、攻撃を許さないでいた。栃木・矢野とは岩武とボニフェイスでそこへのボールを遮断し、セカンドボールを回収して自分たちのボールで攻撃を継続できた。

ところが、前半35分だった。和田のパスミスを回収され右サイドに大きく展開される。戻ってマークをしていた山根は右にスライドして対応しようとしていたがフェイントで外されてクロスを許す。クロスに反応したのはその矢野。矢野の折り返しを決めたのは栃木・小堀だった。こぼれ球を強襲されて失点。
山根に関しては、右サイドをずっと栃木・大森と戦っており、その前のプレーでも仕掛けられて後追いになったことが頭にあったのかもしれない。巻き戻して考えるのであれば栃木のボールを奪って中に切れ込んでいった狙いが不十分で、和田もかなり近い距離になってパスを受けても捌けず彼にとっても不運なボールの奪われ方になった。

先制点を挙げた栃木は、そこから約60分、自陣で守りを固める現実的なサッカーを始める。まさにこれがJ2である。

ゴールの仕方を忘れた不死鳥たちよ

前節の試合中に負傷した森に代わって先発した櫻川だったが、効果的なプレーは少なかった。これは開幕戦の翌日に行われた栃木シティとの練習試合でもそうだった。ポストプレーで収めるまではよいが、その先どう捌きたいのかよくわからず相手に回収されるケースが多々あった。ハイボールでなく、グラウンダーのボールならどこにほしいのかプレーを見ている限りでも伝わってこなかった。
周りの選手は、森が3試合でどこに欲しいのか大分理解した感じだったので、山形戦でも裏に通る良いパスが出たが、櫻川の場合はまだまだだ。彼はどうやったらチームが生きるのか、自身が生きるのかまだわからないような状態だと思っている。

確かにボールは横浜が支配している。だが、先制点を許して前に出たい横浜に対して、守備をしっかりと固める栃木。

小川航基を思い出す

後半開始から武田に代えて中野を投入しウィングバックの位置へ。守備を固める栃木に守備はある程度放棄しても成立するという読みか。さらに後半16分には四方田監督には珍しく早め早めの交代で手を打つ。三田、村田、伊藤を投入し栃木ゴールに迫る。

何度か栃木のカウンターを受けるが、それ以外は横浜は栃木陣内でボールを回してチャンスを作り出すが、待ち受けるのは栃木の壁。ペナルティエリア内に8人9人が待ち構える相手をこじ開けるのは厳しい。
山根、村田の両翼はサイドを突破しても、有効なクロスはなくはじき返されてしまう。最後の交代カードはユーリに代えて新井。中野、村田、新井とドリブラーが揃ったが、逆に相手の外で受けさせられてしまいゲームを作れなくなった。個人でこじ開けるにはスペースがなかった。

個人的には、こういう時こそ櫻川を残しておいて、跳ね返されてもいいのでどんどん外からでも良いので彼にボールを入れてほしかった。流れから厳しかったので伊藤と交代する理由も理解できるが、長身選手が触って軌道が変われば何かが起きるのだから。
セオリー通りの交代ではあるのだが、ドリブラー3人が譲り合いのパス交換をしているのは指揮官の想定通りの動きだったのだろうか。中野のウィングバックも守備に回った時のフィジカルの弱さを露呈したし、ドリブラーにある抜き切らないとシュート打たない病も発症。

アディショナルタイムも経過してタイムアップの笛。横浜は栃木に敗れた。負けたことよりも、無得点、そしてここまでFWのゴールがないことが問題である。チームとして形らしい形がない。森と櫻川ではタイプが違うとは言え、ゴールの再現性が低い。開幕して3戦でスタメン3人が不在になっている不運もあるが、守備は岩武で穴は埋まっているが攻撃面は形がない。一層ののことカプリーニを最前線に起用したいが、それはまさしく裏抜けのみのJ2仕様のサッカーになってしまう。

小川航基が偉大だったのは待っているばかりでなく駆け引きを繰り返して、自身でなくともその裏のスペースをチームとして使わせることもあった。
彼は移籍して開幕戦の大宮戦でゴールを挙げたことで信頼度が高くなった。泥臭く体勢を崩しながら捻じ込んだが、そこからチームの信頼度を勝ち取ったからよい循環が生まれた。ボールが来ればゴールを決める、ゴールを決めてくれるからボールを入れる。森や櫻川にはまだその信頼性がないだけならそれでよいのだが。

期限付き移籍とは言え、小川航基はよい意味でもう戻ってくることはないと思っている。もう帰らぬ人を待ち続けていても、彼がいたらと望むことも今ここにいる選手には失礼な話だとわかっていても、この惨状への文句は首のすぐそこまで出てきている。勝って当然だとは思わないが、昨年から体制継続の割に、攻撃を仕込めていない事に不安を感じている。

22年の時のように赤字になっても、戦力充実させて個の力でぶん殴れば勝ち点を強奪できる経営状態ではない。もっと目線を下げて、プレーオフ狙いのチームだからこの内容を続けて、チーム状態が向上すれば滑り込めると考えたら、4試合で1勝2分1敗の勝ち点5=シーズン勝ち点48プラスアルファなら上々といえなくもないが。もう戻らない22年を思い出して郷愁に吹かれるのは辞めよう。昨日ではなく明日を信じたい。

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