2022年J2第35節横浜FC-栃木SC「涼しいのは中秋だからか、それとも」
昨年2021年11月の鳥栖戦のデジャヴのようなスコアレスドローだった。2点差を追いつかれ山口戦から一週間。J1昇格のために、残り8試合全部勝つくらいの気迫でゲームに臨むのかと思いきや、時にラインを高く、時にラインを低くして構える相手にまともな突破口を作れず勝ち点1を積み上げるだけに留まった横浜は首位から2位に後退。
アクシデント
このゲームのプランが大きく変わってしまったのは、前半35分の伊藤翔の負傷交代だった。スペースをあけて近藤のオーバーラップを促したり、スペースでボールを受けて栃木の選手を食いつかせていた伊藤を失った横浜はサウロ・ミネイロを投入する。伊藤のポジションには小川が下がるが、この形が栃木に対して全く機能しない。
栃木は横浜の最終ラインがボールを持っているときはラインを高く設定して横浜のパスのスペースを狭くして横浜の縦のボールを遮断。横浜がサイドを使いつつ前進を始めると、サイドの近藤と山根へのボールを警戒してかラインを下げて5バックで対応。近藤や山根がボールを持った時に常に相手が対面しているのは栃木がラインの上げ下げを絶妙に行っていたため。前回の対戦では、矢野貴章とトカチのカウンターだったが時間をかけて丁寧にラインを作るサッカーを展開したのは想像とはかなり違っていた。
サウロ・ミネイロを入れたのだから一気にロングカウンターのサッカーになるかと思えばそうでなく、ボールを握ることに固執したのか、ボールを動かすことをリスクとしたのか、選手がアクシデントで変わったにも関わらず同じサッカーを続けようとしてしまった。
サウロ・ミネイロが前半沸いたのはサイドに流れて単独突破を図ったときだけだった。
勝ちたいってどんな気持ち
後半になってやっと裏のスペースの攻略が始まって何度か決定機を迎えようとしたが、それもカウンターの殴り合いを避けたのか途中で放棄したかのようにペナルティエリアで回すことが増えていってしまい、栃木にブロックを作られて攻略は困難になっていった。秋田戦などと同じく引いて守る相手に裏のスペースを見つけるのは難しいが、サウロ・ミネイロはそういうのが大好物の選手で、戦術的な相性が悪すぎた。
後半頭から私は田部井を下げると思っていた。ボールを握って、相手のブロックを剥がすサッカーには向いていてもしっかりラインを作って下がって対応するチームにはまだまだ適応できていない。味方を一人飛ばしたり、相手の裏を取るボールを出せていない。
逆にセットプレーから栃木に何度もピンチを作られて敗戦の危機すら迎える首位横浜。残り5分でハイネルが登場して、プレッシャーに来る相手を一人ではがしてスペースを作って幅を広く使って栃木に後ろ向きの守備を強いさせてから横浜の流れになったが、さすがに時間が足りなかった。アディショナルタイム4分が過ぎてタイムアップの笛。ここにきて横浜は2試合連続の引き分けで首位の座を新潟に譲ることになった。
フワフワとした気持ちの原因
あの鳥栖戦と同じ。ふわっと入って、さしたる見せ場もないままそのまま試合終了。前節2点差を追いつかれて引き分けたことはダメージではあるが、この試合とは関係ないしメンタル的にもリフレッシュして臨める状態だったはず。
一番気になったのは、このクラブは昇格したい。J1に行きたいという表現があまりにも少ないことだ。イベント情報などもWEBで閲覧できるし、以前より遥かに質は高くて量も多い。毎試合のように新しいグッズが販売される。が、昇格のために何をするのか、したいのか、してほしいのか。クラウドファンディング的な企画はあるがあれは10月だ。この時期にしないといけないことなのかな。
横浜の試合運営はここ数年で改善されているが、メッセージはあまり伝わってこない。今シーズン序盤から集客に苦戦しているような思いをクラブ関係者が吐露していたが、それはそのはずで今の横浜FCは横浜にあるサッカーの試合を運営するだけの会社になっていないだろうか。
ホームゲーム残り3試合となって開催される「GIRLS DAY」は憂慮している。新規ファン獲得のために女性客を増やすのは意味があると思うが、ホームゲーム残り3試合で昇格へのメッセージすら感じないイベントをこの時期にしないといけないのだろうか。こういうのは夏にすべて終わらせて残りホームゲームで勝ち点9を得るために盛り上がっていきましょうという空気を醸成してほしい。2019年は最終盤でグッズを配布したりしてとにかく観客を増やす努力をしてきた。今シーズンは今のところそれもない。新潟や岡山が終盤にきて観客動員で大きな数字を出しているのに比べて、この日の観客動員は5000人にも満たない。「満員にする」「勝利する」「昇格する」この3つの要素を感じないのだ。楽しんで昇格しましょうスタイルならそれでもいいが、せめて昇格にはこだわってほしい。
声出し応援の試合の適用もまだ発表されていない。声出し応援をするには、横浜の場合はハードルが高くて全席指定席で年間シートとしても販売していたから、収容を50%以下にして市松模様の座席で運用するスタンドやエリアの設定が難しい。これまで経験した水戸や町田、山口のアウェイエリアはスタンドが切り離されていたり、自由席だから座れる座席に制限を設けることで運用できるが、全席指定でかつ隣接した座席も販売してチケッティングしてきた横浜にとってはそれが逆に足かせとなっている。
ゴール裏の一部エリアをそうするとして、隣接しての座席の設定は声出し応援エリアにできないので、そのあたりをどうしていくか。メインスタンドアウェイ側の上段なら可能かもしれないが、、、個人的には声出し応援の試合はアウェイばかり2勝1分でむしろかなりポジティブ。三ッ沢でも解禁を迫る声が大きくなるのは当然といえば当然だが、開催へのハードルをどう乗り越えていくのか、そういう苦悩をシェアしない。ではクラブは昇格のために、何をどう打ち出しているのか。このクラブが負けているのは、そういう意味での発信力。よい動画を作れたらOKではない。昇格の為に、横浜FCというクラブはどう汗をかいたのか。やれるだけのことをしてきているのか。サポーターの気持ちに寄り添っていない感じがしてならないのだ。
ホームゲームは残り3試合、アウェイが4試合。フワフワした気持ちはこのクラブの昇格したいという気持ちが読み取れないことと、それと自分たちサポーター側は絶対に昇格したいという気持ちとの温度差があったからだと私は感じている。
9月10日のゲームとは思えないほど涼しかった。スコアレスドローで内容もひどいものだったからだけではない。首位のチームの試合がこんなに涼しいのはなぜだ。今一度クラブに問いたい。昇格するつもりはありますか、と。
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