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2024年J2第2節大分トリニータ-横浜FC「浸り続けていられない」

試合後すぐに大分を離れ別府へ。かじかんだ身体に火を入れるように、ジモ泉に浸かる。別府の西側は鉄輪温泉や明礬温泉が有名であるが、別府駅の東側はジモ泉とも言われる共同浴場がいくつも運営されている。100円や200円で入れるのだ。脱衣所の横に浴槽があり、椅子や桶もないし、もちろんシャンプーや石鹸もなく、それらを持参して地べたにそのまま座り浴槽の湯を使って体や髪を洗う昔ながらの銭湯である。
少し熱めの湯に浸かりながら試合を振り返るが、中々これという感想が出てこない。中野が1対1を外したことや、ソロモンがPKを外したこと。それらに霞んで誰も指摘しないだろうどフリーのユーリのヘディングが枠を捉えきれなかったことなどは直に出てくるが、それが試合の核心かと言えば簡単に頷けないでいた。

答え合わせ

先週からメンバーが何人か変更になっていたが、これは想定内だった。もう過ぎているので言うが、開幕戦の翌日の練習試合に岩武は出ていなかった。つまり、そのくらいコンディションが悪かったので、開幕戦はボランチもCBもこなせる新卒の小倉がベンチに入っていた。しかし、この試合では岩武が復帰してきたことと、ボランチの枠に小倉を使うかと考えた時に三田と比較したらさすがに後者を選んだのだろう。
左サイドも武田が1番手の想定だったが出場出来ないので、指揮官のプライオリティの中で山根を左に回す決断をしたのだと考えた。彼が復帰したこの試合では山根は右に戻している。村田も武田の復帰、そして山根がいることを考えると控えには置けない判断なのだろう。そういった意味で開幕戦は負傷者だらけで選択肢が少ないままあのスタメンを選んだのだと思われる。

そして今節は井上が不在。開幕戦で痛めたとか練習でも大事をとっていたという声があり、どれが決定的な原因かはわからないが何らか負傷で不在となり和田とユーリが先発に名を連ねたのだった。

前節モビリティのある和田と井上の組み合わせが機能せずパスの配球が思ったところに出てこなかったが、今節はユーリとのコンビは想定以上に機能していた。低い位置でボールを狩るユーリと相手の嫌なところに顔を出し続ける和田のコンビは中盤で支配権を大分に渡さなかった。

大分は今節4-2-3-1でゲームを進めたが思っていたようなゲーム展開ではなかっただろう。右サイドの松尾が高いポジションをとったのは狙い通りなのかわからないが、トップ下の中川も上がり4トップ状態になった攻撃はスペースを使えず前線と後ろの選手の間延びもあり、横浜の守備陣を攻略できなかった。横浜が信藤体制の時の2-4-4はかなりもてはやされたが、4トップでも前線にスペースがないと絶望的に手詰まりになることを経験として知っているので、これが片野坂監督のしたかったことには程遠いはず。シーズン序盤はこうした戦術の浸透度が低いことは間々あって、そういうチームからしっかりと勝ち星を拾っていくのは昇格への至上命題でもある。

横浜は武田の動きが良い。ゲームの途中から福森がオーバーラップをすることが増えた時に、スルスルとそのスペースを埋める動きがありチーム全体のバランスが良くなった。福森が前に出れば武田が下がり、中野がスペースを作れば武田がサイドでボールを握る。4-2-3-1と5-4-1のサイドではギャップもあり、横浜に主導権があったと感じている。

ただ、大分の攻撃を跳ね返し、ゲームメイクするもゴールが遠い横浜。カプリーニが裏に出したパスに追いついた中野はGKと1対1を迎えるがシュートは枠をとらえ切れず流れていった。

PK失敗

後半も横浜に流れはあった。大分は2トップが交代したが存在感は感じなかった。逆に横浜は小川が入ってから左サイドは前半より活性化。武田に代わって左サイドにポジションを移した山根の飛び出しを引き出すパスも増え、横浜の流れだった。

そして迎えた後半31分でのPK獲得。オーバーラップした岩武がペナルティエリア内で倒されて得たもの。キッカーは櫻川。それにしても蹴る前から落ち着かない。味方選手と必要以上にハイタッチをしたり、汗をぬぐうような仕草が見える。これが彼のルーティーンであるならよいのだが、発汗のしすぎは緊張から入れ込んでいるのであまり良くない傾向。

そしてPKを外す。コースを狙ってインフロントで流し込むようにグラウンダーのボールを蹴ってしまったので、スピードが出ないと反応されたら止められてしまう。
以前横浜に所属していたイバが瞼の裏によみがえった。彼はストライカーとして圧倒的なパワーがあったが、PKでもその力を見せた。シュートスピードが速すぎて、GKがヤマを張って飛んでも追いつかない。そして左利きの彼が向かって右に蹴る場合は内側からサイドネットに突き刺さるようなGKとしてはノーチャンスな角度のキックをしていた。そういったものを見てきている人間にとっては、この失敗はただの失敗ではなく明らかに技術もそしてパワーも物足りないものを感じてしまった。

後半の終盤は大分にボールを握られ、ペナルティエリア内で危ない侵入を何度も許しつつも失点は許さず0-0で引き分け勝ち点1を得るに留まった。

試合が終わって、櫻川は手を合わせて引き上げてくる。ゴール裏はブーイングではなく、ソロモンを盛り上げようと大きな歓声で出迎えた。まだ2節であるし、次取り返してくれたらいい。確かにそうである。開幕戦よりもゲーム内容はよくなり、勝ち点も積み上げているものの正直物足りない。

連勝しているクラブとは勝ち点は4離れているのが現実。この試合では、昨年と同じく第2節で主将のガブリエウが負傷交代。長引かなければ良いのだが。

一つ勝てば

昨年も、「一つ勝てば」とみんな思っていた。でも開幕当初の戦いではそれは叶わなかった。結局守備重視のカウンター志向に振り切って勝ち点を稼ぐしか方法がなかった。
今年はどうだ。まだ2戦かもしれないが、昨年の継続という割には攻撃は特に形が見えないでいる。カプリーニは昨年の最初の人間不信に戻ったかのように適切なタイミングでパスがまだ出てこない。中野はドリブルは武器だが、森を活かすパスは殆どない。森は駆け引きが少ないので、サイドからのボールも出てこない。四方田監督は攻撃を全く仕込めていない気がする。1トップだとか2トップだとかの前に、どう点を奪うのか再現性のある攻撃が見えないことが課題である。

22年の昇格では、長谷川から小川航基という鉄板のルートだけで点が取れていた。もっと言えば小川航基が26ゴールという驚異的な数字を出したからこそ勝ち抜けた。それと比較すると、開幕戦でも触れたが全体的にスケールダウンしている。その中で、適切に攻撃を構築できないとしっかりとした守備で失点こそ少ないがゴールも奪えない状況になる。

浸かるのは

別府の温泉は、あつ湯とぬる湯がある。そのまま熱いのか温いのかの違いだが、ぬる湯と言っても40度近くあるので所謂温いではないことは要注意である。寒い天気と試合内容に、あつ湯は心にも沁みる。大分まで行って心を温めてくれたのは温泉に浸かっての「ほっ」では困る。

この日の晩は別府から愛媛・八幡浜にフェリーで移動。(大分の単純往復が高くて、フェリーを使っても松山から帰ると安かった。)翌日はお遍路を回りながら、道後温泉でまた温泉に。今年のJ2は、大分・別府、愛媛・松山、群馬・草津を筆頭に温泉どころが揃った。(鬼怒川とか銀山とか黒川とか指宿等数えきれない。)アウェイ観戦に行き、そしていい湯に浸る。なんて素敵なJ2ライフ。J2は楽しい。さらに首都圏のクラブが4つしかなく、関西圏はゼロ。多くは地方のクラブで、試合の他観光も楽しいし旅行がてら行くことが出来る。

一方で、今年から降格は3枠。J2に浸りすぎると抜け出せなくなるどころか、落ちてしまう。どうせなら、勝利して悦に浸ろうぜ。昇格して愉悦に浸ろうぜ。

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