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2024年J2第14節ジェフユナイテッド千葉−横浜FC「凡」

雨降って地固まらない。長崎戦で見た光景を再現したかのような試合になってしまった。先にミスのような形で失点し、あとは攻撃してもゴールを得られないままタイムアップの笛が鳴る。今年の横浜の典型的な負けパターンに陥った


立ちはだかる

前節の勝利で岡山を抜いて3位に浮上した横浜だったが、試合開始から千葉のプレスに苦しむ。前線高い位置からのプレスを3バックで回避しようとするが、ここで井上が落ちて受けようとすると後向きで受けるばかりで有効な打開策がないまま消耗させられる。プレスの強度も高い。3バックとボランチに人を付けてしっかりとマークする千葉。横浜としては、これを上手く剥がして前線にもっていきたいが、3トップ気味にプレッシャーに来る千葉を往なせない。

秋田戦や水戸戦で見せた様なサイドに幅を広くとって攻め込む形より縦に、ペナルティエリアの脇での戦いを目指そうとしていると受け取ったが、ここから中々自分たちの形にもっていけない。考えてみると2年前もこのフクダ電子アリーナでは、1-1の引き分けで内容も長谷川のクロスに小川航基がピンポイントでヘディングで得たゴールだけで、自分たちらしい形を作れなかった。

順位は関係ないと言いつつも、やはり上の順位のチームは下位のチームに立ちはだからないと昇格できない。この程度のプレスに前を向けないチームに昇格の資格はあるのかと試されている。
もっと言えば昨年の方が圧倒的に苦しかった。スピードも強度もJ1の方が高い。それを知ってる選手たちが多いからアドバンテージがあるはずだが、今横浜には千葉が立ちはだかっている。昨年J1を経験していないのは村田だけ。それでも千葉のプレスを掻い潜れないまま前半時が過ぎていく。

凡ミス

前半29分、ガブリエウが右サイドにボールを展開しようとしたが、空振りをし千葉・呉屋に拾われて一気にピンチを迎える。ガブリエウもリカバリーしてコースをケアしたが、ニアの狭いコースを撃ち抜かれて先制点を許してしまう。
はっきり言って凡ミスである。試合前の雨で芝が濡れていたのかもしれないが、それはエクスキューズにならない。失点して彼は点を仰いでいたが、その後しっかりとメンタルを戻してソツなくプレーしていたが、あまりに重い失点となった。

青い波

この日、フクダ電子アリーナに横浜サポーターは大勢詰めかけた。栃木戦でも多かったが、それ以上に集まった気がする。そして後半は、ゴール裏の2階席の方も立ち上がっての応援となった。屋根が反響盤代わりとなり、声援はかなり響く。連休最終日の夜の試合でもここまで集まるのは少しずつ積み上げてきたからでもある。

その声を背にして後半は横浜がボールを握る。それは同時に、千葉は時間とともに前線からのプレスを少しずつ調整し、後ろでしっかりブロックを組むことを意味した。後半から出場したカプリーニはライン間でボールを受けてゴールを目指したが、千葉の守備に阻まれた。
後半はサイドからの攻撃を志向したが、ゴールをこじ開けられない。もっと言えば枠に飛ぶシュートも少ない。無論、相手はそうはさせないと守るのだから、枠から外れてしまうのは仕方ないが純粋に相手ゴールを脅かしてもいない。このクオリティだから降格したのだと言われたらそれまでかもしれない。

最後の最後は、福森と途中出場の和田を残して攻撃に参加。福森のロングキックのこぼれ球を狙ったりそこからの展開を志向し、和田はカウンター対策とボールを回収して運ぶ役割だろう。8人の選手が前線にいてそれでも千葉の守備陣を越えられない。
カプリーニを後半から起用する事への批判もあるが、彼がいないとゴールを奪うことができないなら、どうせなら後半にという消極的な起用も垣間見える。彼を超えるだけの期待値を持った選手がいない。いなくても1ゴールでも得られたら逃げ切れるが、先制点を許すと彼がいないと苦しくなるのであれば後半からの起用というのは想像に難くない。

もっと長くあるはずだろうと思っていたアディショナルタイムの6分が過ぎても横浜はゴールが奪えずタイムアップ。連勝は2で止まった。ルヴァンカップに勝利して勢いが出てきた青い波はこの蘇我で止められた。

新戦力の台頭

やはりと言えば知ったかぶりぽくて嫌ではあるが、ゴールが欠乏しているのは森と櫻川の成長前提である以上こうなってしまうのは仕方ない。編成上5-4-1の1トップが出来るタイプは、森、櫻川、伊藤、そして新卒の宮田しかいなかった。そして森が今季絶望の負傷をし、高橋を期限付き移籍で獲得したとはいえ編成上の数は変わらない。宮田はルヴァンカップに出場し、FC東京との練習試合でも見ていたが正直まだ厳しく、10日に鳥取への育成型期限付き移籍が発表になった。
櫻川はルヴァンカップで1ゴール1アシストを記録したものの、リーグ戦では鹿児島戦でPKで挙げた1ゴールだけで、プレー内容も芳しくない。
室井はルヴァンカップでベンチに入れない状態が続いているし、コンフォンもボールロストも多く信頼度は高くできず、2シャドーの部分でも人材が足りていないのが現実である。

千葉はこの試合前節と多くのメンバーを入れ替えてターンオーバーし、横浜はそれをしなかった。評価は難しいが、選手のキレという部分では影響はないとは思えない。後半になってやや足にボールがつかないトラップミスが増えたところは、集中力も失いつつあっただろう。

ディフェンス陣はボニフェイスを戻す策もあったと思うが、その位しかなく「新しい選手を起用すべきである」的論調は見かけるが、正直ルヴァンで目を見張った小倉や佐藤はともかく、前線の選手は2種登録の選手が出ている状況はその選択肢を採れない事を示唆しているのかもしれない。

守備陣が安定している事は数字でも顕著で千葉戦に敗れてもまだリーグ最少失点である。選手の数と層も厚い。その反面、前線の選手は駒が足りないので偏ったメンバーでの戦いを強いられていると推測している。

ゴールが奪えないことを深刻に取り上げる過ぎるのも良くないので書くと今3位である。長崎が引き分けた今節に勝って勝ち点差を縮めることはできなかったが、それでも上位にいる事は忘れてはいけない。ゴールが遠いが、負けた試合は逆転された仙台戦を除いて無得点。負ける時は0-1、勝つ時はクリーンシートというガチガチの戦いがこのままだと今シーズンは続くだろう。

そう考えると、2019年や2022年の昇格時のイバや小川航基のストライカーがゴールをバンバン量産して勝ち進む戦いではなく、僅差の戦いをものにしていく私のような凡人には観戦記を書きにくい渋い戦いが待ち受けているのだろう。とはいっても、過去にもそれでも昇格したクラブはあり、42試合で51得点の2020年の福岡、54得点の2018年の松本は、今の横浜よりも得点率は低い。

千葉には負けた。ただ悲観的になりすぎる事はまだない。今季を象徴する凡戦を目の前にしただけだ。



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