見出し画像

2024年J2第23節横浜FC-ブラウブリッツ秋田「信じるものは救われる」

前節難敵いわきを下して横浜は7連勝を飾った。その間の失点数はわずかに3。半分以上がクリーンシートとほぼ完ぺきな内容で勝点を積み重ねている。前回の7連勝は2019年18戦負けなしを記録した中で達成している。そう考えると連勝を達成する事は当たり前だが、昇格への近道である。
ただ、7連勝をしても首位には立てず、3位清水とも勝ち点差がないのが今年のJ2である。平均勝ち点で考えると通常なら昇格してもおかしくないペースで3チームが勝ち点を重ねているが、自動昇格枠は2。そのうち1つが弾かれてしまうと言いたいが、上位3チーム全て失速する可能性もあるのがこのJ2の難しさである。



焦燥感

試合開始から横浜がボールを握るが、中々ゲームを作れないでいた。前線が髙橋から櫻川に代わったが、髙橋の時と同じくスペースを狙うパスが多くそれが櫻川が感じ取れないでいて、彼はもっと足元にボールを入れてもらい引き付けて味方を活かすことを考えていたに違いない。
井上がこの日思ったより低い位置でゲームメイクをしていたのは、秋田に巻き込まれないようにという狙いだったのか、プレスを受けて入っていけなかったのかわからないが、彼の位置が低すぎることも攻撃に厚みを持たせられなかった。

そして、秋田の小さく繰り返すファウルでリズムを崩される。秋田GK圍は前半から時間を長く使ってゴールキックを蹴る。アチクュアルプレーイングタイムを削って、相手の攻撃の時間を少しでも減らしたい意図だと思うが、このサッカーは面白いのだろうか。

こうしたサッカーに時間を削られていく横浜。前半の見どころはカプリーニがセンターサークル付近から放った長ロングシュートと、中野が持ち込んで打ったシュートくらいで相手の守備陣を脅かすような攻撃が見られなかった。

親心

櫻川にはひときわ大きな歓声が上がる。誰に聞いても「親目線」で見てしまうという。福森のような悪魔の左足もないし、井上のようなボール捌きが出来る訳でもない。山根のようなサイドで上下動を厭わず走り続けることもない。それでも必死にボールを追って頑張る姿を応援したくなるのだろう。
とはいえ、愛媛戦で劇的なゴールを挙げてから、プレーの質が向上している。ハイボールの落下点の入りが良くなり、味方にどうボールを出すと次の展開が良くなるのかパスの質も上がった。

その櫻川が後半27分にまたしても決勝点を決めた。山根のクロスにヘディングで飛び込み秋田のゴールネットを揺らしたのだった。「2人だと機能する」という室井を送り込んだたった7分後にゴールを決めて見せるのだから、四方田監督の慧眼は素晴らしい。

櫻川はここまでリーグ戦に全試合出場している選手の一人でもある。GK市川や福森、カプリーニといった主力級ではないけど、チャンスをしっかり与えて育てようとしているのは指揮官の親心だろう。サポーターもチームもみんなでソロモンの成長日記を見届けているすらある。

1-0で櫻川のゴールが決勝点となった。

「信じる」にふれて

秋田の吉田監督は「信じる」といったワードをよく口にする。「秋田を信じる」「仲間を信じる」と。ことあるごとに出てくるので、信心が足りないのではと思っている程である。多分彼の「信じる」の本質的なところは、「信じるものは救われる」に通ずるだろう。これは聖書の一節を略したものであるが、かなり誤解の多い言葉でもある。信じていたら良い事があるというのも本質的には誤りである。

例えると、J1昇格できると考えているのが信じる状態。出来るかなぁ、出来ないかなぁ、どうなるかなぁは信じていない状態。J1昇格できると信じているから、練習の取り組みもよくなり、選手の関係の質も向上し、試合でも結果を出せるから、結果昇格する。そう捉えると良いかもしれない。

だから、秋田のサッカーは信じ切れていないので勝てないという事に帰結する。では、横浜はどうか。リーグ戦もまだ15試合残っている。長崎、清水とは勝点差が少ない。他のクラブは着々と戦力補強に暇がない。それでも信じると言えるか。

秋田に勝利こそしたが、「信じる」の言葉にたじろぐ自分がいた。もっとシンプルに単純に、過信ではなく、油断でもなく、余裕でもなく、卑下もせず、悲観的ではなく、「信じる」とすぐ言える自分になりたかった。

8連勝。長崎も清水も勝利し順位は動かない。どこが落ちるか我慢比べは続く。昇格を信じる前に、目先の試合の勝利を信じる。勝てば自ずとそこに近づくはずだから。

この記事が参加している募集

#スポーツ観戦記

13,633件

#サッカーを語ろう

11,188件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?