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重なり合った偶然の末に天職と出会う23

お酒が好きではないのにお酒売り場

 私はお酒はほとんど飲めません。ビールで言うと中ジョッキ2杯を超えると、美味しいというよりはしんどいが勝ってきます。全く飲めない人よりは少し飲める感じですかね。

 もともと偶然にして就職活動時、希望の部署を、「食べる事が大好きなので食品売り場に」と一応言ってしまったものの、(その辺の経緯は下をご参照ください)
 念願叶って食品売り場の配属ではありましたが、お酒売り場とは・・・ 配属になりました。

お酒の知識は全くない

 口に入れるもので唯一、お酒は苦手で、興味のない世界でした。故に、全くチンプンカンプン。
なんの知識も持ち合わせていないどころか、どちらかと言うと恐怖の飲み物に近かった思いです。

 仕事ですからもちろんそうは言ってられません。接客はしなければならないし、発注はしなければならないし、、、当たり前ですけど、お酒に関する仕事ばかりです。
 私の入社した百貨店は当時ではお酒売り場が有名で、特に日本酒売り場は他の百貨店よりも種類も多く品数も多く揃っている事が自慢の売り場でした。
 売り場の壁には畳4枚分くらいの大きな日本地図に全国の銘酒の銘柄が刻まれたパネルが掲示されていて、品揃えが自慢であることがしっかりとアピールされていた売り場です。

日本地図大パネル イメージ

お酒と言えば

 因みに、百貨店なのでお酒も、すべてのカテゴリーの酒類を扱います。
ビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー、ワイン、リキュール、その他酒類、等々様々です。その中でもその当時(1988年ころ)はビールの売り上げが最も大きく(しかも瓶ビール)続いて日本酒、ウイスキーの順番でした。
 現在の様にビールには種類なく基本的には、アサヒ、キリン、サッポロと言ったメーカーで言えば1種類を指すような時代です。もちろん発泡酒や新ジャンルもありません。ビールだけでもいろんな銘柄やブランドがある現在とは大きく異なっています。
 ただ、日本酒はまだ全盛期の名残りで、かなりの売り上げと、多くの種類を品揃えていましたし、実際よく売れました。(今のような紙パックは無く基本は1升瓶、と小さめの4合瓶でした)
 まあ当時はそんなこともよくわかっていませんでしたが(笑)(笑)

多くのお酒の種類が イメージ

お酒の知識の勉強

 とにかく全く知識が無いので、まずは日本酒についての知識をつける為、インターネットが無かった 当時、本で一生懸命勉強しました。様々な本と売り場にあった日本酒大図鑑と言った本を暇さえあれば読んでいました。
 そうすると日本酒って本当に奥が深く、それぞれに様々な工夫と努力を凝らし、醸されていて、勉強すればするほど楽しく、まさにワクワクドキドキするくらい楽しかったのです。

様々な本で勉強しました イメージ

 同時に、色々な知識を身につけるとどんどんお客さんに披露したくなります。ほとんどのお客様が日本酒が好きで売り場に来ておられるので結構関心を持って聞いてくれます。
 その頃は吟醸酒ブームがどんどん来始めた頃で種類も増え、非常に良く売れました。

 例えば「熊本の「香露(こうろ)」と言うブランドは吟醸酒を一般的にした「9号酵母」を作り出した蔵元で、酒蔵の名前ではなく、「熊本県酒造研究所」が造って売っているのです。(今でも)」と、説明しながら商品のラベルを見せると「へー!」と言って、お客さんも興味を持ってよく買ってくれました。

 またお客さんに教えてもらう事もたくさんありました。一番は味です。私はあまり飲めないですし、売っているものを1本ずつ買って味を試すわけにもいきません。なのでお客様との会話の中でこのお酒はどのような味わいなのか、本に載っているものと比較して意見を聞くことがものすごく楽しく勉強になりました。

「熊本県酒造研究所」香露

 また問屋さんなどに教えてもらう事もたくさんありました。問屋さんは多くの蔵元のお酒を扱っているので売れ筋商品や、珍しい商品、新商品、注目の製法の商品などなど。
 蔵元さんも直接売り場に来てくれることもありました。売り場を見に来てくれると必ず声を掛けてくれます。色々お話しすると造り手としての情熱、工夫、苦労話などとても勉強になると共に造り手側の気持ちが良くわかり、お客様に商品をお勧めする時に力を入れて説明することが出来ます。

お酒売り場のお客様

 お酒売り場にお酒を買いに来られるお客様は3種類あります。(割合は感覚的な印象です)
1.お酒が好きで買うものが決まっている人。(1割くらい)
2.お酒が好きで、買うものが決まっていない人。(7割くらい)
3.お酒の事を全く知らない人。(2割くらい)
  ※あくまで私の感触ですが。

(1.のお客様)は殆どは自分の為に買う人で飲む銘柄も決まっていて、ほぼ指名買いの常連さんです。
それ以外のお客様は、
(2.のお客様)お酒が好き、もしくは興味がある方ですが銘柄は決まっておられず「何が良いかな?」と迷っている人か、誰かにプレゼントするために買いに来て迷っている人です。
最後に (3.のお客様)お酒の事をほとんど知らないのですが、プレゼント用か、頼まれて買いに来ているか、知らないけど興味があって知りたい人です。

つまり9割近くのお客様が買うものが決まっていない(2.と3.のお客様)でお酒売り場に来ているのです。

お買い物 イメージ

これはどういう事かと言うと
接客で色々の事が決まる。接客が大変重要。という事です。

 何か高いものを売りつけるとか言う事ではなくてお客様のお買い物のお手伝いをして差し上げる。と言う感覚です。お客様の目的、用途、好み、年齢、嗜好など様々な事を会話の中で聞き出し、その嗜好にあったお酒をお勧めする。商品の蘊蓄や特徴、造り元の思いなどを説明しご購入いただく。
 お客様も満足げに納得してニコニコしながら楽しそうに買って持って帰ってくれる、私もお客様が家で、友人の家で、お父さんへのプレゼントで、そのお酒を囲み、私がお伝えしたそのお酒の蘊蓄を披露しながら杯を酌み交わすシーンを思い描きとても楽しくお客様をお見送りするのです。

 このように書くと何か空々しくテレビのCMみたいに聞こえるかもしれませんが、本当にこのような感覚を覚える事が出来るのです。
 接客は百貨店にとっても、お客様にとっても、とても大切なものであり、一期一会ですが、買って頂いたかたが買った後に楽しい気持ちに少しなっていただけるのが接客する側の楽しみになるのです。

後日
お客様が売り場にやって来ます。
「兄ちゃんの勧めてくれた酒うまかったわ!」
「この前良いお酒教えてくれてありがとう!先方様がとても喜んでくれたよ!」
「この前のお酒はこんなお酒だったけど次はこんなお酒ある?」
このようにお客様が再来店してくれて言ってくれることは本当に喜びになります。

その為にまた商品の勉強をし、蘊蓄を語り、より良い商品を仕入れ、探し出し、話題性、流行などを語り、お客様と色々な会話をすることがめちゃくちゃ楽しく自分を成長させてくれました。

次回に続く


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