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E205:誤解しながら生きてる③

(もったいぶるわけではなかったのですが、長くなったので分けました。昨日の続きです)


「あの…先輩はTさんのこと、何かご存知なんですか?」


すると先輩はうなずいて声のトーンを落とした。
「退職した後ということで、正式に報告もされなかったから……ジブン(=関西弁で「あなた」)も知らんのやな?」

「はい…」
嫌な予感がした。


「…あの後、彼女…亡くなったんやって」

「え………❓えええ⁉️」

病気が発覚したこと。
それが命に関わるものだったこと。
本人は余命も知らされていたこと。
できるだけ周りに心配をかけたくなかったこと。

心臓の鼓動がどんどん速くなっていくのを感じながら、必死に先輩の話を聞いていた。

一通り説明してくれた後、先輩は私にこう言った。

「だから、さっきのカップ麺の話な、彼女にはいろいろ思うことがあったんやない? でもジブンみたいに、気になっている人はいると思うんやけど、すでに退職したからって、訃報をみんなに伝えなくていいのかなぁ…?」


一つの出来事は
その見方を変えるだけで、
全く違うものに見えてくる。

それは、言葉も同じ。

あの日、Tさんは確かにムキになっていた。
こちらが戸惑うくらいに…

彼女がいつになく、ムキになって私に言った言葉が、
あのとき違和感を感じた口調が、
頭の中でずっと響いていた。

あの日の言葉が一つ一つ、まったく違った大きな意味を持って、心の中に染み込んでくる…。

「カップ麺、まさか!汁まで飲み干したんですか?もう、健康に悪いですよ!」

「源太さん、まだお若いじゃないですか!ため息ついてないで頑張ってください」

彼女が、自分の命の時間を考えながら、
私に伝えていたとしたら…。


少しだけ冷静になってから、
頭の中であの時の疑問の答え合わせをした。
久しぶりのカップヌードルは味がしなくなった…。

なんで突然?

こんな時期に?

何も言わないで?

なんか水くさいなぁ…

疑問だらけだったあの時。
真相を知った現在。
それぞれの疑問は解消されたけれど
話したいそのお相手はもういない。
たとえ話せたとしても、
ダメな私は、きっと言葉が出てこない…。


常々、勝手な決めつけで暴走する人が
疑問だった…

いろんな事情があるかもしれないのに
どうして怒る?どうして決めつける?

自分の解釈だけが正しいと思い込み
時に暴走する。そんな暴走する人々を見て、
時々首をかしげていた。
自分はわかったような顔をして。

自分は…
平等でいよう、客観的であろう、
優しくあろう、冷静であろう、

そう言い聞かせている「つもり」でいた。

でも…自分だって、
ずいぶん勝手な解釈をしていたのだ。

いろいろわかっているつもりでも
結局何にもわかっていないのかもしれない。
それが、人間なのかもしれない。

それにしても、この偶然はなんだろう。
きっとTさんが知らせてくれたのかな。
いつも優しくて、でもなんとなく小言を言われているような気がする。そんなTさんを懐かしく思い出した。


「源太さん、私のことを気にかけてくださったんですって? ありがとうございます。じゃあ、あんまり知られないようにしてたんですけど、お知らせしますね。びっくりしました? ごめんなさいね。黙ってて。だってこんなの言えるわけないでしょう?笑笑。でもね、私のことより、ご自分の健康の事、これからもっと気にかけてくださいね」

……ははは、言いそう。
決めつけちゃいけないけど 笑

Tさん、本当にお世話になりました。
ありがとう。
この文章が、あなたに届いていると、いいな…

【連続投稿: 126日目   ライランⅡ: 37日目】

今日は37日目です

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