Makoto Okada

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Makoto Okada

テーマ:セクターを越える。好きな言葉:幸せのハードルは低く。認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ共同代表理事。GLOCOM客員研究員、富士通JAPAN株式会社。胸にきざむは退却ダマシイ、今日もテーマはあとずさり。

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アイリーン・ディクタフォン計画

上記は、ラリイ・ニーヴン&ジェリイ・パーネルの共著による『悪魔のハンマー』の冒頭近くの一節です。1980年、早川書房。『悪魔のハンマー』は世界終末物の傑作SF超大作だと私は思っています。 しかし、ここで使われているギミック、ディクタフォン(速記用口述録音機)は、別に当時、特別のものではなかったのだと思います。おそらく、ロサンゼルスの朝のラッシュアワーと同様、人々の生活の比較的身近にある、ちょっと気の利いたありふれたものだったのではないかと思います。 小説としての『悪魔のハ

    • 『知的生産の技術』の思い出

      本棚を探してみたら、『知的生産の技術』が過酷な断捨離を耐えて生き残っていた。高木貞治の『解析概論』すら断捨離されてしまったことを考えると大したことだ。 奥付をみると初版1967年7月、第23刷 1976年8月10日とある。1976年、中学3年生の頃だ。 『知的生産の技術』と出会ったきっかけは中学の国語の授業だった。当時の私のクラスの国語を担当していた家崎さんは少し変わった人で、学校の夏休みにインドに出かけて行き、帰国後チフスだかコレラだかに罹患していることが判明、夏休みが

      • 読書のためのラーニング・ログ

        コクヨの野帳は便利なアナログ・ツールだ。コクヨのサイトをみるといろいろな使い方がされていることがわかる。 https://www.kokuyo-shop.jp/sc/u_page/Promotion_yacho.aspx 私の場合は『独学大全』で提案されていた《技法12:ラーニング・ログ》に使っている。要は読書の進捗表だ。 下記の写真は、最近読み始めたモンテーニュの『エセー』に関するもの。ひとつの章を読み終えるごとにチェックを入れていく。 単純なことだが、『エセー』は

        • きっとぼんやりとした世界が苦手なのだ:多和田葉子『献灯使』

          幻想的な話が嫌いなわけではないのだ。『百年の孤独』は若い頃に読んで「こんなに面白いなんて・・・」とびっくりしたし、ここ何年か読んだものでも『百年と一日』も『飛ぶ孔雀』もとても面白い話だった。『ラテンアメリカ怪談集』や『海に住む少女』『三つの物語』は、最初少しとっつきにくいと思ったが、余韻まで含めて考えると良い話だったなと思える。 だから『献灯使』が私にはいまひとつだったのは、たぶん、相性なのだろう。強いていえば、私は夢を言葉にしただけのような骨格の曖昧な話が苦手なのかもしれ

        アイリーン・ディクタフォン計画

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          FISH SOCIETY

          中学生の頃、いつも一緒に帰っていた友人と「友達」の定義のようなことをよく話をした。彼の家と私の家はかなり離れていたが、彼が寄り道のようにうちの方に来てくれて、帰り道の途中で道路脇の柵に座って長い時間話した。 そのときの「友達」の定義の結論は、「クラスが一緒になったというのは偶然でしかないので友達とは言えない。その子の家に遊びに何回かいったということが友達といえる最初かもしれない」というものだった。 先日、オンラインで雑談をしていると漫画の話になり、panpanyaの『魚社

          これは引用と論評の形式による散文詩なのかもしれない:『谷川俊太郎学("Shuntarology")』

          『ダンテ、李白に会う 四元康祐翻訳集古典詩篇』がとても面白かったので、同じ著者の『谷川俊太郎学』を夏季休暇に少しずつ読み進めた。 夏期休暇で一応は読み終わりはしたが、『谷川俊太郎学』の濃密な引用と記述に、「自分が一体どこまで読めたのだろうか」「どこまで了解できたのだろうか」という気持ちに良い意味でさせられる。 それでも、プロローグに相当する「モニュメント「谷川俊太郎」プロローグに代えて」、4章「<空(コスモス)>誘惑監禁事件」、9章~11章「結節点としての『夜中に台所でぼ

          これは引用と論評の形式による散文詩なのかもしれない:『谷川俊太郎学("Shuntarology")』

          7つの質問

          質問に答えることが自己紹介になるのかどうかは、実はよくわからない。あなたのことを教えてくださいと問われたとき、誰もがきっとそう風に思いながら答えているんじゃないだろうか。 筑摩書房から出ている「谷川俊太郎の33の質問」は、33の質問全体でひとつの散文詩になっている。楽しい質問なので、そこからの質問を引用して私も勝手に答えてしまおう。 この手のことは答えてみるとわかることがあるし、使い方としては微妙だkれど枯れ木も山の賑わい。といっても私は枯れ木の山と聞くと酸性雨を思ってし

          読書会入門の副読本に:三宅香帆『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』

          『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』は素晴らしい本だ。 本書は確かに「"推し"を語りたいオタクのための本」ではあるし、その役目を十二分に果たしているけれど、実は読書会入門の副読本に位置づけられるよい本でもあるからだ。 猫町倶楽部主催のタツヤさんが書いた『読書会入門』もとても良い本で、そこでは読書会主催者としての"Why"が魅力的に語られている。そして読書会を参加しようと思った人への優しさが詰まっている。 その優しさとは「読了さえすれば何もいらない

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          数字を観る習慣

          数字をみることはあまり嫌いではない。だから、2019年、川崎に住んでいたときに多摩川が台風19号で夜に内水氾濫したときも、その日は朝からずっと水位計の数値をエクセルにプロットして数字を追っていた。あのときは本当にヤバかったのだ。夜には堤防の計画高水位を越えてしまっていたのだから。マンションとして垂直避難について既に朝の段階で話をしてはいたが、夕方が近づくにつれ、ああ、これは決壊するかもしれないと水位をリアルタイムでプロットしながらかなり本気で思っていた。 https://w

          数字を観る習慣

          その熱量に驚いてしまう:漆畑奈月, 小室敬幸『聴かずぎらいのための吹奏楽入門』

          『聴かずぎらいのための吹奏楽入門』はすごい本だった。正直、びっくりして圧倒されてしまった。なにがすごいかというと、その熱量がすごい。本は結構たくさん読む方だと思うし、これまでも読んできたと思うけれど、こんな《火の玉》みたいな本は、読んだことがない。第1部はぼちぼちという感じだけれど、第2部、第3部と進むにしたがって加速度的に熱くなっていく。 いま、『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』という文章術の本があって、これを書いている段階でまだ読んでいないから

          その熱量に驚いてしまう:漆畑奈月, 小室敬幸『聴かずぎらいのための吹奏楽入門』

          自由で楽しい時間:四元康祐『ダンテ、李白に会う』

          四元康祐『ダンテ、李白に会う 四元康祐翻訳集古典詩篇』を読んだ。 面白かった。詩人の四元康祐氏が、リルケ、ディキンソン、ダンテ、杜甫、李白、ウィリアム・ブレイク、キーツなどの詩人の詩を、四元康祐氏が自身の観点で訳していくのだけれど、それがとても自由なのだ。 たとえば杜甫の有名な絶句。 著者はこんな風に言う。 そして、こう訳す。 同じ詩を読み、心でも同じような風景を眺めていたはずだったのに、著者の心と言葉はすばらしい跳躍をする。 私はそれを美しいと感じる。《言語》の

          自由で楽しい時間:四元康祐『ダンテ、李白に会う』

          等身大の《私たち》:新井英樹著(参謀:鏡ゆみこ)『SPUNK - スパンク!』

          ChatGPT、”spunk"の意味を教えて...... 新井英樹著(参謀:鏡ゆみこ)『SPUNK - スパンク!』の読書会に参加した。Amazonは"参謀"という意味をかみ砕けなかったようで、"新井英樹 (著), 鏡ゆみこ (その他) "という記述になっている。著者の新井さんも参謀の鏡さんも「2人で共同して作ったと言っていい」と読書会で話していたので、「その他」というAmazon社の苦肉の策の工夫に笑みがこぼれる。 いずれにせよ、ChatGPTが教えてくれたように、"S

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          坂戸日記 2023.07.28

          2023年7月28日、晴れ。っていうか今日も晴れ。 7月に入ってから何日雨が降っただろうかと思うぐらいに晴れが続く。降ってもパラパラと気休め程度で、いい加減、朝夕の水撒きが面倒に感じる。梅雨も明けたというし、夕方だけでも良いので、雨よ、降ってください。 そして暑い。雨が降らないので蒸し暑くはないけれど、家から一歩外に出れば、もうそこはドライな岩盤浴だ。クーラーで冷えた身体には逆に気持ちがいい。サウナ好きならテレワークの合間にちょっと外に出るだけで整ってしまうだろう。 育

          坂戸日記 2023.07.28

          パリ、テキサス

          EXIT FILMという映像製作会社を運営している田村さんという知人がいる。田村さんは高校生の頃、布団を被って脚本を書きまくっていたのだけれど誰も自分の脚本を映画化してくれないので自分でカメラを回すようになったという。田村さんは《ションボリ》という言葉が好きで、映像が《ションボリ》していると高評価だ。先日、遊びに来ません?と誘われて、久しぶりに都内の彼の事務所に行ったら『パリ・テキサス』の額が飾ってあって、二人で盛り上がってしまった。田村さんがいうには「すっごく《ションボリ》

          パリ、テキサス

          問いを誘発する面白さ:今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』

          今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』は面白い本だと思う。書かれている内容は逃げ水のようにふわふわと手からこぼれ落ち、確定的であるようで確定的ではなく、定義も解釈も曖昧ともいえる。だからこそツッコミどころは満載で「だったらこう?」「これはどう?」「これとこれの関係は?」と問いが泉のように湧いてくる。 本書を読んで思うのは、堂々と言ってみることが出来るというのは才能だということだ。世の中は、ままそうして切り開かれていくのかもしれない。 たとえば、本書のタイトルは『言語の本質』だ

          問いを誘発する面白さ:今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』

          向き合うための補助線:猪熊弦一郎『マチスのみかた』

          モナコの急斜面が日本の熱海だとすれば、ニースの斜面は湯河原か伊東あたりの感じだろうか。卑近なものに寄せないと理解が進まないのは悪い癖かもしれないが、モナコは確かに熱海っぽい。でもニースを湯河原というのは、確かになだらかな登りになっているけれどこじつけでしかない。 ニースの思い出。コートダジュール。青い空、白い雲。海辺には美女。出張だったし、12月だったのでそんな妄想チックな風景には出会えなかった。滞在した1週間のかなりの時間はホテルに缶詰で、ホテルの天井を眺めた時間の方が長

          向き合うための補助線:猪熊弦一郎『マチスのみかた』