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鑑賞*基礎代謝のみの生き方蟻地獄

内山 靖子
 
種の保存のために生物が進化の過程で選択した生態を見つめて、蟻地獄の待ちの姿勢を「基礎代謝」、その生態を「生き方」と、独自の視点で平易かつ斬新な言葉で言い得た。

そこには生けるものへの哀れみや、ダイエットに励む人間のおかしみまでも感じる。

対象の描写を一切していないこの見立ては、登山に例えれば、同じ頂上に達するのに、対象の描写という九十九折りの山道を列をなして登るのではなく、別ルートから急な岩場を登るようなもの。

それには、詩とは何かという山頂が見えていること、詩心という強靭な脚力があること、そして一歩踏み外せば独善的な観念句に転落するリスクを心得ていることが要求される。

誰もが選べる山道ではないのである。
  
(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和元年十一月号)

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