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句集紹介 多磨俳句会『多磨俳句会選集 第四輯』

 「「袖振り合うも多生の縁」というが、袖が触れあうようなちょとしたことでさえ、深い宿縁に基づくものだとすれば、長短はあっても或る時期句座を倶にし、苦楽を分かち合った同志との縁は格別深いものがあろう。」との主宰の巻頭の言から始まる多磨俳句会の句会選集。

本選集への参加者は八十六名。
一人四十句ずつで計三四四〇句からなる。
主宰は関成美、編集長が川本薫。
平成十九年八月に発行された選集(第三輯)に次ぐものになる。

 置薬屋が来て春の扉を開けてゆく  関 成美

 鉛筆を置けば音して秋立ちぬ    川本 薫

以下、注目した句のうち夏の句を挙げる。

 切られたる何処からがこの蜥蜴の尾 宮地真美子

 荒梅雨の芥を流す飛鳥川      岩本芳子

 伽羅蕗を煮返してゐる朝ぐもり   田中智江子

 網戸より極楽からの余り風     阪口智恵子

 江ノ電が初夏の七里が浜に沿ふ   古賀育子

 あぢさゐの藍より蒼き海を見て   堀 瑞子

 父の日のなかりし頃の父憶ふ    阿部 英美

 山里の日暮は早し野萱草      辻谷美津子

 せせらぎに耳洗はれて昼寝覚    山口美代子

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和三年七月号)

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