「使えない受験英語」を「実践で使える英語」に生まれ変わらせる、かんたんな方法
「受験英語は使えない」と言われることがあります。
義務教育や受験であんなに英語を勉強したのに、ぜんぜん話せないじゃないか、と。
しかし、本当にそうでしょうか?
私に言わせれば、受験英語は決して無駄ではありません。ただ「まだ途中」というだけなんです。
「受験英語」によって基礎的な英語力が身についている人は、あともう一押しで「実戦で使える英語」ができるようになります。まったくのゼロからはじめるより、ずっと有利です。
それなのに「自分は英語ができない」と思って放置している人は、いわば「宝の持ち腐れ」状態。
すごくもったいないんです。
私の経営する英語スクールにも、そういう生徒さんが多くやってきます。そこで今回のnoteでは、どうすれば受験英語を「実践英語」レベルまで持っていけるのか? 具体的な方法をご紹介したいと思います。
特に、TOEICが5〜600点ぐらいで「仕事で英語を使えたら可能性が広がりそうだけど、ぜんぜん話せないんだよな……」という人には、ぜひ活用していただきたいです!
受験英語は「リスニング」の比重が低い
うちによくいらっしゃるのが「ペーパーテストはそこそこできるけど、リスニングが苦手なんです」という生徒さん。
それもそのはずです。そもそも受験では、リスニングの問題は少なめだから。最近はセンター試験が「共通テスト」に変わり、少しずつ配点が増えてはいますが、それでもリーディングのほうが圧倒的に多いです。
受験でリスニングの配点が低いのに、学校の授業でリスニングばかりやるわけにもいきません。
それで、ほとんどの人はリスニングスキルが実用レベルまで育たないまま、受験を終えてしまうのです。
逆に言えば、文法や単語の知識はけっこう身についている人が多い。そういう人は、リスニングスキルを鍛えれば、一気に英語が上達するポテンシャルをもっているということです。
「リスニングが苦手」を、さらに細かく分解しよう
では、どうやってリスニングスキルを鍛えればいいのか?
「リスニングが苦手」とひとことで言っても、大まかに分けて次の4つのステップがあります。
①そもそも単語や文法を知らない
②英語の音が全部つながって聴こえてしまう
③単語はわかるが、情報を処理して全体の意味を理解するのが追いつかない
④理解するまでが限界で、聴き終わるころには前半の内容を忘れてしまう
リスニングスキルを鍛えるには、まず「自分がどのステップでつまずいているのか?」を知らないといけません。
実際のスクールでは、講師がマンツーマンで生徒さんの課題を診断していきます。自力でやるなら、TOEICの過去問をザッと解いてみるといいでしょう。
大切なのは、①→②→③→④の順番でクリアしていくものだということ。「①はできないけど、④はできる」ということはあり得ません。
問題を解いたら、まちがえたところの回答文を確認してみましょう。
知らない単語ばかりなら、課題は①です。「知っている単語なのに、ぜんぜん聞けなかった」なら課題は②。「単語の音はわかったけど、文章の意味はわからなかった」なら③。「速くても聞こえるんだけど、結局なんだったのか覚えていられなかった」なら④になります。
〇〇を知らないとリスニングはできない
自分がどのステップか、なんとなくわかりましたか?
受験英語で止まっている人にいちばん多いのが、②の「英語の音が全部つながって聴こえてしまう」人です。
知っている単語のはずなのに、ネイティブの音声で聞くと、まったく別の音に聞こえてしまう。「受験の問題のリスニングはある程度できていたけど、ネイティブが話す速い英語はまったく聞き取れないんです……」という人。
これは「音声変化」が身についていないのが原因です。
ネイティブが自然に英語を話すとき、英語のもともとの音とはちがう発音をすることがあります。たとえば「Good bye.」は「グッド バイ」ではなく「グッバイ」と発音しますよね。本来あるはずの「d」の音が抜けているわけです。
こういう、英語の音の抜けや変化を「音声変化」といいます。ネイティブの英語を聞きとるためには、欠かせない知識です。
うちのスクールで音声変化のお話をすると「初めて知りました」という人がかなりいます。受験レベルのリスニングだと、超早口の、音声変化しまくっている音声はあまり出題されないので、学校では習わないことも多いんです。
音声変化は、この5つのルールさえ覚えておけばOK。
たとえば「I can go」 は「アックンゴゥ」ぐらいにしか言いません。
Canは「めっちゃできるよ!」という気持ちがあるときしか「キャン」とは言わないんです。ふつうは「クン」みたいな感じ(弱形)。「I」も「ア」しか言わないので(弱形)、結果的に「アックンゴゥ」になります。
「アイキャンゴー」だと思っているのに「アックンゴゥ」と言われたら「アックンゴゥって何?」ってなりますよね。
単語や文法の知識があってもリスニングができないのは、そういう理由なんです。
音声変化をマスターすると、英語はぐっと楽しくなります。
音声変化ができると、リスニングスキルは格段に上がります。しかも、発音も超よくなる。かなりテンションが上がるんです。
洋楽なんて、音声変化の宝庫です。「あ、これは習ったやつだ」とわかるようになりますよ。たとえば「let it go」だったら「あっ『レリゴー』。これは『ラ行化』だな」なんて思うわけです。
そうやって楽しくなると、上達のスピードも早くなっていきますよ。
音声変化を知ると英語は楽しくなる
音声変化のルールは、ただ知っているだけでなく「使いこなせる」ようになるのが大切です。
「知っている」と「使いこなせる」は、ちょっと違います。頭で考えなくても、自動的に使える状態になるといいですね。
たとえば「of our」という英語を見て、「オブ アワー」ではなく「オヴァワ」と、自然と口から出てくるぐらいが理想です。
「water」は「ウォーター」ではなく「ワラ」。「apple」は「アップル」ではなく「アッポー」。
音声変化ありの発音が、いちいち頭で考えなくても自然と出てくる状態を目指しましょう。
「ディクテーション」で自分の苦手を知る
さらに、音声変化を効率的に学習するコツをお伝えします。
それは「自分は5つのルールのうち、どの音声変化が起こると聞き取れないのか?」を知って、重点的に練習すること。
自分の課題をもっと細かく分解するわけです。
そのためのトレーニングが「ディクテーション」です。
ディクテーションとは、なにも見ずに英文を聞いて、聞こえたものをそのまま英語で紙に書き出すこと。これをやると「自分が聞き取れないところ」がハッキリとわかります。
「書けなかったところ」=「聞けていないところ」というわけです。
ただ、ディクテーションに取り組むだけではスキルは上がりません。ディクテーションは「テスト」をやっているだけだからです。
テストで課題がわかったら、そこを復習するのが大切です。
「どうしてここが聞けなかったんだろう?」「この音声変化が起こっている部分が聞けていないな」と、分析して練習する。そうすることで、リスニングも発音もできるようになります。
意味を意識すれば自然とうまく発音できる
英語の発音は「身体機能」です。スポーツや、車の運転に近い。
ボールを投げるとき、ボールを握る指先の加減や、腕の振り方や角度のことばかり考えていたら、いい球は投げられませんよね。
運転でも「曲がるぞ曲がるぞ」と思っているとうまく曲がれません。リラックスして、遠くの道を見ながら自然に曲がるほうがうまくいきます。
英語の発音もおなじで、リラックスするのが大切です。
発音をひとつひとつガチガチに意識していると、すぐに苦しくなってしまいます。でも、英文の「意味」を理解しながら発音すると、自然と弱形や脱落がちゃんとできるんです。
意味を意識すると、文章のなかで「重要なところ」と「重要ではないところ」が自然とわかります。重要なところは強く読み、それ以外は弱く読めばいいんです。
さきほど「Can」は基本的に「クン」ぐらいに発音するといいました。でも、文脈によっては強く言うこともあるんです。
たとえば「Yes , We Can.」みたいなとき。この文章では「Can」が意味の中心になっていますよね。「できるよ!!」と言いたいわけです。
もし、オバマさんが「イエスウィクン」と弱形の発音をしていたら、ぜんぜん力強さがなくなってしまいますよね。「ほんと?本当にできる?」みたいになると思います。
ただ、普通の文章で「I can go」というときは、やっぱり「go」がメインの意味なので「can」は弱く言うわけです。
これが「I can’t go」だったら、「できない」という情報がいちばん重要です。そこが文の中心になる。だから「アイクントゴー」ではなく、「アイ”キャント”ゴー」と言います。
文章の中心、いちばん重要な情報かどうか。中心の単語は強く言って、そうでない部分を弱形で言うのがポイントです。
そもそも言葉とは「伝えたいことを伝えるためのツール」です。だから、しっかり「意味」を意識することがいちばん大切なのです。
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今回は、受験英語で止まっている人がつまずきがちな「音声変化」を中心に解説しました。
もちろん音声変化だけではなく、欠けている文法や単語も並行して覚えていく必要はあります。
ただ、音声変化を身につけることで、これまで「知っているのに聞けなかった」英語がきちんと聞けるようになります。かつてがんばって勉強した人ほど、音声変化をマスターすれば一気に英語力が伸びるんです。
「できるようになるうれしさ」は、勉強を習慣化するうえでも最高のブースターになります。これから英語を勉強する方は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
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