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スポーツの未練が残って名誉毀損。スポーツ界にも組織論の指導を 傍聴小景 #103(名誉毀損)

最近、地味に名誉毀損の裁判が増えている気がします。ネットでの誹謗中傷への問題意識が高まっている昨今ですから、できるだけ追いかけたいと思っています。

同罪名はいくつか傍聴していますが、ネット掲示板、自身のHPなどやはりWeb上での犯行も目立つのですが、そうでなくリアルで紙をばら撒くという行為も根強いです。
Web上だと一度拡散すると消しきれないという被害の深刻さはありますが、リアルなばら撒きだと知られたくない箇所にダイレクトにリーチするということもあるっぽいです。


はじめに ~名誉毀損の被告人の特徴~

罪名 :名誉毀損
被告人:30代の男性
傍聴席:平均8人(全3回)

被告人は短髪でしっかりした体型で、なにかしらスポーツをしていたことを伺わせる方。ただ、身体は立派なのですが、表情は少しうつろという印象も残りました。

勝手なイメージですが、名誉棄損の被告人って、何か喪失感を抱えている人が多いように感じています。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人は、被害者Aの名誉を傷つける目的で、
①インスタグラムにて「Aは部下と不倫している。パワハラも行っている」などと投稿
①を印刷した紙面を10枚、そのAと同じ職場の従業員宅のポストに入れた
③Aの後ろ姿の写真を載せ「Bと不倫している」などと書いた紙9枚をAの職場の駐輪場の前かごに入れた

職場の従業員ポストやら、駐輪場の自転車など、確実にどうにかしたいという思いが感じられます。SNSだけだったら、誰も気付かないかもしれないしね。

それにしても後ろ姿をしっかり写しながらというのは、強い執着心が感じられますね。
こういう名誉毀損って、男女間で思いを断ち切れずといった、半分ストーカー的な場合も多いんですが、今回は果たしてどうなのか。


採用された証拠類 ~犯行後に携帯を壊す隠蔽工作~

検察官証拠
被告人と被害者Aは、かつて同じスイミングスクールでコーチとして働いていた。Aが被告人の上司という関係性。

しかし、Aの指導方針に被告人は「選手を大事にしていない」など不満を持ち衝突するようになり、被告人は退職することになる。今回の犯行は被告人の退職から約半年後の犯行。
Bとの不貞行為が噂されていたこともあり、B宅付近で待ち伏せし、Aの後ろ姿を撮影した。

インスタグラムに投稿後、被告人は自身の携帯電話を破壊した。

スポーツ選手のセカンドキャリアというのは定期的に話題に挙がりますが、選手としても優れていたとしても、指導やマネジメントとは別だから、こういう衝突はあるよなと思ってみたり。
それにしても、この方の恨みの持ちようは異様ではあります。

退職後、半年の犯行というのも気になります。ずっと恨んでいたのか、なにかきっかけがあったのか。まぁ、指導方針が合わなくて衝突はまだしも、恨みまで持つというのも、そもそも理解できないのですが。
そして、携帯を壊すという隠ぺい工作もなかなか。インスタなので、アカウントさえ生きてれば、どこで書き込んでも同じなので携帯壊したのも何故かはよくわからないのです…。

弁護側証拠
被告人の反省文
退職時の喪失感で逆恨みしてしまった。不倫やパワハラについて広く知らしめることになってしまったことを反省している。今後は精神病院に通います

裁判ではよく精神病院に通うという話が出ます。ギャンブルや性癖の矯正、違法薬物を絶つためなど目的は様々です。

でも、今回の場合はAへの恨みもですが、退職そのものについての喪失感が大きすぎるという少し特殊に感じるもの。とても大切に思っていたんだろうなと感じることはできますが、なんとかその熱量を新しいものへ向けられるといいのですが。


証人尋問 ~前向きに生きて欲しいと願う父~

証人は被告人の父親
事件当時は別居していたものの、今は同居していて生活状況などを見守っているとのこと。別居中も実家に帰ってきて食事などはよくしていて、多くは語らないもののAに関しての悪感情などは聞いており、気にはなっていたみたい。

退職後は、それまで選手を育てることが生きがいだったため、覇気がなくなり、塞ぎ込むようになった。

弁「逮捕後、面会へは行きましたか」
証「当初は拒否されていましたが、その後10回くらい行きました」

弁「今回の件、どのように知りましたか」
証「妻がインスタグラムで発見して」

裏アカウントなどでなく、本人のアカウントでやっていたってことなんですかね。これくらい大丈夫と思ったのか、そこまで考える気もなかったのか。
まぁ正義感などに駆られていると、問題行動に気付かなかったりしますもんね。
僕も知り合いが急に宗教観や、スピリチュアルなこと、商品説明などをし始めると「あっ…」って思っちゃいますもん。

弁「証人として、今回の原因はどのように捉えていますか」
証「Aへの我慢が溜まったのだと思う。恩師のことを悪く言われたのもあるのかと」

弁「被告人は自殺を念頭にした疾走をしたようですね」
証「そうです」

弁「息子さんには今後どうなってほしいです」
証「十分に反省してほしいのはもちろんですが、スイミング出来なくなったが前向きに生きて欲しいと思います」

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