「だからもう大学に行く必要はなくなったんだ。仕事なんていくらでもあるし」
「ほら、また悪い癖が出ている」
言い終えないうちにトリーシャが、からかうような口調で口を挟み、僕の袖を引いた。
「少し、話さない?」
彼女は壁際にあるベンチに誘ってきた。
「ねえ、訓練に身が入らないのはわかるけど、あまりにもやる気がないのが見ていてわかるわよ。外での行進の時も集合に遅れて怒られていたでしょう」
トリーシャは心配そうに見つめた。確かに、ゲイルさんと会って以来、何かに集中して全力で取り組むということができなくなっていた。
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