「見てたんだ。格好悪いよな」
自嘲気味に笑うと、彼女は眉をひそめた。
「ねえ、本当にあと二か月頑張れるの?」
僕はため息をついた。
「いや、正直に言うと、もう少ししたら除隊しようと思ってね」
「嘘でしょう? 本気じゃないよね?」
ゲイルさんに言われたのと同じようなやり取りをしなきゃいけないと思うと、気が重かった。彼女は黒い瞳でじっと僕を見つめ、続けて言った。
「私、決めたの。サンディエゴのおばさんの所へ行くって。カリフォルニアよ。西部ってきっと暖かくて過ごしやすいわ」
僕は肩をすくめてみせた。他人の進路の話を聞くような気分ではなかったからだ。
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