彼女(ママ)は、予想通りに怒りの色を浮かべていた。
「八年ぶりにママが迎えに来てあげたのに? アシェルは会えて嬉しくないの?」
「そ、そりゃあ嬉しいけど……」
「そうか、あなたを迎えに来るのが遅くなったから拗ねていすのね? かわいい子」
僕は落ち着かなくなって鞄をいじくり回した。
すると、中のピアノの硬い感触の上に、バナナの弾力ある手触りが伝わってきた。
「ねえ。ちょっと考えさせてくれない? 急にママが現れて混乱しているんだ。今日はもう時間がないんだ。お婆ちゃんが仕事に行く時間だし」
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