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水深800メートルのシューベルト|第227話

 ママは、困った時の顔をして、僕の方に身を乗り出してきた。

「ねえ、アシェルはどう思う? せっかくゲイルがあなたの父親代わりになってくれそうなのに……」
 彼女の訴えるような目、ゲイルさんの決意したような目を見比べて、何と言って良いかわからなかった。ママは苛立ちながら「アシェルからも言ってやってよ。『パパ、海軍なんかに行かないでって』」

「やめるんだジュリア。これは僕と君の問題だろ?」
 彼は宥めるように言った。

「ごめん。僕は……まだママと暮らす決心がつかないんだ。お婆ちゃんもいるし」
 ママを失望させるとは思ったが、声を絞り出すようにして言った。

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