「今は決められないよ……ごめん」(と僕は答えた)
「もう、いいわ」
ママはため息をついた。
「それがあなたの答なのね。もうあなたにチャンスはないわ」
「そんなの……ごめん、ママ……許して」
僕は席から立ち上がったままを引き留めなきゃと焦ったが、ママの横顔は氷の彫像のように、僕に無関心になったようだった。彼女に会わせてゲイルさんも立ち上がった。
「君はすぐ謝るんだな。そんな弱気で卑屈だとこれまで大変だったんじゃないか?」
彼は僕を憐れむような声で言った。
「君はこれまで、常に相手の顔色を窺って、犬みたいにビクビクしている……違うか?」
僕は何も言えず、黙っていた。
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