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水深800メートルのシューベルト|第230話

「今は決められないよ……ごめん」(と僕は答えた)

「もう、いいわ」
 ママはため息をついた。
「それがあなたの答なのね。もうあなたにチャンスはないわ」
「そんなの……ごめん、ママ……許して」

 僕は席から立ち上がったままを引き留めなきゃと焦ったが、ママの横顔は氷の彫像のように、僕に無関心になったようだった。彼女に会わせてゲイルさんも立ち上がった。

「君はすぐ謝るんだな。そんな弱気で卑屈だとこれまで大変だったんじゃないか?」
 彼は僕を憐れむような声で言った。
「君はこれまで、常に相手の顔色を窺って、犬みたいにビクビクしている……違うか?」
 僕は何も言えず、黙っていた。

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