穏やかな話ぶりでひとしきり説明すると、口元を細い三日月のようにして頷いた。それは、前線で戦う兵士というよりは、第一線を退いた教官のようであり、老練な政治界の耀にも見える。僕たちは無事に帰れますよねと、確認をしたかったが、すぐに愚問だと気づいたのでやめた。大尉の意味深な説明が途切れると、気まずい沈黙が三人の間で流れた。
「キューバの時だって、運が悪けりゃ核戦争でしたもんね。恐ろしいな、ああ、恐ろしい」
ドビーは、大げさにはしゃぎながら言った。大尉は、それには答えず「まだここに居るかね。通路が水平になっている間に戻ろうと思うのだが」と、言った。
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