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「王子稲荷の社」−初午にせかせか−『名所江戸百景』

今日もまた研究室訪問に行きました。
今回の先生は文学の先生なので文学と浮世絵の繋げ方のアドバイスをいただきました。
先生の論文の一つに私のやりたい研究のまさにその先をしていらっしゃったものがあったので非常に勉強になるお話をいただけてよかったです。

普段は「試験勉強、試験勉強、、!」と直近のことに焦りがですが、先生にお会いするとそれを先の研究に目を向ける軌道修正をして貰えるのがいいモチベーションになります。
行く前は緊張して、(何でかはわからないけど)何も知らなくて怒られたら嫌だな、、とか思うんですけれど、、。笑

今日は浮世絵を研究するにあたって、読むべき書籍を5冊紹介していただいたので、それを購入するためにまた来月も節約生活確定です。

そんな緊張が解けて先の節約に怯える今日も広重。今回は『名所江戸百景』「王子稲荷の社」です。

◼️ファーストインプレッション

この回のために王子稲荷のお話を溜めていました。早くからやったほうが絶対に話は繋がるのに、、笑。バランスが取れなかったのでここまで引き伸ばしてしまいました。

これまたどこかでみたような、、。
「芝愛宕山」「神田明神曙之景」を足して二で割った感じ?

「芝愛宕山」
「神田明神曙之景」

いやあ、社が赤くて、高台である点、そして人が参詣しているとか神主が境内で仕事をしている様子が映っていることくらいでしょう。共通点としては。

あと、後者の木の長さが強調されているのが似ている、、感が出ています。

今回の絵では参詣している人々の種類の多さに目がいきます。
町人のような男性たちのみならず、芸妓さんのような女性たちも描かれています。

全体的に木々の高いところに多くの葉をつけたものが生い茂っているので非常に暗い印象。
太陽の光が入って来なそうですね。今回は王子稲荷についてよくみていきたいと思います。

◼️王子稲荷

この王子稲荷は現在の王子稲荷神社

そういえば前回の土曜フジテレビ「なりゆき街道」みたいな名前のテレビでここが取り上げられていました。塚本高史さん出てました。結構好きです。

位置関係としてはこんな感じ。絵では奥に筑波山が描かれているので赤ピンの王子稲荷神社からそのまま北東を見ているような目線でしょう。

康平年中に征夷大将軍、源頼義により「関東稲荷総司」の称号を頂く。小田原北条氏についで、徳川将軍家代々の祈願所と定められてきた。
 現在の御社殿は十一代将軍家斉公により新規寄進されたもの。
 落語「王子の狐」の舞台でもある。

徳川家代々との関係があるろありますがこの神社は、日本の中で徳川家の朱印地を賜った神社であるそう。この朱印地で200石以上を賜った神社は全国でも五社しかなく、その一つに該当しているみたいです。

また、3回くらい前に見た音無川と世俗大滝、満開の桜を描いた「王子音無川堰埭世俗大瀧ト唱」に出てきた金輪寺と関係あるそう。
金輪寺は王子稲荷神社そしてその南に位置する王子神社の別当にあたります。

落語の「王子の狐」については明日触れたいと思います。

『江戸名所図会』を見てみましょう。

一番上の小高い丘に「いなり」と書かれています。ここにあったのでしょう。
やはり針葉樹のような木が生い茂っている中に建てられているみたいですね。

ここにはこれまでみてきた王子エリアの名所が凝縮されています。
左の「弁天」は昨日見た鳥居に関係する弁天ですね。
左ページの真ん中あたりにある「垢離場」は大山詣りに行く前に身を清めるための場所。
手前の大通りは昨日見た「紅葉橋通り」だと推測します。

「王子稲荷神社
同北の方にあり往右は岸稲荷と号しにや今当社より出すところの牛玉宝印に志の記せり
本殿 倉稲魂命 聖観世音蛇枳尼天 本宮 十一面観世音
王子権現縁起曰いつれの世にかありなん此社の傍に稲荷明神をうつしいはひ○れハ毎年臘晦の夜諸方の命婦此社へ集り来る其ともせる火の連りつける事そくはくの松明を並ふるの如く数解の蛍を放○しむるに似たり其道野山を通い河辺をかよへる不同を見て明年の豊凶を知ると聴え命婦の色の白きと九の尾あるハ奇瑞の○のなりと右き書にありとなむ」
「当社ハ遥に都下をはなるといへども常に詣人絶ず月毎の午の日にハ殊更詣人群参す二月の初午にハ其賄ひ言もさらなり飛鳥山のあたりより旗亭貨食舗或ハ水に臨むて軒端をつらねたり実に此地の繁花は都下になつらず」


稲荷と言っても本殿・本宮・観世音があることが記されていますね。
その後には王子伝説の「王子の狐」について書かれています。
概要はなんとなく知ってしまった気がします。

また後日。

この稲荷は『江戸名所図会』の挿絵にあった通り長い階段の上にあったのにも関わらず常に参詣する人が絶えなかったようですね、
月初めは特に多くて二月はもっとすごい。
飛鳥山から伸びる、、旗亭貨食舗あたりに伸びる道には軒が連なり、繁栄した一帯だったということも記されています。

だから絵の中でもいろんな人間が参詣している様子がしっかり描かれているのですね、。奥に白く花を咲かせた木が植えられていますので冬の終わりの春の季節だと推測すると、その二月の参詣日にあたるのでしょうか。

挿絵の通りですね。


先ほど参照した記事の中にこんな言及がありました。

当社の境内を3ページに渡って描いている。
『江戸名所図会』に描かれた構図と似ているが、それを参考にしたものだろう。
こちらはカラーなのでより様子を窺う事ができる。
門前には茶屋や料理屋が立ち並び、大変な人気であった。

広重『東都名所』「王子稲荷境内全図」
かなり模した描き方。これぞ”やつし”なのでしょうか。
場所も全く被っていて、霞の位置が少し移動しているだけ。
色がついていてむしろ見やすいものになっています。

明日の「王子の狐」の話に触れるのが楽しみです。
今日はここまで!

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