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「両国の夕立」−金箔の代わりに黄色い放屁−『江戸名所道戯尽』

今日は一日家にいたので英語のリスニングと課題をこなすことができました。
夕ご飯も作って家充。

さ、大河が始まってしまうので早く手をつけないと!

大河も楽しみだけど広景。今回は『江戸名所道戯尽』「両国の夕立」です。

◼️ファーストインプレッション

今回はいよいよ人間が描かれない回となってしまいました。笑
雷様が川から現れた河童に追われて、両国橋の柱をよじ登っています。
雷様って、風神雷神図とかでしか可視化した存在を確認できないですよね。当時の周りに携えているでんでん太鼓を川に落としてしまっているほど焦っている様子。
雨も降っているし、波もある。

どっちが勝つのでしょうこの勝負。
よく見ると、雷神がオナラをしているのかな?河童が鼻をつまんでいます。放屁は雷神の最終奥義なのでしょう。
雨が降っているからか、川には船一つ浮かんでいません。
実際に雨が降っている日は船を出さないなんてことは川レベルで有り得るとは思い難いので、あくまで河童と雷神の二人の世界だけを表現しているのでしょう。

今回は両国の位置だったり、橋についてではなく、類似作品をどんどんみていこうと思います。
以前訪問した研究室の先生に「作品を見る数を増やす」ことは特に大事だと教わったのでこのシリーズは沢山見ていくのを目標にしていきます。

◼️雨×両国橋

とはいえ、雨と両国橋というのはなかなかないみたい。
以前どこかで橋の下で船を漕いでいる人たちが雨風で色々な所持品や紙を川面に落としてしまっていた場面を描いた錦絵があったのを探してみましたが、見つかりません。

香蝶楼豊国『両国にわか夕立』です。
とはいえ橋に近づいていないのでなんとも言えずにいます、、。
やはり雨の日は船をあまり出さないのでしょうか。
でもこの絵は俄雨の一場面ですので少し前まで曇りだったのでしょう。だから橋の上には傘を差し途中の人や、もはや差せていない人もいますね。
今回の絵とはテーマがちょっと違うかなあ、、。

また、雨と橋で考えると、この絵も記憶に新しいものです。

広重『名所江戸百景』「大はしあたけの夕立」です。
川面の色味といい、橋脚の構図といい、川の静けさといいまさに同じ時の違う場面を描いているみたいに考えられます。
門人だったのでこの絵を見て「じゃあ俺はこの橋の下の光景を描いてやろ〜」と思って描いたのかもしれないなんて思えますね。


◼️雷神×錦絵

実は雷神が描かれる錦絵も少ないのかな。

一つだけ見つけたのが、歌川豊国『月雪花頓画戯額』です。

やっぱり雷神は風神とセットでないと!
俵屋宗達『風神雷神図屏風』を想起しますね。

あまり画像が鮮明ではないのが残念なところ。
しかし、ほとんど同じような描き方をしていますね。
雷神はでんでん太鼓を周りに携えて、左足を伸ばし、右足を屈ませて、まるでコントラポスト。
でもちょっと豊国版で面白いのが、雷神はお酒を持っているということ。
お猪口を持ってさえいます。
風神は同じ緑色。足の具合は宗達版と異なります。
持っている白い布?のようなものに柄がついていたりいなかったりという違いもあります。でもこれは作者による遊び心チックな部分なので特にいうことはないですね。
豊国版では草餅みたいな?餅?で大きな箱に並べられているのを小脇に抱えています。誰にも分けてあげない意地みたいなものを感じます。

二人をただの青い空に浮かばせておくことは豊国もしなかったのですね。
宗達は金箔の上に黒雲をたらしこみさせて、彼らを浮かせました。豊国もそれに倣って金箔とまでは行かなくてもクリーム色の土台に二人を浮かせています。

やはり、彼らの周りには異次元で幻想的な雰囲気を漂わせるのは必須条件だったのでしょうね。

となると、今回の広景の雷神も似たような空気をこの世に持ち込んでいるのも当然で、やはり黒雲を連れ込んでいます。
しかし、河童に足を引っ張られてしまうような雷神なので、金箔や黄色味のある輝かしい空気は持って来れなかったのですね。

◼️両国橋の絵を列挙

それでは両国橋の絵を数点見ていきましょう。


歌川豊春『両国夕涼之図』です。
やはり両国橋は夕涼みが定番ですね。
あとは花火の描写。
出店が出ていたり、船が何隻も出ていたり、橋の上は人でごったがえしていたり。夕涼みは毎日がイベントであるかのよう。

歌川豊国『江戸両国すずみの図』です。
5枚の続きもの。この絵は左から出版されていって欲しいですね。だんだん橋の全容がわかってくる面白さがあると思います。

この絵の中に江戸の文化が散りばめられているのが見どころ。
左の絵にはおそらく力士の絵がブロマイド的なものとして販売されているし、奥には歌舞伎役者のうちわが売られています。今も昔も変わらないのですね。

左から2枚目には、橋の上を芸妓か遊女のような女性が歩いている。傘を差しています。
また、手前の二人は喧嘩が今にも始まりそうなくらいに睨みあっいる。
どちらも喧嘩っ早そう。

右の絵にはいよいよ川の上の様子が描かれます。
一番右には一際豪華な船が浮かんでいます。中には御簾がかかっていて誰かセレブな人が遊覧しているのでしょうか。

二代目豊国『両国橋夕涼光景』です。
実はこれ以前訪問した先生に本物を見せていただいたものの一つでもありました。
先生が持っていたのは左の一枚。続き物ですので川の上に浮かぶ、子供の掲げ物が浮いているように見えてちょっと不思議だったのを思い出しました。
一番左から出版されてと想定すると、川の上に浮かぶ男性二人の絵はなんなのだろうと想像を掻き立てることがありますね。
そういう面白さがあるのかと感心しました。

左の女性は花火を施した着物を着ていて非常に季節感あふれるお召し物。
彼女だけ三人の中では沈んでいるように見えてしまう。
燕が低く飛んでいる扇子を胸に当てていることからこの後雨が降ることを暗示している…なんて考えすぎでしょうか。

  


今日は両国橋と夏の風物詩を重ねてみていきました。
錦絵を見る量を増やしていくことを六月は課題に頑張ります。

今日はここまで!
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