見出し画像

「亀戸太鼓はし」−雪の中はタフすぎる−『江戸名所道戯尽』

大河が始まりました。
一週間Twitterでさまざまな説を見ていたので今日が楽しみでなりませんでした。
見ながら書き上げしていきます。

そんな大河にアガッテいる今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』の「二十五 亀戸太鼓はし」です。

◼️ファーストインプレッション

ここは例の亀戸天神の中にある、藤の咲き乱れる太鼓はしでしょう。
奥の軒が連なるところに藤が咲いていることがよくわかります。
この太鼓橋はかなり湾曲していることが、この女性のすってんころりんの様子からわかりますね。顔は笑っていて、「ええええ〜めっちゃ転ぶや〜ん」と自分でも笑ってしまっている感じがします。

ありますよね。多くの人の前でコケたり、転んだり、滑ったりしたら(私が結構足元おぼつかない人間すぎる、、笑)なんかそれだけで面白くなって、他の人が笑うよりも先に笑ってしまうんですよね。

下の二人はそれに巻き込まれて同じように転けています。「てっっめええ、転ぶんじゃねえよおお」と、困惑の顔。
こんな急にしたら普通に怪我する、、。

この太鼓橋は実際のところ、こんなに湾曲していたのでしょうか。。

他の亀戸太鼓橋を描く浮世絵を比較してみることとします。。。
念の為橋の段を頂点から一番下の擬宝珠のもとまでを推定で数えてみると、(見える範囲で)17枚の板を使っています。

◼️亀戸太鼓橋

この橋は以前江戸百でも描かれていましたよね。

https://note.com/ohyononote/n/n53d70a4a4d53

歌川広重『名所江戸百景』「亀戸天神境内」です。
ちょうど右の松の木の植えられているあたりから太鼓橋を眺めたのが今回の広景の絵の位置でしょう。
この橋もかなり湾曲していますが、これはかなり現実の光景に忠実に描いたものだと思います。
広重は写実性を軸にしていましたし、実際に私が亀戸天神にいった時もここまでではないけれどかなり湾曲した橋であったことは記憶と写真にあります。

頂点から一番下の擬宝珠までの板の枚数は、上から2番目までの枚数は10枚と一致しているのでほとんど同じと見ていいでしょう。

しかし他の作品も見ないとこれだけでは比較とはいえませんね。

歌川豊国『東都名所合』「亀井戸」です。
これは広景の絵では橋の向こう側からの景色を描いているということですね。
まさに藤が枝垂れている縁台での休憩のワンシーン。
かなり豪華な着物と髪飾りをしつらえているこの女性は、この日のためにお召し物を用意したのでしょうか。
とても楽しみにしていたからか、しっかり景色を目に焼き付けようと酒を片手にしても目線は離しません。
さて、奥の橋ですが、なんだか少し小さい気がします。
これまで擬宝珠の上から二個目がおよそ橋の真ん中に位置しますが、今回はかなり地面に近いところにありますね。
あんまり大きく描きすぎても迫力が出てきすぎてしまうし、藤に被ってしまう。
そんなバランスを考えてあえて縮小した可能性はありますね。

サイズ的には小さくはないのかもしれませんが、二個目の擬宝珠から下が少し足りない気がします。
本当ならもっとダイナミックに描いてもよかったのかなと感じてしまいます。


広重『銀世界東十二景』「亀井戸天満宮境内一覧」です。
この絵では橋はふたつ描かれていますが、主人公は右の橋の方です。
赤い着物を笠から覗かせた人が渡っています。
この橋もまた小さく描かれている気がしますね。
欄干の柱がちょっと多い。
それにしても雪の日によくこの橋を渡ろうとしていますねこの人。
広景の絵のようになんでもない晴れの日でも大こけする人がいるのにも関わらず。


広重『江戸名所』「亀井戸天神ふし」です。
かなり現実に忠実な描写なんでは?!
頂上から平地までの板の数は8枚、、?
板の枚数は特に忠実にしていないのかも?

それでもかなり急勾配。
欄干に手を添えていないと少し怖いのか、橋を渡る二人は両端に分かれています。


こちらも広重『東都名所』「亀井戸池中藤花之盛」です。
ここではかなり誇張された大きさの橋。
それも仕方なく、縦長の画面であること、そして手前の三人との距離感の間に藤を咲かせておく必要があったため。
橋はそれを見守る亀戸のシンボルとして描かれなければなりませんね。

例外的ではあるけれど、橋の大きさがよく表されている絵です。

こちらも広重『東都三十六景』「亀戸天満宮」です。
こちらでは藤の群の背景に描きこまれています。
やはりこれまで見てきたいくつかの絵にも表されているように、橋の高さは向かい側の建物の2階まで到達する高さ。
2階を同じ高さで眺められる橋なんて怖くて渡りたくないですね。


どの絵を見ても広景の描き方が誇張しているとは考えられないほど、同じような描写をしていましたね。
こんな橋にした訳もさることながら、何人がこの橋で怪我をしたのかも知ってみたいものです。

広景がちょっとふざけたのかと思いましたが、かなり写実的であったことがわかった気がします。
このような光景も日常の一部だったのかと思うと、江戸の人々が生きた写真を眺めているようでとても微笑ましいものですね。

やはり日曜日は大河の感傷に浸ってしまいます。
来週はお休みみたいなので、2ヶ月前に読み始めてしばらくそのままにしてしまっている上総広常の本を読了しておきたいと思います。

さっきも1時間くらいTwitterの皆さんの感想を読みまくっていました、、。

今日はここまで!
#歌川広景 #江戸時代 #江戸名所道戯尽 #亀戸太鼓はし #亀戸天神 #亀戸 #日本絵画 #江戸絵画 #浮世絵 #アート #美術 #芸術

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?