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096『菜なれ花なれ』、第4話「カポエイララプソディ」、感想

 現代性があり、本作のメインテーマが見えた素晴らしい回でした。しかし、シリーズ構成から言えば前回までのかなたちゃん編からの接続が上手くいっていないきらいはある。もちろんアニメスタッフは百も承知のはずで、それはまず一クールと言う短期決戦を強いられるテレビアニメシリーズの制作環境の問題に求められると思う。
 その一クールの条件で勝利(と言っていいですね)したのが前クールではやはり『ガールズバンドクライ』。アニオリという条件からも比較可能と思うのですが、何故ユーフォ3などの鉄板がありながら評判になったのか。私はキャラクターを絞り、主要なドラマを仁菜と桃香に集中させた成果と思うのです。尤もそれ故に弊害もあって、劇中時間に限ってもそれなりにあったはずのバンド活動のごたごた、新川崎(仮)でのグッズ販売が上手くいっていない以外、ほとんど触れられていない。またバンドの方向性の獲得を終着点にしたため、トゲナシトゲアリの物語のプロローグで終わった感がある。
 しかし「なれなれ」、この回でやっと応援の対象が見つけられた形だけど、かなたちゃんがチアを始めたのがチアリーダーの姿に憧れたためか、またかなたちゃんの住んでる町への愛着の程度が曖昧なこともあり、今ひとつ「応援」の意味が曖昧になってる感じがある。それでも知り合った友達の思い出の場所がなくなるのは辛いと想像できたから、真っ先に「応援したい」と言うことが出来たと思う。
 さらにプロローグのかなたちゃん編が終わった直後、レコード(店、屋)の話を持ってきた意味、本作の思想、主張が凝縮、集約されてると思う。古き良きものをなくしてはいけないとよく言われるが、何が「古く」て、しかも「良いもの」なのか? 人によって、生まれて生きてきた時代によって様々でしょうが、本作では「手間をかけて、大切に扱わなければならないもの」と思いつきました。多分これからチアリーディングチーム「PoMPoMs」の面々は自分たちの応援による歓喜と挫折を通して、自分たちが生活できてるこの場所の所以に気づいていくことになる。
 それは正に、エンタメに従事している全ての同業者に向けたエールになるはず。実は『ぼっち・ざ・ろっく!』、アニメ第一期の本放送当時から、バンドアニメというよりクリエーターへのエールと思って観てました。さらに前期のガルクラは正にバンドアニメとして、集団作業の難しさを象徴的に物語った。そしてなれなれ、エンタメのそもそもの存在理由を応援とみなし、それでは応援とは何なのか、アニメスタッフが全力をもって答えを模索する物語と思うのです。
 構成の雑さに文句を言った私ですが、何だかんだ言っても気に入ってるみたい。どうも私、作り手の顔が見えるアニメが好きみたいで。

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