2024.5.12

おかのした2章というライブに「沙悟浄」として出た。出たと言ってもネタはやっていない。客席の最前列の端に1時間半もの間、立たされただけだ。それだけじゃない。舞台に決してあがってはいけないという制約までついている。読んでも意味がわからないと思う。わかりやすいように話をまとめると、要するに、「舞台にあがってはいけない沙悟浄がネタをやらずに客席の端で1時間半立っていた」ということだ。きっとこんなことが地下ライブでは常日頃行われているんだろう。地下ライブとして、正しいと思う。その日限りの特別な状況だ。おそらくその場にいた全員が2度と巡り会えないシチュエーション。その一端を担えたことは、人類初の月面着陸に成功したニール・アームストロングのようにずいぶんと光栄なことだった。そういえば、最近ニュースで「アルテミス」という月面探査計画を知った。近い将来、日本人の宇宙飛行士が初めて月に降り立つらしい。まあ、絶対に起こらないだろうけど、その宇宙飛行士が沙悟浄みたいな名前(例 沙悟 浄太郎)で、月面に足を踏み入れたあと、探索もせずに1時間半突っ立っていて、おかのした2章はアルテミス計画を予言していたんだと世間で騒がれてほしい。そんな奇跡があってもいいじゃないの。月面探査ではないけれど、そのライブでは俺にもちゃんとした役割があった。ライブ前の受け付けとタイムキーパーだ。俺は沙悟浄なのに、スタッフとしてこき使われたのだった。それともう一つ、ネタとネタの合間に毎回演者が舞台に集まり全員でガヤガヤ騒ぐのだけど、そこがあまり盛り上がらなかったときに話をフラれるという、お笑い向上委員会のモニター横芸人みたいなことをやらされた。まあまあ重要なポジションを沙悟浄に任せるなよと思ったけど、やってみたら意外と性にあっているというか、人がガチャガチャしてる中で前に出られるタイプじゃないから、明確に役職を与えられると楽なんだなと知ることができた。その発見に気づくまでは、このライブに出てよかったと思えていたかは怪しい。出演しているお笑いさんたちのネタは見たことないものばかりだった。斬新なシステム、魂のお笑い、そして、完成度の高いエンタ芸。さらに、女子大学生による心配になるほどの下ネタ。ひいては、卑怯な裏笑い。たくさん笑わせてもらった。正直俺はほとんどの時間、最前列でお笑いライブ見ていただけ。しかも無料。やっぱりこのライブに参加できてよかった。ただ、客として同期がちらほら来ており、受け付けをやっているときに軽く挨拶を交わしたのだけど、ライブが終わったあと受け付けとして帰るお客さんにありがとうございましたなど呼びかけていた際、同期はあまり目を合わせずにそそくさと会場から出ていってたから、俺はライブ中にスベっていたのかもしれないなと、思わされた。実際どうだったのか、真実は月の裏側のように未知だ。

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銭ズラ