夏休みの不思議な体験

昔、夏休みを利用して地方のリゾート施設で住み込みのアルバイトをしていた。

その日はアルバイトの最終日だった。休憩室でくつろいでいると、ドアが少し開いて、バナナのようなものが投げ込まれた。それが膨らんで、やっと黄色い風船であるとわかる。俺は突然の出来事だったのでパニックになった。しかし、30分経ってもまだスイカくらいの大きさだったので、途中からどうでもよくなり、存在しないものとして扱った。

俺は休憩を終え、部屋を出ることにした。そこで奇妙な光景を目にする。風船につながれた管が枝分かれして地面を這っているのだった。

一体どこに繋がっているのだろう。俺は管をたどった。さらに枝分かれしていき、全てが同じ方向に這っている。

気づいたら、施設のすぐ裏の森の中だった。地面からはたくさんの細い管が生えていた。なんだか気になるが、もうアルバイトに戻らなければ怒られるので、俺はその場を後にした。

休憩室に行ったのはそれが最後だった。

10年後、あの日の出来事を思い出し、俺は今はないリゾート施設の跡地に行った。もう一度あの場所へ。

着いた途端、顔がこわばる。破れた風船とたくさんの管がまだ残っていたからだ。

近くに落ちていたスコップを手に取り、管の周りの土を掘る。すると、そこには地下へと続く通路があった。暗闇に延びる管の方へ足を運び、奥にたどり着いた。

管の枝分かれが広がっていき、その先には敷き詰められた細胞のような牢獄、牢獄、牢獄の嵐。

それぞれの牢獄に、口に管がつながれた人が一人ずつ存在した。みんな死んだ目をしている…。

その中の1人に思わず目がいく。管に対して、弱々しくも誰よりも長く息を送り込む男がいた。

美木良介だ。

こんなにもなってまで、もうやめてくれよ…俺は泣き叫んだ。

「もう終わったんだよ!風船は破れたんだ!そして、あなたたちは見つかったんだよ!助かったんだ!」

人々は救出された。いくつかの証拠によって犯人も捕まった。こうして、ロングブレスダイエットレッスン集団誘拐事件の幕が下りた。

唯一残る謎と言えば、美木良介が誘拐されてから10年間誰にも気づかれていない、ということだけだった。

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