♯14 利益は虚構。存在するのはコストだけである
今月の一言:「利益は虚構。存在するのはコストだけである」
(この号は3分で読めます)
「利益は目的でなく、会社存続の条件である」
「利益をもたらすのは、顧客だけである」
などなど。
ドラッカー氏は、「利益」についても、沢山の金言を残しています。
その中で私が一番驚いたのが、
「利益は虚構である」の言葉。
「利益は会計上の幻影に過ぎない。存在するのはコストだけである」と続きます。
利益は会計上「売上ー費用」という差額で示されるので、利益はその「余剰」という感覚になりがちですが、それは「虚構」というのが氏の持論。
ドラッカー氏は、「企業経営の利益は、農民にとっての収穫後の種子と同じだ」と説きます。
利益は、農民にとっての収穫後の種子と同じ???
大胆な視点です。
農民はその種子で翌年の作物を作るので、農民にとって「種子」は余剰ではなく、来年も農業を続けるためのコストという位置づけになります。
企業経営も一緒で、利益は「未来のためのコストである」というのが、ドラッカー氏の視点です。
更に、「利益には三つの役割がある」と続きます。
1番は、企業の仕事ぶりを評価する「尺度」として有効だと説きました。
売上は、企業が提供する商品やサービスに対し、お客さまが喜んでその対価を支払われた総計。
お客さまが気にするのは、支払う額が受ける商品やサービスに見合っているか否かです。
治療院で言えば、40分5,000円の設定価格に対し、それ以上の価値を得たかどうかで、その患者さんがリピートするか否かが決まります。
一方、「40分5,000円」の価格設定に対しては敏感なお客さまも、先生がそのサービスを提供するためにかかるコスト(或いは利益)については、まったく気に留めません。
院で揃えた高額機材の値段も、賃料も、先生が技術向上に費やした時間やお金も、患者さまにとっては関係ないコスト。
したがって、現行の価格設定で充分利益を挙げている治療院は、健全で有効性の高い経営が出来ていると評価できます。
2番は、利益が「保険」的役割を担うことを指しています。
明日に何が起きるか分からないということを、コロナ感染の一件で私たちは改めて気付かされました。
コロナという究極的な外的要因により大幅な顧客減に見舞われたのは、全ての治療院に共通する環境。
そのような「嵐」が吹き荒れたなか、事業を存続できたか否かの一つのポイントが、どれだけ余剰資金があったかだと思います。
収入よりも賃料や人件費、設備投資の返済額等の支出が毎月大きく上回るなか、そのキャッシュフローのマイナス分は過去に蓄積した貯金(利益)が補填していたと思います。
3番は言うまでもなく、「未来への投資」です。
日々の仕事に追われながらお金の管理をしていると、「売上」の入金や、「費用」の支払いを繰り返す中、預金通帳の残高の増減に一喜一憂しがちです。
ドラッカー氏のポイントは、
「通帳残高を増やすことが目的ではない。万が一の保険のためのコストをどれだけ確保し、未来のためのコストもどれだけ必要かを見極めたうえで、利益の処方を決めるのが、経営者の責任である」
ということだと思います。
先生の院の「利益」。
どのように処方しますか?
~次号の「リーダーシップとは人の視座を高めることである」を読む~
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