ブラックホールに愛はあるか

ぼくは誰からも愛されていない。ブラックホールは悲しみました。

ぼくを愛して、愛してよ! ねえ、愛して?

そう言ってブラックホールは皆に近づくのに、周りの皆は逃げてしまうか、ブラックホールに吸い込まれて壊されてしまいます。

ブラックホールは愛を探して、宇宙中をさまよいました。

他の星々は輝いているのに、ぼくだけが闇。

命を育む星もあるのに、ぼくだけが闇。

愛を語り合う生き物のいる星さえもあるのに、ぼくだけが闇。

ぼくだけが闇。

愛をちょうだい?

ぼくに愛を。愛を。愛を。

ブラックホールは泣きながら宇宙を進みました。

そしてブラックホールはついに、周りの星々を飲み込みつくしてしまいました。

ブラックホールは独りぼっちになりました。周りは闇です。何も見えません。

ブラックホールにはもう、他の星に嫉妬することも、他の星の愛を眺めることもできなくなりました。

後に残ったのは、ただただ、闇と孤独でした。

孤独と時だけは永遠にありました。

ブラックホールは自分に起こったことが誰のせいかと思いました。周りの星々のせいであり、宇宙を作った神様のせいであり、馬鹿な自分自身のせいであると思いました。


永い永い時が流れました。


どのくらいの時間が経ったのでしょうか。

ブラックホールは夢をみていました。

真っ赤な星に恋をする夢です。

真っ赤な星はとても可愛らしくて、二人でお互いの周りをクルクルクルクルと回っては笑い合います。

だけども真っ赤な星はある時、星の一生を終わらせてしまいました。

ぼくは悲しみました。

だけど、彼女はプレゼントを残してくれました。

小さな小さな元素たちです。

それらは生命に必要な元素たちでした。

星の一生の中でしか生まれない、輝くような元素たちでした。

元素たちは、宇宙を漂い、集まり、星になりました。

その星には惑星もあり、その惑星にはある日は大雨が降り、ある日は氷に包まれ、ある日は美しい青い海と緑に包まれていたのでした。

その星には、ぼくにそっくりな黒い服を着た男の子がいました。その男の子は誰からも愛されていなくて、悲しみにくれていました。

寒い寒い冬の日。男の子は孤独の中で悲しんでいました。

その男の子が壊れてしまう、いつかぼくと同じ悲しみに陥ってしまう。そう思ったぼくは、いつかのあの大好きな赤い星に強く願いました。

あの子を助けてくれませんか、どうか。お願いします。

と。ぼくは初めて、誰かのために愛を願ったのでした。

その男の子のもとには、赤い服を着た女の子がやってきました。

そして、優しく手を差しのべて、微笑みました。その女の子は、男の子の心に明かりを灯してくれました。

気がつくと。ぼくはいつしか。愛を願い。愛に溢れる、宇宙となっていたのでした。

それはクリスマスの日の出来事でした。


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