ショートショート(D):古びたモップ

古びたモップ

モップがあった。

古びたモップだった。

ボクは言った。

「きったないー」

父は言った。

「きれいだよ」

「えっ?」

「見えるかい? 彼の活躍した日々が。彼の通った後、床がピッカピカになった所を」

「見えないよ!」

「そうか。それが見えるようになれば。君も一人前だ」

「えー?」

「モップさん、いつもありがとうな」

「んー?!」



あれから、ん十年。

ボクは。汗水流して働いてきたつもりだった。のですが。最近、自信がなくなりました。

ボロボロになった精神力に、冷たい視線。ただ、ちょっとしたありがとうだけが傷に沁みるような。そんな日々。


お父さん。

ボクは一人前に、なれましたか。

古びたモップに、なれましたか。


ボクにはまだ。

まだ見えないようです。



おわり


ハナウタナベさん曲

D 『【朗読花歌】盲目/作詞:Tome館長』
この曲を使った場合のハッシュタグ︓ #うたスト #課題曲D
埋め込み用 URL
https://youtu.be/2Jlqeu5dyMA



【 うたスト 】 歌からストーリー︓歌を聴いて物語を作ろう︕

への、応募作品でした。

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